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Amazon・TikTokの“次なる成長ハブ” ベトナム市場への戦略的投資

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により編集
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 大手テック企業がベトナム市場に注目しています。製造拠点としてだけでなく、EC輸出、デジタル経済、フィンテックの“次なる成長ハブ”としての存在感を強めるベトナムに対し、「Amazon(アマゾン)」や「TikTok(ティックトック)」といったグローバルプラットフォームが相次いで戦略的な投資・展開を進めています。

本レポートでは、EC輸出支援を軸に政府連携を深める「Amazon」と、決済領域へ踏み込む「TikTok」の最新動向から、ASEAN市場におけるプラットフォーム競争の新局面を読み解きます。


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[Amazon]ベトナム政府と提携し、EC輸出のASEANハブ化を狙う

 「Amazon(アマゾン)」は、ベトナムを東南アジアにおけるEC輸出の地域ハブへと成長させるための包括的な支援を発表しました。

 12月5日、ベトナム・ハノイで行われたLê Thành Long(レ・タイン・ロン)副首相との会談において、同副首相は、ベトナム政府がデジタルトランスフォーメーションおよび知識経済の発展を推進する上で、世界的なテクノロジー企業との協力を重視していると強調しました。

政府主導のデジタル化とAmazonエコシステムの接続

 Long副首相はAmazonに対し、ベトナムの技術系企業との連携をさらに拡大し、Amazonエコシステム内での製品開発や生産能力の強化を要請。加えて、政府としてAmazonの長期的な投資と協力を後押しするための有利な事業条件を整備する用意があると述べ、国内EC市場および科学技術エコシステムの成長への期待を示しました。これに対しAmazonのPointer(ポインター)氏は、ベトナムが2025年度に達成した社会経済的成果、特に行政改革やデジタル化の進展を高く評価しました。

中小企業の越境EC支援が急拡大

 Amazonはすでに、ベトナムの中小企業による海外展開を積極的に支援しています。過去12ヶ月間で、Amazonを通じて世界市場で販売されたベトナム企業の製品数は前年比35%増加。現在では、数千社のベトナム企業が同プラットフォームを活用し、グローバル市場への輸出を行っています。

 さらにPointer氏は、Amazon Global Selling Vietnam(アマゾン・グローバル・セリング・ベトナム)とベトナム貿易振興局(Vietrade)が締結した「V-Brands Go Global with Amazon(Vブランド・ゴー・グローバル・ウィズ・アマゾン)」プログラムについても言及しました(参照)。本プログラムは、1,000社のベトナム企業を対象に、オンライン輸出に関する包括的なトレーニングと認証を提供し、Amazonを通じてグローバル市場での競争力の向上を支援するものです。

2027年まで続く3年間の「V-Brands Go Global with Amazon」プログラムが発表された
「世界市場におけるベトナムブランド価値の向上」会議(VOV World参照)

 

 加えてAmazonは、電子部品サプライチェーンの現地化や、デジタル技術・AI分野における高度人材育成への協力の拡大も提案。これに対しLong副首相は、政府として科学技術、AI、デジタル化に関する法的枠組みの整備を進めているとし、柔軟で透明性のある制度設計を通じて、ベトナム企業のイノベーションと競争力強化を継続的に支援していく姿勢を示しました。

[TikTok]ベトナムで独自決済「TikTok Pay」を本格始動

 一方、「TikTok」は、ベトナム市場において独自の決済サービス「TikTok Pay(ティックトックペイ)」の導入を開始しました。これは、現地デジタル企業IOMedia JSC(IOメディアJSC)が技術・運営を支援し、State Bank of Vietnam(ベトナム国家銀行)の規制下で提供されます。

「TikTok Pay」の管理画面(参照

銀行連携から中国越境決済までをカバー 「金融エコシステムの当事者」へ

 「TikTok Pay」ユーザーは、銀行口座との直接連携に加え、VNG傘下の「ZaloPay(ザロペイ)」など複数の決済手段を選択可能に。さらに、中国の越境決済ネットワーク網とも接続するなど、高い柔軟性を備えた設計が特徴です。

 これまでTikTokは、東南アジア市場において、フィリピンの「GCash(Gキャッシュ)」、インドネシアの「GoPay(ゴーペイ)」、マレーシアの「Touch ‘n Go eWallet(タッチアンドゴーeウォレット)」など、各国の第三者決済サービスや既存金融インフラを利用・統合する戦略を採ってきました。しかし、今回の「TikTok Pay」立ち上げは、単なる決済手段の統合プラットフォームから、自ら金融エコシステムを構築・掌握する主体へと進化する転換点として位置づけられています。

 アジア全体に視野を広げると、この動きは。親会社ByteDance(バイトダンス)が中国本土で成功させた「Douyin Pay(抖音支付)」のモデルを海外展開する試金石と見られます。中国ではすでに自社決済がEC事業の基盤インフラとして機能しており、TikTokもこの成功モデルを参照しながら、次ぐ形として、

  • ・インドネシアGoToグループとの資本提携
  • ・シンガポール、マレーシアでの決済ライセンス取得に向けた動き

 

など、決済を軸とした事業基盤の強化を加速させています。

 業界関係者間によると、今回のベトナムでの「TikTok Pay」導入を皮切りに、「コンテンツ→トラフィック→取引→決済」までを一気通貫する“完全なる閉ループ”型プラットフォームの構築が、今後アジア各国で段階的に進められると見ています。これにより、プラットフォームの収益性向上だけでなく、データ活用能力やエコシステム統合が飛躍的に高まっていくでしょう。

どの国を起点にエコシステムを構築すべきか?が今後の重要なカギに

 成長著しいASEAN市場。中でもベトナムは、今回の二大プラットフォームの動きに見られるように、単なる「作る拠点」ではなく、「売る拠点」そして経済を「回す拠点」を握る次世代ハブとして期待されている、あるいは進化していることが示されています。アジア市場における競争軸は、もはや「どの国を起点にエコシステムを構築すべきか」という戦略設計そのものが重要なカギを握っているといえるでしょう。

 東南アジア市場へのビジネス展開を志向するアパレル・小売企業にとって、今後は国別戦略に加え、どのプラットフォームのエコシステムに接続するのかが、事業成長を左右する重要な判断軸となっていくでしょう。


参照:
https://vietnamnews.vn/economy/1731277/amazon-to-support-viet-nam-in-becoming-southeast-asia-s-e-commerce-export-hub.html
https://www.ebrun.com/20251223/632090.shtml

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  • ケルビン・アウ|Kelvin Au

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