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「ZARA（ザラ）」 中国にアジア最大級の旗艦店開設 世界初の衣料自販機と「Zacaffè（ザカフェ）」体験型店舗
スペインの大手アパレル企業Inditex（インディテックス）が展開するファストファッションブランド「ZARA（ザラ）」は、今後のブランド成長の主要市場として、中国・南京（ナンキン）市の新街口商業地区にアジア最大級の旗艦店をオープンしました。新店舗の目玉として、世界初となる衣料品の自動販売機や、アジア初のカフェ業態「Zacaffè（ザカフェ）」、さらに体験型コンテンツスタジオを導入し、小売業のデジタル化を加速させています。
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オムニチャネル戦略の実験ストアとしての位置付け
中国南京にオープンした「ZARA」旗艦店の外観@ZARA
約2,500平方メートルの2階建て店舗では、男女向けコレクションに加え、アジアでは初となるカフェ業態の「Zacaffè（ザカフェ）」を設置。また、店舗の最大の特徴は顧客が好みのサイズのTシャツを購入できる同ブランドでは世界初となる衣料自販機で、混雑時の待ち時間解消を図ることを狙いとした新たな取り組みが展開されています。
店舗1階フロアに併設されている「Zacaffè（ザカフェ）」@ZARA
そして、オムニチャネル体験重視の一環として、2階フロアには体験型サービスの「Zara Salon（ザラ・サロン）」と「Zara Fit Check（ザラ・フィット・チェック）」が新設されています。前者の「Zara Salon」は、世界で2拠点（スペインのア・コルーニャ、フランスのパリ）でのみ展開するサービスのコンパクト版で、予約制でのみ利用できる限定ファッションコレクションとパーソナライズされたスタイリングサービスを提供。
また、「Zara Fit Check」では、最新コレクションを試着し、SNSシェア用の動画を撮影できるサービスを提供。専用アプリで予約可能な個室の試着室も設け、デジタル世代の若者層を取り込む工夫がされています。
ブランドでは世界で初めて導入した衣料自販機@ZARA
同店はオムニチャネル戦略の実験場としての役割を担い、オンラインで購入した商品を2時間以内に店頭で受け取ることのできるサービスを提供するなど、シームレスなリアル店舗とECとの連携を強化しています。Inditexグループの中国統括責任者であるEugenio Bregolat（ユージニオ・ブレゴラット）氏は、「中国市場への継続的な投資を拡大し、現地の流行をリードしていく」とコメントしました。
「Zara Fit Check」の個室イメージ@ZARA
店舗数縮小＆スペース拡大 ローカライズ戦略
南京の新旗艦店は、パンデミック後にInditexがシフトした、実店舗小売戦略の好例でもあります。同社は店舗ネットワークの最適化のため、2020年6月には世界中の1,000〜1,200店舗を閉鎖し、かつ一方で、より幅広い製品ラインナップとショッピング体験向上を目指し大型店舗の展開を進めてきました。このパラダイムシフトは2024年度も継続され、店舗数を129店舗縮小しましたが、小売スペースは2％増加したといいます。
これは、「実店舗はオンライン販売に貢献する場である」とし、同社がオムニチャネル戦略を実行してきた結果です。広くゆとりのある店内では他にも、地元アーティストとのコラボレーションや、伝統的な中国のBGM音楽を起用した没入型のデジタルスクリーンなどが導入され、ショッピングだけでなく、地元客が立ち寄り“リラックスしてくつろげる”ような、商業とレジャーが調和された空間が演出されています。
店内内観の一部@ZARA
激化する中国市場競争
こうした店舗戦略の背景には、中国市場における競争激化があります。2024年度の同社のアジア地域売上高は前年比0.16%減となり、新鋭のローカルブランドの台頭による影響が見られました。こうした状況を受け、同社は世界的に小規模店舗の閉鎖を進める一方で、南京旗艦店のような大型店で体験価値を高める新戦略を打ち出しています。
「ZARA」の取り組みは業界全体の動向を反映したものであり、競合する中国発のブランド「Urban Revivo（アーバン・リバイボ）」も東南アジアへの展開を活発化させています。今回導入された体験型サービスやデジタル技術が他市場にも波及するかが注目されますが、「Zacaffè」の商標をめぐるイタリア企業との係争案件など、課題も残されています。
