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2024年中国「W11(独身の日)セール」速報! アリババとテンセントが歴史的提携 「Temu(テームー)」や「抖音(ドウイン)」に対抗の姿勢

ケルビン・アウ
AILメディアパートナー
執筆者

 中国の大型連休である10月の国慶節の直前に、中国政府は大規模な景気刺激対策を発表しました。その背景には、中国市場全体の消費意欲が回復したことと、各小売企業やECモールがタッグを組み、「W11(ダブルイレブン、独身の日)セール」の開始時期を例年より10日ほど前倒ししたことがあります。

 「W11」とは、毎年11月11日に、中国のECサイトを中心に開催される世界最大級のショッピングイベントです。例年、「W11」の先行予約イベントは10月20日前後に開始されますが、今年はそれよりも10日早い、10月10日に開始。これには、消費者の消費意欲を分散させないよう、大型連休の流れを利用して早期の売上確保に努めたいという狙いがあります。開始時期を前倒ししたことにより、「W11」は過去最長の1ヶ月間に延長され開催されることとなりました。

「天猫(Tモール)」と「JD.COM」のクーポンキャンペーン(百度より参照)

 

 「W11」の開始と同時に、市場の活性化が予想されるであろう状況に合わせ、「天猫(Tモール)」を運営するアリババグループを筆頭としたECモールは、出店する各事業者へ、10億元(約210億円)の補助金を支給。各事業者は補助金を活用して、セールやプロモーションといった販売促進を展開しました。その結果、先行予約の初日のGMV(流通取引総額)は、昨対比25%増となり、予約開始から3時間で20ブランドの売上が1億元(約21億円)を突破。例年以上の好スタートを切りました。

 また、新興ECモールに対抗すべく、歴史的な提携も発表されました。これまでライバル同士だったアリババグループと、「WeChat(ウィーチャット)」を運営するテンセントグループが今年の「W11」イベントをきかっけに提携を開始。両社の狙いは「Temu(テームー)」を運営する拼多多グループ(Pinduoduo Group、ピンドウドウグループ)、中国版TikTokで知られる「抖音(ドウイン)」、「快手(クアイショウ)」などの新興ECモールへの対抗を強化することだといえます。従来、両社間では、互いのECモールへの遷移を厳しく規制していましたが、これを機にそうした規制を撤廃。アリババグループのECモールで利用できる決済方法は「Alipay(アリペイ)」のみでしたが、今後はテンセントグループが運営する「WeChat」も利用可能となっています。

 飽和状態になりつつある中国EC市場では、これまで極端な寡占化が進んでいる状況にありましたが、新興勢力の台頭によって、市場が変化しつつあることがうかがえます。

今年の「W11」の新たな傾向 高級ホテル予約など“プチ贅沢”なコト消費が急増

 今年の「W11」における最も大きな変化は、コト消費(体験や経験を重視する消費行動)の増加です。中でも、ミドルクラスユーザーによる高級ホテルへのニーズが急増しています。例えば、ヒルトンホテルや上海ディズニーランドリゾートホテルでは、通常は一泊の宿泊費用が平均5万円以上ですが、「W11」期間中には、特別に一泊半額以下となる2万円台の宿泊プランを販売。こうした期間限定プロモーションが大反響を呼んだことを受け、上海ディズニーランドではさらにECモール各社と提携し、お得な宿泊セットを販売しました。宿泊プランには、開園時間より1時間早く入園できる権利も含まれていることから、特別な体験価値を提供し、結果として多くのミドルクラスユーザーの獲得に繋がっています。

「W11」期間中、ライブコマースでヒルトンホテルを紹介している様子(CBNData社より引用)
 

 ライブコマースは物販に優れている印象がありますが、実は観光コンテンツとも相性が良いといえます。「WeChat」や「抖音」には、元々ホテルやツアーの予約機能が備わっており、ユーザーにとっても違和感を与えることなく、シームレスにライブコマースと連携ができる利点があります。デフレが常態化しつつある中国では今後も、観光を中心とした体験コンテンツがEC市場を牽引する重要な商材となるかもしれません。


参照:
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1812966758423759113&wfr=spider&for=pc
https://www.cbndata.com/information/293272