Report
“No-Buy=買わない宣言”時代に突入か そのときブランドにできることは?【Coffee Talk from NYC Vol.30】

ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。アメリカのコーヒーブレイク中に行われるカジュアルミーティング、“Coffee Talk”にちなんで、気軽にインプットいただけるレポートを定期配信していきます。
Vol.30では、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるファッションの祭典「Met Gala(メットガラ)」の華々しい幕開けの一方で、今年に入り「TikTok」でトレンド入りしている「No-Buy 2025(買わない宣言)」という、ファッション業界の相反するトレンドに触れ、ファッション小売企業やブランドが取るべき姿勢を考えていきます。
ニューヨーク メトロポリタン美術館(筆者撮影)
ファッション業界で「ニューヨーク」「ファッション」「5月」の3つのキーワードが挙がると、真っ先に思い浮かぶのは、ニューヨーク・マンハッタンにあるメトロポリタン美術館の「Costume Institute(コスチューム・インスティチュート)」が毎年開催する展覧会のことでしょう。「First Monday in May(5月の最初の月曜日)」とも呼ばれるこの日は、展覧会のオープニングを飾るイベントとして、完全招待制のファッションの祭典「Met Gala(メットガラ)」が開催され、多数のセレブリティやファッションアイコンが集結します。
今年の展覧会のテーマは、「華麗なるブラック・スタイル」。モニカ・L・ミラーの著書である『Slaves to Fashion: Black Dandyism and the Styling of Black Diasporic Identity』に基づき、ブラック・ダンディズムに焦点を当てたものです。
展覧会は、2025年5月10日から10月26日までメトロポリタン美術館で開催されます。この期間にニューヨークを訪れる機会がある方には、必ず観てもらいたいイベントの1つです。
メトロポリタン美術館
https://www.metmuseum.org/exhibitions/superfine-tailoring-black-style
コンセプトムービー:What Is a Black Dandy? | Superfine: Tailoring Black Style(「The MET」公式YouTubeチャンネルより)
「No-Buy 2025」:その意味とは?
ファッションの歴史や、その華やかな世界を讃える一方、今年に入ってから「TikTok」を中心に「No-Buy 2025(買わない宣言)」がトレンドとなり注目を集めています。
そこで「Google」のAIサービス「Gemini(ジェミニ)」を活用して、話題の「No Buy 2025」 について調べてみました。
——「No-Buy 2025(ノーバイ2025)」とは
「No-Buy 2025(ノーバイ2025)」とは、「2025年は不要不急な買い物をしない」と決めて生活する自主的なチャレンジのことです。2024年に「TikTok」でハッシュタグ「#NoBuy」が誕生して以来、若い世代を中心に、節約・借金返済・環境負荷の軽減などの消費行動の見直しを目的として広がったムーブメントで、今年に入りより広範な社会現象としての発展の兆しを見せています(参照)。
——なぜ人気なのか?
「無駄使いを減らして貯金や借金返済を進めたい」「物を減らしてシンプルに暮らしたい」「過剰消費を抑え、ゴミや二酸化炭素の排出を減らしたい」また「自分の消費習慣を見直したい」という気持ちで取り組んでいる方が多いようです。
——購入しても良いもの(生活必需品)
生活必需品に関しては購入して良いことになっており、その中には「食料品や日用品」「家賃や光熱費」「医療費や薬代」「通勤や通学の交通費や車の整備費用」「修理が必要なもの」が含まれます。
——購入を控えるもの(非必需品)
購入を控えるものとして挙げられているのは、「新しい衣類・靴(特にファッション目的)」「コスメ・美容関連アイテム(必要最低限を除く)」「家具・インテリア雑貨」「ガジェット・電子機器」「娯楽・趣味関連(代替手段を探す例が多い)」などがあります。
上記に挙げた“購入しても良いもの”や “購入を控えるもの”に関しては、あくまでも一例です。「No Buy 2025」に参加すると決意したら、自分自身で1年間のゴールを決めてリストを作成するため、当然、その内容は個人間で異なります。このムーブメントにチャレンジしている人はいったいどのようなゴールを立てているのか検索してみたところ、やはり「新しい衣類の購入を控える」という項目が目立ちました。
今年に入ってから、このムーブメントについては多数のメディアが報じており、最近ではニューヨークタイムズも記事として取り上げたほどです。しかし実際のところ、このムーブメント自体は新しく登場したものではなく、以前から存在していました。それが最近トレンドになった理由としては、やはり昨今のインフレや「これ以上クレジットカードの負債を増やしたくない」と考える人が増えたことが背景にあるようです。
ブランドは今まで二次流通のサービスに対して、「参入すると新商品が売れなくなってしまうのではないか」という心配をしてきました。しかし現実では、消費者は二次流通どころか、そもそも「不要不急な買い物をしない」ことにチャレンジするようになってしまっているのです。
ブランドは、どのような対策ができるのか?
答えは、“購入を控えるもの”に「ファッション」がリストアップされたとしても、“購入しても良いもの”として、“「リセール品」であれば多少OK”という考え方を消費者に提案することです。
ファッションブランドだけでなく小売業者ならば、この「No-Buy 2025」のムーブメントは、いま話題が尽きない関税問題と同様に、これ以上大きくなってほしくない話題ではないでしょうか。しかし、見る角度を少し変えれば、頭の痛いこの2つの問題はマイナスなことばかりではないのかもしれません。
このムーブメントが日本でも話題となった場合、皆様のブランドはどのような対策を試みますか? ぜひ、これを機に考えてみてはいかがでしょうか。
執筆者
-
RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG