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ブランドコラボの機運が高まる春のニューヨーク【Coffee Talk from NYC Vol.29】

RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。アメリカのコーヒーブレイク中に行われるカジュアルミーティング、”Coffee Talk”にちなんで、気軽にインプットいただけるレポートを定期配信していきます。

 Vol.29では、春の訪れとともにニューヨークで盛り上がるブランドコラボレーションやポップアップの現地レポートをお届け。

 4月2日に米トランプ大統領が発表した「相互関税」リスト困惑するのは各国の政府だけでなく、私たち消費者も同様で、心身共に負担を感じ始めています。しかし、小売業者としては立ち止まってばかりもいられません。困惑する消費者の気持ちをどのように導くかという模索が本格的に始まっています。

 4月になり、ニューヨークでは、まるで喪が明けたかのように、さまざまなブランドの新商品やコラボレーションなど、これから話題になりそうなニュースが飛び込んできました。「Moncler x Mercedes-Benzs by NIGO(モンクレール×メルセデスベンツ・バイ・ニゴー®)」「Kate Spade New York × Target (ケイト・スペード ニューヨーク × ターゲット)」「Coachtopia(コーチトピア)」など、筆者が実際に足を運んだニューヨークでのポップアップの様子を紹介していきます。

Moncler x Mercedes-Benzs by NIGO®<ラグジュアリーファッション

Moncler x Mercedes-Benz by Nigo®」(筆者撮影)

 

 デザイナーのNIGO®氏と「Moncler Genius(モンクレールジーニアス)」「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」がコラボレートし、クリエイトされたアパレルコレクション「Moncler x Mercedes-Benzs by NIGO(モンクレール×メルセデスベンツ・バイ・ニゴー®)」の立ち上がりを店舗に見に行ってきました。現在、「Moncler(モンクレール)」の店舗はマディソンアベニュー、フィフスアベニュー、そしてソーホーのプリンスストリートに3店舗出店されています。筆者はその中でプリンスストリート店に立ち寄りました。

 同コレクションは、2024年に上海で開催された没入型イベント「The City of Genius(シティ・オブ・ジーニアス)」で発表されたコレクションです。コレクションを紹介する動画の中で、「毎回過去を参考にする」と語ったNIGO®氏は、今回3つのブランドの特徴を融合し、そこにオールドスクールのヒップホップをリンクさせたそうです。

 

Moncler x Mercedes-Benz by Nigo | Nigo’s Inspiration ​(「Moncler」公式YouTubeチャンネルより)

 

 コレクション発売日となった4月4日、スプリングストリート店には、これを目当てに訪れる人で賑わっていました。コレクションは店内に入ってすぐのエリアで紹介され、販売スタッフも丁寧に接客してくれました。店先には、Tシャツやニット類などにもプリントされているベンツが停車。そして偶然にも、NIGO®氏が撮影している姿を見ることができました。こうしたシーンを日常の一部で体験できるのも、“ニューヨークらしい”と感じます。

 ちなみに、「Moncler」といえば、2026年にマンハッタンの5番街にある「Apple Store(アップル・ストア)」の目と鼻の先に、世界最大の旗艦店をオープンするという話も出ているようです。

Moncler x Mercedes-Benz by Nigo®」(筆者撮影)

MONCLER –プリンスストリート店
99 Prince street, NYC

TARGET x KATE SPADE NEW YORK<レディースファッション>

 米大手小売総合チェーンの「TARGET(ターゲット)」は、ニューヨークを代表するブランドのひとつでもある「Kate Space New York(ケイトスペードニューヨーク)」とコラボレートし、春に向けてプレイフルなコレクションを発売。

Kate Spade New York × Target」(「Target」公式ストアより)

 

 今月12日に発売された「Kate Spade New York × Target (ケイト・スペード ニューヨーク × ターゲット)」のコレクションは、アパレル、ハンドバッグ、アクセサリー、ホーム、パーティグッズなど300点以上もの展開が予定されているそうです。また今回の限定コラボの半数以上は、なんと15ドル(約2,100円)以下という低価格設定。インフレの追い風が厳しい昨今、ブランドに興味を持ってはいるけれど購入までは手が届かないといった顧客層にとって、とても親しみやすい価格帯となっています。これらの商品は一部店舗で限定販売、もしくは「Target」の公式オンライン「target.com」で同時販売が予定されています。

