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インド発ファッションEC「Myntra(ミントラ)」 シンガポール拠点に販売強化 巨大インド人コミュニティ活用で急成長

インド最大級のファッション専門ECプラットフォームで、主にミレニアル・Z世代を中心に支持を得ている「Myntra(ミントラ)」を運営するMyntra Design(ミントラ・デザイン)は、シンガポールの親会社であるFK Myntra Holdings(FKミントラ・ホールディングス)から1億2,500万ドル(約180億円)の資金調達を実施しました。同社は今回の資金調達にあたり、グローバル展開を加速させていく狙いです。
「Myntra」は2024年3月期決算で31億ルピー(約4億6,500万円)の純利益を計上し、前年度の782億4,000万ルピーの赤字からV字回復を果たしました。売上高も前年比15%増の512億ルピー(約768億円)に達しています。この業績改善を受け、2024年11月には30分~2時間配送の「M-Now」サービスを開始。即配市場において、「Zepto(ゼプト)」や「Blinkit(ブリンキット)」などとの競争を強めています。
「Myntra Global」ではインド発のブランドが数多く掲載されている(公式オンラインサイトより)
同社は、5月19日にシンガポール向け「Myntra Global(ミントラグローバル)」をローンチ。インド発ブランド35,000点を、現地のインド人ディアスポラ(シンガポール在住インド系移民・その子孫)向けに提供開始し、母国インドのファッションやブランドに親しみやニーズを持つ在外インド人コミュニティへの販売強化を狙っています。商品はインド国内の在庫から4〜7日で配送され、第三国物流を活用した新しいビジネスモデルを構築しています。同サービスでは「Rare Rabbit(レア・ラビット)」や「Global Desi(グローバル・デシ)」など、100以上のインド発の人気ブランドを取り扱い、アクセサリーやホームデコ製品などラインアップを拡充させています。
Tataグループが運営する、
富裕層をターゲットにしたオンラインマーケットプレイス「Tata CLiQ(タタ・クリック)」
(公式オンラインサイトより)
一方で、「SHEIN(シーイン)」がインド小売最大手のReliance Retail(リライアンス・リテール)との提携によりインド市場に再参入したことを受け、市場競争は一層激しさを増しています。「Myntra」の競合としては、同じくReliance Retail傘下のファッションEC「AJIO(アジオ)」やTata Digital(Tataグループ)が運営するプレミアム志向のオンラインマーケットプレイス「Tata CLiQ(タタ・クリック)」といったインド国内で急成長中の他企業との差別化に加え、「Amazon」や親会社Flipkartとの棲み分けも課題です。
「Myntra」のCEO、Nandita Sinha(ナンディタ・シンハー)氏は、「シンガポールに存在する6万5,000人のインド人コミュニティのうち、すでに3万人が月間訪問者としてカウントされている」と報告。今後は、東南アジア市場での展開を加速させるとともに、2028年までに800店舗拡張を目指す方針を明らかにしています。親会社Flipkartによる支援体制を背景に、グローバルEC市場での存在感を高める構えを強めています。
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