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中国Anta Sports、LAに世界最大旗艦店出店 Puma買収に続き加速するマルチブランド×グローバル戦略

中国のスポーツ用品大手Anta Sports(安踏体育用品、アンタスポーツ)が、2026年に入りグローバル展開を大きく加速させる大規模な戦略を相次いで発表しています。象徴的なのが、ドイツのスポーツブランド「Puma(プーマ)」の株式約29%を取得し、筆頭株主となった大型投資です。
さらに2026年2月には、ロサンゼルスのビバリーヒルズにブランド初となる直営旗艦店をオープンしました。中国本土市場出における主力ブランドの成長課題も残る中、Anta Sportsが進める「ローカル×グローバル」戦略の最新動向を見ていきます。
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Puma株29%取得の狙い――マルチブランド×グローバル戦略の加速
2026年1月に締結されたAnta Sportsによる「Puma」株式取得契約において、取得額は約15億ユーロ(約18億円)にのぼり、これにより同社はPumaの筆頭株主となることを明らかにしました。背景には、Pumaが持つ120カ国以上に及ぶ販売網や、サッカーを中心とした強力なスポーツ資産の取り込みといった狙いがあります。Anta Sportsにとっては、自社単独では時間を要する欧米市場でのブランド認知を、一気に補完する手段となり得るためです。
ただし、今回は支配権を伴わない買収であり、今後の運営やブランド戦略はPumaの既存のガバナンスの枠組みの中で協議を進めるとされています。これらは、同社が「マルチブランド×グローバル化」戦略を推し進めるうえでの重要な動きといえるでしょう。
北米・東南アジアで進むDTCシフトと「ブランド主導」戦略
さらにAnta Sportsは、出資だけでなく、自社ブランドの直営展開も加速させています。
ANTA Beverly Hills フラッグシップ(公式サイトより)
2026年2月13日、ロサンゼルスのビバリーヒルズに、北米市場ではブランド初となる直営旗艦店をオープンしました。ビバリーヒルズは世界的な高級商業地として知られ、同店が出店した周辺には、アスレジャーブランド「lululemon(ルルレモン)」「Alo YOGA(アローヨガ)」や高級オーガニックスーパー「Erewhon(エレウォン)」など大手ブランドが並びます。
約280平方メートルの世界最大規模となる店内では、「東洋の美意識とグローバル表現」をコンセプトに、中国と西洋文化の融合を目指しています。「運動生活駅站(スポーツ・ライフスタイル・ステーション)」と位置付けられた同店では、「KAI(カイ)」シリーズや「C202」などの主力製品を展開しつつ、ランニングイベントやバスケットボールサロンを開催するなど、ローカル顧客との融合を図ります。中国ブランドの強みや文化を表現しつつ、特にNBAに関連するマーケティングや製品展開において重要な拠点と位置付けられています。
加えて、東南アジアでは「1,000店計画」を掲げ、中東では現地法人を設立するなど、卸売中心からD2C(直販)モデルへの転換を進めています。これは、同社が掲げる「ブランド+リテール」モデルの海外展開であり、単なる輸出ではなくブランド主導の市場開拓へとフェーズが移行していることを示しています。
ビバリーヒルズフラッグシップ店内の様子(GoogleMapより)
背景:成長の陰で浮かぶ中国市場の課題
一方で、国内の主要ブランドの業績は減速の兆しが見られます。同社の2025年第4四半期の主力ブランドの小売売上高が前年同期比で微減と伸び悩み、好調な「FILA」や「Amer Sports(アメアスポーツ)」とは対照的な結果となりました。
課題の一つは、過度に細分化された店舗戦略です。Anta Sportsは中国国内で20種類以上の店舗フォーマットを展開しており、そうした複雑な店舗戦略がブランド認知の分散やオペレーションコストの増大を招いていると指摘されています。グローバル化の成功を加速させる一方、本国でのブランド再整理を両立できるかが、同社の成長の鍵を握るといえるでしょう。
Anta Sportsは今後、グローバル化と中国市場の再成長を同時に成立させられるかという課題を抱えています。この「ローカル×グローバル」の両輪モデルを制することができれば、同社は単なる中国企業を超え、「NIKE(ナイキ)」や「Adidas(アディダス)」に並ぶ“第三極”としての地位を確立する可能性があるのではないでしょうか。




