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食の街・ニューヨークで起きている出店ラッシュ—「Wegmans(ウェグマンズ)」の新・寿司レストラン、「I’m donut ?(アイムドーナツ)」NY初出店など

RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

「Wegmans(ウェグマンズ)」が手がける寿司レストラン「Next Door(ネクストドア)」

 1916年にニューヨーク州ロチェスターで創業したスーパーマーケットチェーン「Wegmans Food Market(ウェグマンズ・フードマーケット)」は、アメリカ北東部を中心に約110店舗を展開し、熱狂的なファンを持つことで知られています。

 自然食品といえば「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」というイメージを持っていた筆者も、2019年にブルックリンのネイビーヤード店がオープンする際に、「Wegmansの方が断然質が高い!」という声をそのファンたちから聞き、驚きました。実際に店舗を訪れたものの、当時は頻繁に通える距離ではなかったこともあり、その魅力を十分に体験するには至りませんでした。しかし2023年10月にマンハッタンのアスタープレイス店がオープンして通いやすくなってから、少しずつその評価の高さを実感しています。

 創業以来、「食」「人」「サービス」へのこだわりを貫いてきた「Wegmans」ですが、パン類は自社のベーカーリーで製造し、野菜類に関しては自社で再生型農場(リジェネラティブ・ファーム)を所有・運営しています。この農場は2007年からオーガニック農産物を栽培しているそうで、再生型農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)の実践に力を入れているとのことです。

 こだわりが注目される「Wegmans」。アスタープレイス店では、日本の豊洲から直送された鮮魚を扱う売り場が話題を集めるなど、店舗ごとに特徴ある取り組みが展開されています。

 さらに今年に入り、「Wegmans」は新たに「Next Door(ネクストドア)」という名称のレストランを手がけました。アスタープレイス店の隣に誕生したこのレストランでは、刺身やにぎり寿司に加え、キャビアやオイスター、炉端焼きなどを楽しめるファインダイニングとして、人気を集めています。

 ここ1〜2年の間に、日本食の人気はますます高まりを見せています。そうした追い風により、手巻き専門店から高級寿司のレストランまでが急増しているマンハッタン。そんなエリアへ、またひとつ注目の新店が加わった形となりました。しかしながら、そのメニューを目にして筆者は衝撃を受けました。ハマチの握りが1貫8ドル(約1,100円)、刺身2切れが16ドル(約2,300円)という価格設定。まさに高級レストランの位置付けであることは間違いありません。

 もちろん、体験してみると価格に納得できるのかもしれませんが、筆者個人的な願望としては、ネイビーヤード店にあるような、買い物の延長で気軽に立ち寄れるカフェテリアに、その場で握って提供してくれる「おにぎり屋」が併設されたとしたら… と、そんな庶民的な夢を抱いてしまうほどでした。

待望の「I’m Donut ?」がタイムズスクエアにオープン 

日本発「I’m donut?」のニューヨーク第一号店(タイムズスクエア店)の外観(筆者撮影)

 

 現地でも、日本のメディアでも多く取り上げられ、ご存知の方も多いだろう「I’m Donut ?(アイムドーナツ)」のアメリカ進出。海外第1号店はニューヨーク・タイムズスクエアに出店されました。筆者自身は残念ながらオープン当日に足を運ぶことはできませんでしたが、グランドオープン当日に並んでいた友人が日本メディアにインタビューを受けている様子を目にしました。

 立地的には、観光客の集客はもちろん期待できますが、周辺にミッドタウンのオフィスビルが建ち並んでいることから、企業イベントやミーティング用のケータリング需要も見込まれそうです。

 

 
 
 
 
 
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積極的な出店が続く、イタリアグルメスーパー「EATALY(イータリー)」

 日本国内でも銀座や原宿、日本橋などに出店している、イタリア食材を取り揃える総合スーパーマーケット「EATALY(イータリー)」。

 ニューヨークでの「EATALY」の展開は、2010年にマンハッタン・フラットアイアン地区に第1号店(フラットアイアン店)が出店されたことに始まります。その後、2016年には金融街にダウンタウン店がオープン。そして2023年12月によりコンパクトな小型店がソーホーに登場しました。ソーホー店は、同エリアの中でも特に利便性の高い立地にあり、カフェで一息つくことはもちろんですが、食事を楽しんだり、ちょっとした食材の買い物をしたりするのにも便利です。

 この3店舗の出店だけでもかなり利便性が高まりましたが、出店の動きはとどまりを見せません。5月15日には、「Eataly Café Rockefeller Center(イータリー・カフェ・ロックフェラーセンター店)」がオープン。さらに今春には、ハドソンヤード店の新規オープンも予定されており、カフェスタイルでの展開となるそうです。

5月15日に新開業した「Eataly Café」ロックフェラーセンター店(1230 Avenue of the America)

 

 また、現地のフード系メディア「EATER NEW YORK(イーター・ニューヨーク)」によると、2025年度中にニューヨーク・クイーンズのジョン・F・ケネディ国際空港内に新たに3店舗を出店予定と報じられています。対象はターミナル4・5・8となり、特に旅行者にとって利便性が高まり、空港食の選択肢が広がることになりそうです。

「Whole Foods Market」が、小型店出店を加速

 アメリカのグローサリーストアチェーンである「Whole Foods Market」が、地域密着型の小規模な新業態「Whole Foods Market Daily(ホールフーズ ・マーケット・デイリー)」の出店開始を初めて伝えたのは、昨年2024年8月のことでした。発表から1か月後、2024年9月に開業した第1号店は、マンハッタンのアッパーイーストサイドに出店。店舗の広さは日本のコンビニよりもやや広めで、全体的に地域のニーズにしっかりと応える地域密着型のMD展開がされているといった印象を受けました。

 それから半年余りが経ち、5月14日にはマンハッタン・イーストビレッジのスタイタウン店が新たにオープン。さらに、6月4日にはヘルズキッチン店の開業が控えています。

2025年6月4日にオープン予定の「Whole Foods Market Daily」ヘルズキッチン店

 

 いずれの店舗も、ニューヨークという都会でのアクティブなライフスタイルに対応する利便性に加え、新鮮で高品質な食材を提供することを目的とし、同社のPBブランドである「365」の製品を中心にバラエティに富んだラインアップが展開される予定です。

また、この2店舗の出店に加え、ブルックリンのウィリアムズバーグにも新店舗が出店される見込みだと報じられています。これは現時点では企業による公式発表ではありませんが、近々6月にニューヨークで開催される食品見本市「Summer Fancy Food Show 2025(サマー・ファンシー・フードショー)」でも同様の発表がなされる可能性もあり、今後の動向が注目されています。

執筆者

  • RINA Yoshikoshi

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント|AILメディアパートナー

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG