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激化する中国発格安ECモール競争 「Temu(テームー)」が最速で売上高3兆円超を達成

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
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 中国のPinduoduo(拼多多、PDDグループ)が運営する格安越境ECモールの「Temu(テームー)」は、2022年9月に米国でサービスを開始して以来、急速な成長を遂げています。36Krメディアの推計によると、「Temu」の2024年1~6月の上半期の売上高は約200億ドル(約3兆1,000億円)に到達し、2023年の年間売上高180億ドル(約2兆8,000億円)をたった半年で上回りました。

 これは先発の中国系越境ECと比較しても最速の成長スピードです。「SHEIN(シーイン)」がサービス開始から9年後の2021年に、「TikTok Shop(ティックトップショップ)」が3年後の2023年に年間売上高200億ドルを達成したのに対し、「Temu」はわずか1年半でこの水準に到達。

「Temu」オンラインサイトトップページ

 

 また「Temu」の成長は米国市場にとどまらず、韓国や、直近で新規参入したブラジルでもアプリダウンロード数が米国に次ぎ世界2位になるなど、急速に拡大しています。現在では北米、欧州、アジアなど70の国・地域に進出し、成長速度においては他の中国系越境ECの追随をゆるさずトップの座を占めています。現在、「Temu」の最大の市場は米国ですが、越境ECへの規制などが厳格化される中で、米国単一市場への依存から脱却を進める方針だといいます。


参照:https://36kr.jp/299364/

タイとインドネシアで試験展開スタート 「TikTok Local Services」が小規模ビジネスを支援

 一方、中国ByteDance(バイトダンス)社による「抖音(Doyuin、ドウイン)」は、中国国内で新たに成功させた小規模ローカルビジネス支援事業「TikTok Local Services(ティックトックローカルサービス)」の試験運用を、タイとインドネシアで開始しました。

パートナー企業の募集を行う「TikTok」の事業者向け公式キャリアサイト

 

 「TikTok Local Services」は「TikTok Shop(ティックトップショップ)」を利用する既存の事業者に向け、宿泊施設やレストランの予約、レビュー・評価ランキング、クーポン券配布による集客支援などを提供するために開発された事業です。中国国内では、SNSの拡散力とEC事業とのシナジー効果により事業が奏功しており、同様の成果を海外市場でも展開すべくタイとインドネシアでの試験展開がスタートしたという経緯です。

 インドネシアで「TikTok Shop」を利用する事業者によると、現時点では試験的に一部のユーザーのみが飲食店の共同購入プランにアクセスできる状況だといいます。現在は現地提携企業の募集を公式サイトで行っており、欧州への積極的な展開が視野に入れられています。「TikTok Shop」は今年10月にスペインとアイルランドへの進出を予定しており、すでにメイン市場となっているイギリスとともに、「TikTok Local Services」の優先的な導入先となる可能性が高いといわれています。


参照:
https://careers.tiktok.com/position/7329769033153906954/detail?spread=G1DWUPV
https://www.scmp.com/tech/big-tech/article/3270300/bytedance-owned-tiktok-explores-local-services-markets-indonesia-and-thailand

アリババグループが海外送料無料を開始 「SHEIN」「Temu」へ対抗

 中国発グローバル格安EC間の競争が激化する中、アリババグループは「Temu」や「SHEIN」に対抗すべく、グループ傘下の越境ECモール「淘宝(タオバオ)」と「天猫(Tモール)」において、全世界で無料配送を展開すると発表しました。

「淘宝(タオバオ)」トップページ

 

 主に、両ECモールの衣料品販売事業者に対し、国際配送費用はアリババグループが全額負担するとし、海外注文が入ると従来通り中国国内のコンテナ倉庫に商品を発送するだけで海外発送が済みます。

 今回の海外送料無料の取り組みは、まずはシンガポール、マレーシア、韓国、香港、マカオ、台湾などの地域においてスタート。年内にはオーストラリアに拡大し、今後は欧州への拡大も検討しているとのことです。アリババグループの目的として、低コストで迅速に海外の新市場を拡大できるよう事業者支援をすることも掲げられています。


参照:https://www.ebrun.com/ebrungo/zb/554613.shtml?eb=search_chan_pcol_content

 

 中国発ECプラットフォーマーを中心に、世界を取り巻くユーザー獲得競争や価格競争が激化している昨今、新旧ECモールの覇権争いは日夜問わず繰り広げられています。今後も大きく動くであろう中国発グローバルEC市場に注目していきます。