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<スペシャル対談>nana’s green tea×アパレルウェブ ”MATCHA”と”王道かつ斬新”な顧客体験でファンを掴む ナナズグリーンティーの海外戦略【AILイベントレポートVol.03】

AIL編集部
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 アパレルウェブ・イノベーション・ラボでは、イノベーターや有識者を招きビジネスインプットや“発見”をお届けする会員向けリアルイベントを定期開催。本企画では、イベントで得られたナレッジや交流会の様子をAIL編集部がレポートしていきます。

 2024年10月のイベントテーマは、七葉が運営する日本茶・抹茶カフェチェーン「nana’s green tea(ナナズグリーンティー)」のグローバル戦略について。国内外84店舗を展開する同社によるフランチャイズビジネス成功の秘訣と、2030年までに海外200店舗を目指すという事業展望について、同社代表取締役の朽網一人(くたみ かずと)氏にお話しいただきました。

 セミナー後半では、同社開発の「360KYUSU(サンロクマルキュウス)」で淹れた「クロモジほうじ茶」を参加者にお楽しみいただきながら、朽網氏とアパレルウェブ代表取締役CEO 千金楽の対談をお届け。

 セミナーの要点と交流会の様子をレポートします。


■イベントアーカイブ公開中! アーカイブ視聴はこちらから(視聴にはAIL会員ログインが必要です)

 

「nanaʼs green tea」を運営する七葉 代表取締役の朽網氏による登壇の様子

 

■イベント登壇者プロフィール

朽網 一人氏|株式会社七葉 代表取締役

くたみかずと●1971年、神奈川県横浜市出身。神奈川大学経済学部卒。現富士写真フィルムに入社し、3年の勤務を経て海外を遊学し、2001年自由が丘に日本茶・抹茶をテーマとするカフェ「ナナズグリーンティー」1号店をオープン。
「nana’s green tea」公式オンラインサイト

 


一貫したブランドコンセプトとフランチャイズシステムで事業拡大

 世界的な健康志向の高まりを背景に、“MATCHA(抹茶)”人気が広がる最中、「nana’s green tea」では、2024年3月に米国4号店となるニューヨーク・ブロードウェイ店をオープンしました。同店はオープン後、なんと5ヶ月連続で月商約4,000万円を達成。国内外に84店舗展開する同社内で、最高益を達成する人気店へと成長を遂げています。

 ニューヨーク進出を契機に、市場からは多大な反響が寄せられ、北米だけでなく欧州からも事業提携に関する問い合わせを日々受けている、という朽網氏。ニューヨークという世界有数都市への出店が、今後の海外事業拡大の重要な起爆剤となったのは言うまでもありません。同社では、先んじて本格的なブランドムービーを制作しており、そうした数々の出店オファー先への視覚アプローチ策として、ブランドの全体像をダイレクトに訴求し、より好立地への出店を叶えています。

 
「nanaʼs green tea」ブランドムービー
(「nana’s green tea」公式YouTubeチャンネルより)

 

 “スイーツの街”自由が丘で2001年に誕生した「nana’s green tea」は現在、国内70店舗、海外は米国、カナダ、香港、台湾、シンガポール、オーストラリアの6か国に計14店舗を展開。ブランドコンセプトには『新しい日本のカタチ』を掲げ、日本の伝統と革新の融合を身近に楽しめるような店舗・商品提案を行っています。商品コンセプトでは、日本の食文化の根幹を成す「米とお茶」の二つの食材を特に重視。朽網氏が自ら生産地に赴き、生産者と関係構築をしながら、最高品質のものを厳選して使用することを徹底しています。

 また、事業拡大戦略としては、フランチャイズ(以下、FC)システムを採用。設計事務所によるFC1号店の開設を皮切りに、モスバーガーの新業態への抹茶の卸などを通じて国内FCを拡大。一方、海外展開においては、積極的な海外パートナーの開拓は行わず、すべて先方からのアプローチが基点という同社ならではの特徴があります。

