Report
TikTok、ASEAN4.6億ユーザー突破! “ディスカバリーコマース”のAI成長戦略と地域支援

中国ByteDance(バイトダンス)が運営するショート動画アプリ「TikTok」は、エンターテインメントから“ディスカバリーコマース”のハブへと進化を遂げています。ASEAN地域ではユーザー数が4.6億人を突破し、一方英国では、中小企業を対象に総額1.5億円の支援プログラム「Shop Local(ショップローカル)」を開始しました。同社のAI技術を基盤としたグローバル成長戦略と地域密着支援が、いかにブランドや企業に新たな成長機会をもたらすのか、最新のグローバル動向を解説します。
関連記事:
TikTok運営元ByteDance(バイトダンス) 売上高がMeta(メタ)を上回る 評価額50兆円の世界トップソーシャルメディア企業へ
「TikTok Shop」がヨーロッパ市場拡大へ ディスカバリーECの高い成長率にフォーカス
クイックサマリー
【ASEAN】4.6億ユーザーが創出する「発見と学習」のエコシステム
「TikTok」は、ASEAN地域においてユーザー数が4億6,000万人を突破したことを、ベトナム・ハノイで開催されたサミット「Apps Summit Southeast Asia(アプリサミット東南アジア)」で発表。最も急成長しているプラットフォームとしての地位を確立しました 。特にインドネシアで1億6,000万人以上、ベトナムで7,000万人、タイで5,000万人といった大規模なユーザーを抱えており、アプリ開発者や企業にとって指数関数的な成長機会を意味しています。
同社はさらに、こうした大規模なユーザー基盤を背景に、ベトナムの文化スポーツ観光省傘下のデジタル変革センターとの覚書(MoU)を締結。現地のビジネス支援や文化交流を促進しデジタル成長へと繋げることを目的とし、ベトナムのデジタルエコシステム強化を担うパートナーとしての一歩を進めました。これは、プラットフォームが地域デジタル経済の主要な推進力となり得る可能性を示しています。
Apps Summit Southeast Asia(参照)
エンタメからビジネスハブへ:AIが加速するコンテンツの発見
また、同社によると、ユーザーはエンターテインメントだけでなく、新しいことを学び、発見する目的でプラットフォームを利用しているといいます。それは、ユーザーによるアプリ内でのディスカバリー(発見)の3分の2が意図的なものであり、45%のユーザーがコンテンツ探索を続けているという定量面からも裏付けされています。「TikTok」は単なるエンターテインメントプラットフォームから、金融、旅行、小売、ゲームなどさまざまな業界・領域におけるアプリの発見やビジネス成長のハブへと進化しています。
この“ディスカバリー”を加速させるのが、AIを活用したソリューションです 。マーケター向けには、数分で高品質な動画コンテンツを作成できるジェネレーティブAIクリエイティブスイート「Symphony(シンフォニー)」を提供 。さらに、AIがターゲット設定、入札、クリエイティブ選択を自動化するパフォーマンスソリューション「Smart+(スマートプラス)」は、広告投資の収益率(ROAS)向上に貢献しています 。これらの取り組みは、「TikTok」が急成長するASEANデジタル市場において、ブランドと開発者の有意義な成果を上げるのを支援するという長期的なコミットメントを示しています。
【英国】「Shop Local」で総額1.5億円の中小企業支援プログラムを開始
TikTok Shop SMBs(「TikTok」公式ニュースルームより)
ASEAN地域におけるグローバル成長戦略の一方で、「TikTok Shop(ティックトックショップ)」は英国の中小企業を支援するための新プログラム「Shop Local(ショップローカル)」を開始しました。このプログラムは、総額75万ポンド(約1億5,000万円)の支援スキームで、英国産品を扱う企業が新たな顧客を獲得し、売上機会を広げることを目的とした地域密着型の支援です。
同プログラムの対象となるのは、アンバサダーを務める環境保護活動家で農家の Jimmy Doherty(ジミー・ドハティ)氏により選出される5社の英国企業です。選ばれた企業はそれぞれ15万ポンド超(約3,000万円)のサポートを受けることができ、その支援内容は多岐にわたります。
「Shop Local」による専用支援パッケージ内容
- ・「TikTok Shop」の専門家による導入サポート
- ・販売拡大のためのメンタリング
- ・ライブコマース研修
- ・マーケティング支援およびPRサポート
- ・TikTokクリエイター紹介と注文獲得の支援
同コンテストへの応募資格・条件として、「英国に拠点を置く企業であること」かつ「従業員250人未満」、「『TikTok Shop』未出店の英国企業」であることに加え、「@TikTokShop_UK」をタグ付けし、ハッシュタグ“#ShopLocalComp”を付けて「地元コミュニティへの貢献や地元産の自社商品を紹介する動画を投稿」する必要があります。
「TikTok」公式ニュースルームより
「ディスカバリーコマース」の力で地産地消を支援
「TikTok Shop UK」は、「ディスカバリーコマース」モデルにより、「小規模企業でも大きな予算やフォロワー数がなくても新規顧客にリーチする可能性がある」という点を強調しています。これは、「TikTok」が独自調査で得た、中小企業の52%が「事業運営は昨年より厳しい」と感じ、約3分の1(29%)が「新規顧客の獲得が最大の課題である」と回答している現状に対する重要な解決策となり得ます。同調査ではまた、英国人の83%が「もっと入手しやすければ英国産の農作物を購入したい」と回答し、4人に3人(75%)が輸入品より地元産の製品を好むという結果が明らかになりました。
AIドリブンと地域密着型で、エコシステム基盤強化へアプローチ
これらの「TikTok」の動向は、同社が単なるコンテンツプラットフォームではなく、グローバルとローカルのデジタル経済の両面で、ブランドや企業の「成長エンジン」としての役割を担い始めていることを示しています。特に、AIを活用した効率化支援や政府機関との連携によるリーチ拡大(ASEAN地域)と、地域経済の課題解決に特化した資金・ノウハウ提供(英国)という二極のアプローチは、デジタルプラットフォームの進化が次のステージに入ったことを示唆しています。同社は今後、成長著しいASEAN市場や、“地域密着型”ビジネスにおいて、ブランドや開発者の成功を支える長期的なデジタルエコシステムの確立を目指しています。
参照:
https://www.marketinginasia.com/tiktok-surpasses-460-million-users-in-southeast-asia-inks-partnership-with-vietnams-ministry-of-culture-sports-and-tourism/
https://newsroom.tiktok.com/tiktokshoplocal?lang=en-GB
https://www.retailgazette.co.uk/blog/2025/10/tiktok-shop-local-shops/
執筆者
-

ケルビン・アウ|Kelvin Au
AILメディアパートナー
-

高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA
Showcase Tokyo代表・在英ライター|AILメディアパートナー
ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。
-

APPARELWEB INNOVATION LAB.|アパレルウェブ・イノベーション・ラボ
アパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)とは、ファッション・小売関連企業の経営層に向けて“イノベーションのヒント”を届けるため、アパレルウェブが2017年10月にスタートした法人会員制サービス。小売、メーカー、商社、デベロッパー、ベンダー企業など幅広い企業会員が集うコミュニティでは、各種セミナーや交流イベントを定期開催。メールマガジン、Webメディア、会員レポート冊子などを通じて毎週オリジナルのビジネスコンテンツを発信。
【お問い合わせ】
株式会社アパレルウェブ
アパレルウェブ・イノベーション・ラボ運営事務局
お問い合わせフォーム
公式Xアカウント(旧Twitter) @apparelweb_lab





