米Meta(メタ)社は、AI分野での競争力強化を目的として、データラベリング企業のScale AI(スケールAI)に約150億ドル(約2兆円)の大型投資を行い、同社の49%の株式を取得したことを発表しました。
今回の投資は、同社がOpenAI(オープンAI)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)などの競合他社に対し、AI分野で遅れを取っている危機感から行われたものとみられています。同社は次世代AIモデル「Behemoth(ベヒモス)」の発表を今秋に延期すると5月時点で発表しており、技術的な課題に直面しています。
そうした背景の中、Meta創業者であり会長兼CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、汎用人工知能(AGI)の実現に向け、約50人の専門チームを新たに結成。そして、Scale AIのCEOであるAlexandr Wang(アレクサンダー・ワン)氏をその中核メンバーとして迎え入れました。Wang氏は28歳という若さでありながら、Scale AIの取締役会にも残留し、二重の役割を担うことになります。
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Scale AI CEOのAlexandr Wang氏 (公式Instagram@alexanddeerより)
Wang氏は、中国系移民・米国系中国人2世として、22才でScale AIを創業。
米国の一部メディアによると、今回のMetaによる巨額出資は、
Scale AIはもとより、Wang氏という人材を獲得するための投資という見方が主流
「AGI」とは、人間の認知能力と同等かそれ以上の能力を持つAIの概念であり、現在、ほぼすべてのAI業界のリーディングカンパニーが競合他社に先駆けての実現を目指し競い合っています。
このMetaによる巨額投資により、Scale AIの企業価値は約300億ドル(約4.3兆円)に押し上げられ、1年前の評価額から約2倍の成長を記録。Scale AIは、OpenAI、Google、Microsoft、Metaといったテクノロジー業界の大手リーディングカンパニーにAI学習用データを提供する企業で、2025年の同社売上高は前年比2倍以上の約20億ドル(約2,900億円)に達する見込みです。
さらに、Metaとの契約締結に加え、Scale AIでは、米国政府をはじめ、ここ数ヶ月で世界各国政府との契約締結に注力しています。例えば、カタールとの5年契約では、公務員や医療従事者などに向けた自動化ツールを提供。アジアやヨーロッパ諸国との取引にも今後注力していくとのことです。Wang氏のこうした人脈により、Meta社が米軍との防衛関連におけるAIエージェントプロジェクトへの参入機会を得る可能性もあります。
Meta社では2025年中にさらに600億~650億ドル(約8.6~9.4兆円)の巨額の設備投資を行い、130万台以上のGPUを備えた大規模データセンターの建設を進める計画です。Zuckerberg氏は、同社のAIアシスタント「Meta AI」が2025年中に10億人のユーザーに達し、2025年4月に発表した次世代の大規模言語(LLM)モデル「Llama 4(ラマ・フォー)」を業界最高水準に押し上げるという目標を掲げています。この投資は、従来のM&A審査を回避しながら、AI企業の専門技術を獲得するための新たな戦略として注目されており、「Microsoft×OpenAI」「Amazon×Anthropic(アンソロピック)」の提携にみらるように、大手テック企業によるAIスタートアップ企業への投資パターンを踏襲したものといえます。
今回の投資はMeta社にとって初となる外部企業への大型少数株主投資となり、メッセージングアプリの「WhatsApp(ワッツアップ)」買収に次ぐ第二の大型案件として位置付けられています。