海外展開のきっかけ 国内FC展開で得た縁が功を奏す

 2001年、FCオーナーの紹介をきっかけに、上海の茶葉卸売業者との業務提携を開始。それを起点に、2010年に中国1号店をオープンし海外事業展開をスタートしました。2012年には、東南アジア市場戦略の起点として、朽網氏念願のシンガポール1号店をオープンし、現在同国にある3店舗は好調な業績を維持しています。

 次なる転機が2017年、ラーメン屋を売却した米国人女性から問い合わせを受け、米国にヘッドクオーターを設立し、北米市場への本格参入を始めました。翌年11月にはシアトル店をオープン。同店は、米国人オーナーの積極的なInstagram発信で認知度を向上させ、現在も売上は10~15%の伸長を遂げているといいます。

 

 
 
 
 
 
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シアトル店では2018年からInstagram活用で認知度・売上増。フォロワー数1.5万人(2024年12月現在)
(公式Instagram @nanasgreenteawaより)

 

「nana’s green tea」の海外展開の軌跡(七葉 朽網氏の登壇資料より編集部作成)

 

 今後は、米国における事業拡大として、2024年12月に北米市場向けのオンラインストア展開を予定。同社では、非上場企業という特性を活かし、短期的な収益計画に固執することなく、パートナーとの関係値を築きながら、一歩一歩確実な成長を重視した事業展開に取り組んでいます。

ニューヨーク・ブロードウェイ店の成功 カギは“本物志向”と“好立地への出店”

ニューヨークの「NOMAD TOWER」に2024年3月に出店した「nanaʼs green tea」ブロードウェイ店。
2024年10月訪問時、店内は来店客で賑わっていた(編集部撮影)

 

 冒頭で紹介した今春オープンのブロードウェイ店では、12ドル(約1,800円)の客単価で月間平均28万ドル(約4,300万円)を売り上げています。その大きな成功要因は集客力にあり、一日あたりの平均来店客数は770人、週末は1,300人に及ぶこともあり、毎月2万3,000人程度の来店客数を記録しています。

 そうした抹茶人気の背景には、米国における健康志向の高まりや、医療費高騰といった社会課題により、抹茶が「スーパーヘルシーフード」としての位置付けを確立していることがあります。“健康のため”と、味が好みでなくとも日常的に抹茶を飲む人が増える中で、「nana’s green tea」では原料を厳選し「健康機能性と本格的な美味しさの両立」という新たな価値提案を実現。米国市場での高評価に繋がりました。

(画像左)ブロードウェイ店のメニュー看板。日本と同等の「抹茶」「ほうじ茶」のメニュー展開がなされていた(編集部撮影)
(画像右)「nana’s green tea」ブロードウェイ店データ(七葉 朽網氏の登壇資料より引用・編集部作成)

 

 また、ニューヨークでの成功に欠かせないのは、有力パートナーとのアライアンス戦略だと朽網氏は述べます。商品製造を支える在庫管理システムや、効率的な店舗オペレーション体制の構築を可能とすること、また、好立地物件を紹介できるような力を持つパートナーと繋がりを得ることが、海外事業における重要なカギとなります。

2030年までに北米エリア100店舗を目指す

2024年11月に新オープンした「nana’s green tea」Melbourne Storeの外観(画像左)と内観(画像右)
(同社公式プレスリリースより)

 

 マーケティング戦略においては、現地パートナーによる情報発信を主体としてInstagram活用を強化。特に北米店舗においては、インフルエンサーマーケティングやSNSを通じた施策が好評で、マーケティング会社との協業によるインフルエンサーとのコラボレーション等を積極的に展開しています。今後同社は、2030年までに、北米エリアで100店舗、その他エリアで100店舗、合計200店舗出店という事業目標を掲げ、さらなる海外事業拡大へと挑みます。

来店客で賑わうMelbourne Store(同社公式プレスリリースより)

<スペシャル対談>nanaʼs green tea×Apparelweb

 セミナー後半では、同社人気商品の「360KYUSU」で淹れた「クロモジほうじ茶」と「抹茶生チョコレート」をお楽しみいただきながら、七葉 代表取締役 朽網氏×アパレルウェブ 代表取締役CEO千金楽による対談を実施。対談と交流会の様子の一部をお届けします。

七葉・朽網代表(画像左)とアパレルウェブ・代表取締役CEO千金楽(画像右)による対談の様子

海外店舗にも日本から食材を輸出 オリジナルの提供を徹底

アパレルウェブ 千金楽:海外進出を本気で検討するクライアント企業はかなり多いです。実際に海外出店する中で、メニュー設定や食材調達など、ローカライズはどう進めていますか?

