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TikTok ShopがLazada(ラザダ)を抜いた! アセアンEC市場首位のShopee(ショッピー)に迫る 中国ECプラットフォーマー激戦
シンガポールの調査会社Momentum Worksのレポートによると、昨年のアセアン(ASEAN)のEC市場の総流通総額(GMV)は、1,146億ドル(約17兆円)にまで成長しています。ECプラットフォーマーのシェア率でいうと、シンガポール発の「Shopee(ショッピー)」が48%で首位、同じくシンガポール発「Lazada(ラザダ)」が16.4%で2位。次いで、「TikTok Shop(ティックトックショップ)」とインドネシア発の「Tokopedia(トコペディア)」がそれぞれ14.2%を占めて3位同率となっています。
ただし、「TikTok Shop」は「Tokopedia」を買収しており、両社のシェアを合わせると28.4%となるため、「TikTok Shop」は実質的に「Lazada」を抜いて2位の位置付けに浮上しています。
Momentum Works社による「東南アジアの電子商取引 2024」レポートのハイライト動画
アセアンの中でも、2022年から2023年にかけてベトナムとタイが急成長。特に、ベトナムは2022年の90億ドル(約1.3兆円)から2倍の成長を遂げ、2023年には138億ドル(約1.9兆円)と52.9%の市場規模に到達しています。インドネシアは依然として最大のEC市場規模を誇り、アセアン地域のGMVの46.9%を占めています。
タイとベトナムのEC市場が急速に成長。インドネシアに次いで2位、3位の位置に
「東南アジアの電子商取引 2024」レポートのハイライト動画より
(Momentum Works社 公式YouTubeチャンネルより参照)
アセアン各国では「Shopee」がリード。「TikTok Shop」が存在感を示し始めている
(Momentum Works社公式YouTubeチャンネルより参照)
アセアン市場は中国ECプラットフォーマーの主戦場に 7月にはTemuがタイ上陸
アセアンEC市場は、「TikTok Shop」「Temu」といった中国発ECプラットフォーマーによる急速な展開が拡大しており、激戦区となりつつあります。2024年7月末、中国のPinduoduo(拼多多、PDDグループ)が運営する格安越境ECモールの「Temu(テームー)」がタイに正式上陸しました。同社は「Shopee」「TikTok Shop」「Lazada」に対抗するため、90日間の無条件返品施策や最大90%OFFなどの割引施策を実施しています。
「Temu」タイ公式サイト
一方で、「Temu」の米国市場での業績は減速し始めています。CBNdata(CBNデータ)メディアによると、来年以降「Temu」は米国事業の予算を60%から30%まで引き下げ、アセアン市場と欧州に注力する予定だといいます。同社のタイでの展開にあたっては、独自の物流ネットワークを構築し、中国・広州の倉庫から陸路経由でタイ・バンコクまで商品を運ぶことによって物流コストを大幅に削減しています。8月末時点で、「Temu」は世界76カ国で展開しており、欧州での拠点が最も多くなっています。
また、同社は4月にフランスに上陸し、シェア率が既に11%を超え、同じくライバルである格安ECモール「SHEIN(シーイン)」と同等程度になっています。
「Temu」は2024年7月地点で72の国と地域に展開
(Momentum Works社公式YouTubeチャンネルより参照)
アセアンは若年人口の割合が高く、約7億人の半分以上を30歳以下が占めています。そうした人口構成もあり、アセアンEC市場における競争は今後ますます激化していくでしょう。また、米Amazonは2024年7月、新たに低価格帯のセクションを設けると発表。「Temu」を意識した戦略ではないかといわれており、近年急激に台頭している「TikTok Shop」や「Temu」といった中国発ECプラットフォーマーが、アセアンのみならずグローバルEC市場の勢力図を塗り替える日も訪れるやもしれません。