 

公式ストアでは手頃なコラボ商品がラインアップ。プライス別のカテゴリ分けは、10ドル、15ドル、25ドル、35ドル以下と豊富に揃う
(「Kate Spade New York × Target」公式ストアより

 

 「Kate Spade New York」といえば、2023年2月に大手リセールプラットフォームの「ThredUP(スレッドアップ)」と業務提携し、「Kate Spade PRE-LOVED(ケイト・スペード プレラブド)」というリセールプログラムを公開していました。しかし、今回のコラボをきっかけに近況を調べてみると、4月4日でそのコラボは終了していることが分かりました。理由は定かではないものの恐らく、2年間のパートナーシップによって、二次流通や消費動向について多くのことを学べたに違いありません。今後はブランドリセールへとシフトするかもしれません!

BLOOMINGDALE‘S  x COACHTOPIA<リテール>

 59丁目にある百貨店「Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)」の1階には、ポップアップを実施する「The Carousel(ザ・カルーセル)」という売場があります。現在その売場では、「COACH(コーチ)」による、サステナブルにフォーカスしたサブブランド 「Coachtopia(コーチトピア)」のポップアップが開催されています。

「Bloomingdale’s」での「Coachtopia」ポップアップ会場(筆者撮影)

 

 このポップアップでは、「COACH」を象徴するアイコンバッグ「Taby(タビー)」などの、レザーの端切れから作られた「Arlter/Ego(オルター/エゴ)」のコレクション、「Hampton(ハンプトン)」「Brooklyn(ブルックリン)」のハンドバッグ、また、リサイクルプラスチックで作られた「COACH LOOP(コーチループ)」のコレクションも取り扱われています。ループコレクションは、プラスチックを98%以上使用し、「Coachtopia」のクローズドループシステムの一環として、何度でもリサイクル可能な作りが特徴となっています。

 ポップアップはアース月間の4月いっぱい開催し、売場では毎週末イベントが開催されるそうです。中には、「Coachtopia」の製品を購入したお客様に、100%リサイクル素材で作られたバッグ用のダストバッグがプレゼントされ、さらにその場でスクリーンプリントしてもらえるという、嬉しい特典も用意されています(3/22, 4/5, 4/19開催)。

 「Coachtopia」については、メディアを通じてすでに知っている方も多いかもしれません。しかし、実際に見たことがあるという方はどれだけいるでしょうか。もしまだ見たことがないという方は、東京・渋谷のキャットストリートにある「COACHPLAY(コーチプレイ)」のショップで、サステナブルな製品の可能性や、店舗で提供されるエクスペリエンスを体験してみてください。

「COACHPLAY」渋谷キャットストリート店オープニングイベントの様子(AIL編集部撮影)

 


Coachtopia @ Bloomingdale’s – 59th /Lex Flagship store
1000 Third Avenue

COACHPLAY @CAT STREET
東京都渋谷区神宮前6-14-5 CASA神宮前

 

 「コラボ」といえば、NIGO®氏のコラボが立ち上がった日は、「Eric Emanuel(エリック エマニュエル)」と「Matty Boy(マッティ ボーイ)」のショートパンツの発売日でもありました。

画像左:「Eric Emanuel」、画像右:「Stussy New York Chapter」(筆者撮影)

 

 「Eric Emanuel」のフラッグシップストアがあるグリーンストリート前には、多くのファンが集まり、警官が出動するほどでした(写真左)。運良く購入できた顧客の嬉しそうな姿の横で、さっそく道端で再販する姿も見受けられ、新商品が瞬く間に二次流通に流れていく様を横目に、そそくさと店先を通過しました。


EE®
91 Greene street

 

 また、「行列」といえば、今年2月にソーホーにカムバックした「Stussy(ステューシー)」も入場制限を設けながら営業しています。たまたまかもしれませんが、筆者がそのエリアを通過する時に見かける客層は、ほとんどが若いアジア顧客(写真右)。一方、その近隣に出店される「Supreme(シュプリーム)」の客層は、年齢も人種もさまざまで、ドロップの日以外でも多少の行列は、未だに日常茶飯事となっています。


Stussy New York Chapter
50 Prince street