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2024年上半期7,000超の実店舗閉店 中国小売に迫る大不況 世界最大手タピオカ茶ブランド「MIXUE」も閉店相次ぐ

ケルビン・アウ
AILメディアパートナー
執筆者

 デフレ脱却が難しく、直近の中国の小売市場は非常に厳しい状況に直面しています。中国国家統計局のデータによると、2024年1月〜6月の期間中、少なくとも7,000以上の実店舗が閉店したと発表されています。

 影響を大きく受けている業界には、ファッション、スーパーマーケット、レストラン、カフェ、百貨店などがあり、不況は広範囲に波及しています。米国最大手小売チェーンの「Walmart(ウォルマート)」の中国法人である「蜜雪冰城(Mixue Bingcheng、ミーシュービンチェン)」や、アリババグループの生鮮食品スーパーなど、大手企業の業績不振が挙げられています。

 閉店数が最も多いのはスーパーマーケットと飲食店です。理由はさまざまですが、家賃など固定コストの削減、賃貸契約の満了、Eコマースの利便性向上、価格競争、物流機能の発達などが複雑に絡み合い、また、実店舗を利用するユーザーが劇的に減少していることも要因です。他にも、書店やフィットネスクラブの閉店数も増加。特に、中国における健康志向ブームが一段落したことで、フィットネスクラブの閉店ペースの加速化が目立っています。経済全体の回復は鈍く、企業の新規IPO件数の歴史的な低水準が続いている状況です。

老舗デパートの頻繁な閉店

 2024年1月~6月までの消費財小売総額を見ると、百貨店全体の小売売上高は前年同期比3%減となり、業界全体としては減少傾向となりました。今年の上半期で、百貨店13店舗が閉店。その内訳としては、基本的に10年以上運営されている老舗企業がほとんどでした。閉店理由をみると、賃貸契約満了や事業戦略の調整が主な理由となっています。

6月30日に約27年にわたる営業に幕を下ろした中国・上海の百貨店「上海梅龍鎮伊勢丹」(日本経済新聞より)

 

 三越伊勢丹ホールディングスは、賃貸契約満了に伴い、中国の3店舗を閉店しています。しかし、賃貸契約満了は単なる兆候にすぎず、伊勢丹が閉店する本当の理由は、老舗百貨店業界全体の衰退だといわれています。中国の百貨店ビジネスモデルは10年以上前と何一つ変化がなく、かつてトレンドの発信地であった老舗百貨店は老朽化し、経営も苦戦しています。近年、老舗百貨店の閉店・撤退は常態化しているのが現状だといわれています。

 ショッピングモール、アウトレット、Eコマースなど、小売チャネルの発展に伴い、ブランド側の百貨店への依存度もますます低下。顧客にとっても、もともと百貨店で購入していた商品は現在、さまざまなECプラットフォームを通じてオンラインで入手することが容易となり、店舗への足が遠のくばかりです。

中国「お茶ビジネス」もバブル崩壊 トップブランド「蜜雪冰城(MIXUE)」は90日間で3,800店舗以上を閉店

 数年前、中国の健康志向ブームを背景に、相次いで登場した新興お茶ブランド。特に、Z世代向けの商品開発が盛んで、「ジュース×烏龍茶」「炭酸飲料×お茶」など、さまざまなヒット商品が人気を博していました。このお茶ブランドの一大ブームによって、「蜜雪冰城(MIXUE、ミーシュー)」などの人気が急上昇、市場も急成長し、2021年からIPOラッシュが続いていました。

タピオカミルクティーをはじめとする、「蜜雪冰城」の豊富な商品ラインアップ(公式サイトより)

 

 「蜜雪冰城(MIXUE)」は日本でも展開。圧倒的なコストパフォーマンスで業界最多の店舗数を誇っていました。ところが、100社以上の新興お茶ブランドが一気に新規市場参入したことで、価格競争が勃発しています。そのしわ寄せにより、最安値では1杯あたり4人民元(約85円)という破格の価格が登場。ここ数年間で起こった価格崩壊により利益率が大幅に減少し、一部上場した新興お茶ブランドの業績が急激に悪化しました。中には上場して早々に上場廃止となるケースも増えてきています。

 

画像左:約5か月前にオープンした「MIXUE」神戸店(「MIXUE」日本公式Instagramより)
画像右:昨夏にオープンし、同シーズン中に閉店した「MIXUE」高田馬場店(X投稿より)

 

 トップブランドである「蜜雪冰城(MIXUE)」は、直近90日間で3,477の新規店舗(フランチャイズ)を出店したものの、同じ期間中に3,808店舗が撤退するという事態に陥っています。同社は現在、約3万店舗を展開していますが、最近では撤退した店舗数が新規出店数を上回る傾向に転じつつあります。

 同様の状況は、競合企業でも発生しています。過度な価格競争により、価格崩壊、そして業界全体が崩壊していくような同様の事例はEV産業でも見受けられます。中国では、新興ビジネスによる先行利益獲得において、そのタイムリミットがどんどん縮小している現状です。中国の実店舗で成功を収めることは、もはや至難の業となりました。消費行動や購買環境の変化に対応した、新たなビジネスモデルの模索が急務となっています。


参照:
https://www.cbndata.com/information/292877
三越伊勢丹、中国・上海の百貨店を閉店 27年の歴史に幕(日本経済新聞)