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「MEJURI(メジュリ)」のロイヤリティプログラムに学ぶ ロイヤル顧客とのエンゲージメント
ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。アメリカのコーヒーブレイク中に行われるカジュアルミーティング、”Coffee Talk”にちなんで、気軽にインプットいただけるレポートを定期配信していきます。
筆者は2024年、さまざまな店舗での購入やECサービスを試してきました。中でもロイヤリティプログラムのサービスにおいて、派手さはないものの好印象だったのが、ジュエリーブランドの「MEJURI(メジュリ)」です。
「MEJURI」公式サイト
「MEJURI」は、カナダ・トロントを拠点に、2015年に二人の女性創業者によって誕生したファインジュエリーブランドです。ファインジュエリーとは、素材にプラチナまたは18カラット以上の金を使用し、天然宝石をあしらったジュエリーのことをいいます。同ブランドは”親しみやすく楽しい”をコンセプトに、カナダ国内で人気を拡大して以降、2018年には米国に進出し、ニューヨーク・ソーホーに店舗を構えています。
手頃な価格で購入できるゴールドヴェルメイユ(18Kゴールドをスターリングシルバーの上に重ねたもの、金メッキ)のジュエリーはアメリカでも注目を集めました。また、ゴールドやダイヤモンドなどのファインジュエリーも人気となり、2023年12月にはラボグロウンダイヤモンド(人工的につくられたダイヤモンド)の展開を開始。幅広いコレクションを展開しています。
ロイヤリティープログラム「MEJURI +(メジュリプラス)」について
「MEJURI」では2023年9月に、自社アプリの始動と同時に、ロイヤリティプログラム「MEJURI+(メジュリプラス)」をスタートしました。同プログラムには、以下の会員特典があります。
- 限定商品、セールへの先行アクセス
- イベントへの先行招待
- 購入履歴などに基づいたパーソナライズコンテンツ(アプリ限定)
- 誕生月のプロモーションと限定サービス
- 毎週月曜日は送料無料(最低購入金額の制限なし)
10月の記事の中で紹介した「MZ Wallace(エムジー・ウォレス)」とは異なり、「MEJURI」のロイヤリティプログラムでのランク制度はないものの、顧客にとって魅力的な特典サービスが豊富に用意されています。
多数あるサービスの中でも、顧客の誕生月の特典である「バースデー・スタイルセッション」では、店舗でパーソナルサービスを受けながら、特別に用意されたディスカウントで買い物を楽しめます。こうしたサービスは、ブランドが自然な形で、顧客の特別な日に関わることができる機会です。また、顧客側にとっても、こうした特別な体験を通じて購入した商品は、記憶に残るものとなるでしょう。
この他にも「MEJURI+」メンバーは、「新商品が発売される月曜日限定」で、購入価格に関係なく送料無料の特典を受けることができます。最近は会員登録をすれば「いつでも送料無料」を特典とするブランドもありますが、逆に曜日を限定することで「MEJURIで買い物する特別な日」という印象を与えてくれます。
「MEJURI」の店舗(画像左)と、
筆者が購入したゴールドヴェルメイユ製のイヤリング。58ドル(約8,700円)(画像中央・右)
今回筆者は、ソーホーにある「MEJURI」の路面店でピアスを購入しました。店舗スタッフが適度にアドバイスをしてくれる中で、心置きなく買い物することができました。購入後のレシートはメールで送付されてきます。店舗に訪れて買い物をした際に届く「サンキューメール」は、レシートメールに続いて送付されます。その中には「100ドル(約1万5,000円)」のギフトカードに当選するかも」というさらなる特典付きのアンケートが添えられていて、顧客の声を聞き入れるブランドの姿勢を表しているようでした。
ブラックフライデーでの差別化
「MEJURI」ストアイベントにて筆者撮影
11月のブラックフライデーの際には、会員限定の特別なストアプロモーションが実施されました。「MEJURI+」メンバーを対象に、事前の10月末にVIPショッピングイベントの招待が送付されました。同ストアイベントの内容は、「全品25%オフ」という特別割引が当日・時間限定で提供され、参加方法としては、事前に参加したい店舗を登録するというものでした。
「MEJURI」の通常のブラックフライデーセールでも同じ割引率が提供されましたが、そのプロモーションを利用するためには、最低でも150ドル(約22,500円)以上の商品購入が必要でした。そうした一般顧客と会員との特典の差別化を図り、会員限定で先行購入イベントを実施することで、会員と店舗との関係を深める機会を醸成し、さらに、「MEJURI+」メンバーの中からロイヤル顧客を見出す結果となったでしょう。
初回の「ウェルカムプロモーション」も嬉しいものですが、ブランドでの買い物回数が増えてくると、顧客はその貢献度に対するリターンを期待するものではないでしょうか。ロイヤリティプログラムは、置き換えてしまえば、ブランドと顧客との恋愛のようなもので、エンゲージの頻度が増えてランクが上がるにつれて、ブランドは顧客の好みを熟知し、一方で、顧客はブランドのメッセージを理解していきます。
これからロイヤリティプログラムの発足や改善に取り組む検討をしているのであれば、ぜひ、プログラムを恋愛関係に置き換えてみてください。どんなアプローチ(特典)を用意したら相手(顧客)が喜んでくれるのか、チーム内でも自然とアイディアが湧いてくるのではないでしょうか。
執筆者
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RINA Yoshikoshi
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
関心: #テクノロジー #NFT #WEB3 #ウェルネス #未来の街作り