七葉 朽網氏ローカライズに関して、ハラル等は別問題として、基本的に現地の方は日本のオリジナルを求めていますので、日本と同等のクオリティを提供することが非常に大切だと考えています。海外に合わせたメニュー開発は行わず、食材についても、抹茶、あんこ、わらび餅といった日本でしか手に入らないものはすべて日本から輸送しています。それ以外の食材で現地調達できるものは、海外事業部が現地に赴き、1カ月程問屋を巡って食べ比べをすることで厳選しています。私自身も食が好きでこだわりがありますが、スタッフにも美味しいものを食べさせて目利き力を鍛え(笑)、私たちが「これなら大丈夫」という食材選定や品質管理を徹底しています。

アパレルウェブ 千金楽:海外でのフランチャイズ(以下、FC)展開については、国内をモデルケースにしていますか?それとも、個別契約を結んでいるのでしょうか?

七葉 朽網氏:北米でのFC展開は日本と異なり一定の参入障壁があります。まず、FC法に基づいて「FC情報開示書」(注1)という法的文書を作成し、連邦や州に申請する必要があります。食材の輸出に関しても、「FDA(米国食品医薬品局)」の基準を満たしているか、商品毎の登録が求められます。こうした初期の参入ハードルをクリアさえすれば、パートナーを見つけることで、FC展開は比較的スムーズに進みます。

 とはいえ、海外FC事業では、基本的にエリア契約は結ばず、個別店舗契約でリスクヘッジをしています。エクスクルーシブ(販売独占権)は100%求められますが、それは譲りません。しかし、FCオーナーとはあくまで平等な関係を築いて、店舗の成長段階に沿った柔軟性のある契約を結んでいます。例えば、ロイヤリティは最初は3%で、本部主導でマーケティングができるようになれば5%に引き上げる、といった具合です。


(注1)FC 情報開示書…Franchise Disclosure Document (FDD)。FC に関与する両者(フランチャイザーとフランチャイジー)の役割に関する包括的な情報を説明する文書。主に、フランチャイジーがビジネス投資にあたって正直かつ十分な決定をくだせるよう設計されるもの(Investopedia社より参照)

 

対談では、参加者から海外展開に関する質問が多数寄せられた
対談のアーカイブ全編はこちらから(要AIL会員ログイン)

 

アパレルウェブ 千金楽:ニューヨークのブロードウェイ店のオーナーは、実際に「nana’s green tea」の店舗を見ることなく出店を進めたと聞きました。

七葉 朽網氏:彼らは、ニューヨークで日本のカフェ業態を展開したいと思っていたようで、オンラインで検索し、公式サイトから問い合わせをくれました。その後、わざわざ私たちに会いに来日した際、ブランドムービーを紹介するとすごく気に入ってくれて握手を交わした、という経緯です。彼らはニューヨークで50年以上あらゆるアジア系フードビジネスを展開している実力派で、世界一の売上を誇るタピオカ店も近くに出店しています。「nana’s green tea」に興味を持ってくれて実力のある彼らと組むことで、10年以上空き地だった好立地を好条件で得られました。

 海外は現在6カ国14店舗に展開していますが、その9割が日本や先に出展したシアトル店舗などを訪れて「FC展開したい」と問い合わせをくれて実現しています。

現地のことは現地に任せる

アパレルウェブ 千金楽:「人の力を借りる」というのが海外ビジネス成功のコツかもしれないですね。2030年までに、米国100店舗を目指すとお話されていました。

七葉 朽網氏:日本人が米国でアメリカ人相手に戦うのは到底簡単ではないので、いかにパートナーと協調してビジネスを進めていくかが重要です。10人のオーナーが10店舗展開すれば、100店舗はすぐに届く数です。私たちは中小企業としてスタートしたので、マーケティング戦略や発信については現地を良く知るパートナーに一任しています。そうした意味で、信頼できるパートナーかどうかを見極めることが最も重要かつスムーズだと考えます。

アパレルウェブ千金楽:10月にブロードウェイ店を訪れた際、百貨店メイシーズの向かいの一等地に、日本ブランドが堂々と出店していることを大変誇らしく思いました。店内カウンターの行列も目の当たりにし、月に2万7,000人を誘致する店舗力を実感しました。

七葉 朽網氏:ニューヨークの成功体験が、また次の面白い展開に繋がっています。実は現店舗の隣にも空き物件があり、「nana’s green tea」を気に入ってくれたオーナーから逆オファーを受け、来春に「kissa nanaha(喫茶ナナハ)」という純喫茶業態をオープン予定です。日本でも、自由が丘店1階ではポップアップなど実施していますので、本日のイベント登壇を機に、皆様とも何かしらのご縁ができたら嬉しく思います。

アパレルウェブ千金楽:国内外問わず、ファッション・生活雑貨関連企業とのコラボレーションなど、輪が広がっていくことを期待します。本日はありがとうございました。

「お茶体験会」と交流会の様子

 対談セッションでは、参加者に七葉の人気商品「360KYUSU」で淹れた「クロモジほうじ茶」と「抹茶生チョコレート」をお楽しみいただきました。その後は和やかな交流会となりました!

(画像左下)グッドデザイン賞2024 を受賞した、360 度どの方向からも注げる急須「360KYUSU(サンロクマルキュウス)」と
同社オリジナル「抹茶生チョコレート」
(画像右下)登壇の朽網代表を交え、参加者の皆様との交流を楽しんでいただきました(編集部撮影)

アパレルウェブ・イノベーション・ラボではリアルセミナー&会員交流会を毎月開催!

 AIL会員企業様は人数・回数制限なく興味・関心いただけるテーマのイベントへご参加いただけます。次回は「脳の力を活性化!驚異の速読プログラム「BrainBoost」に迫る」テーマでイベントを開催予定。是非、皆様のご参加をお待ちしております。

*次回2025年1月28日(火)開催!お申し込みはお早めに!

脳の力を活性化!驚異の速読プログラム「BrainBoost」に迫る【リアルセミナー&会員交流会】

■開催日時
2025年1月28日(火)
16:00~19:00 *開場時刻:15:30~

■セミナー詳細・お申込はこちら

*イベントには定員がございます。人気テーマ回は満席となることもございますので、お早めにお申し込みください。

 

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執筆者

  • APPARELWEB INNOVATION LAB.(アパレルウェブ・イノベーション・ラボ)

    アパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)とは、ファッション・小売関連企業の経営層に向けて“イノベーションのヒント”を届けるため、アパレルウェブが2017年10月にスタートした法人会員制サービス。小売、メーカー、商社、デベロッパー、ベンダー企業など幅広い企業会員が集うコミュニティでは、各種セミナーや交流イベントを定期開催。メールマガジン、Webメディア、会員レポート冊子などを通じて毎週オリジナルのビジネスコンテンツを発信。

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  • 小川 祐佳|Yuka Ogawa

    APPARELWEB INNOVATION LAB. コンテンツディレクター

    おがわゆか●1990年、北海道帯広市出身。横浜市立大学国際総合科学部卒。繊維専門商社、PR・広告企業での法人営業職を経て2020年アパレルウェブ入社。現在は、企業経営層に向けビジネスヒントを発信する法人会員制サービス「アパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)」にて、セミナー・イベント企画、オウンドメディア編集、企業取材などのコンテンツ運営業務全般を担う。趣味は旅行・辛いもの。