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BFCMから最新ストアまで 〜 2024年の振り返り ~

RINA Yoshikoshi
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。2024年最後のコラムでは、今年1年間で印象に残ったことを振り返りながら、BFCM(ブラックフライデー・サイバーマンデー)や最新の店舗出店について、ニューヨーク在住のAILメディアパートナーよりご紹介します。

■二次流通

 2024年は、「ヴィンテージショップ」「マーケットプレイス」「ブランドリセール」、そして「レンタル」において新規事業やサービスの拡大が目立つ1年でした。

 筆者も今年に入り多数のサービスを実際に体験しましたが、購入後もたびたびブランドリセールサイトをチェックしているのは「On Running(オン)」や「Lululemon(ルルレモン)」です。ランニングやトレーニングを行うようになってからは、ファッション以外の部分も関心が高まっており、ブランドの本サイト(新製品)だけでなくブランドリセールサイトも合わせてチェックしています。

「On」によるリセールサービス「「Onward」の専用サイト

 

 特に筆者が「On」のブランドリセール「Onward(オンワード)」で購入したジャケットは、手頃な価格で購入できたにも関わらず、新品同様で、大変満足しています。購入の決め手となったのは、現在販売されているスタイルよりも、過去シーズンのスタイルの方が好みだったからです。また「マーケットプレイス(P2P)」で探すのではなく、ブランドリセールを利用したのは、やはり「偽物が届くのではないか」「届いてみたら商品説明と少し違うかもしれない」というような懸念がないことが理由です。買う側からすると、必ずしもリセールで買い物する理由が「安価だから」ではなく、単純に「好みのスタイルだから」ということや「安心感や信頼感」ということも大いにあるのです。

ニューヨーク・フラットアイアン地区の「On」店舗(左)とブランドリセールの筆者購入品(右)

 

 また、今年は「Lululemon」のブランドリセール「Like New(ライクニュー)」のサンプルセールへ参戦しました。セールに並んでいた人の中には、「Like New」のサービスを知っている人、そうでない人とそれぞれのようでしたが、買い物に盛り上がる人々の姿からは、リセール品への抵抗感は感じられませんでした。「欲しい」という気持ちになった時には、新製品でも、アウトレットでも、リセール品でも、そこにはもうボーダーラインはないということです。

■メンバーズプログラム

「REI」ソーホー店(左)、筆者が「ReSupply」を利用して購入したシューズ(右)

 

 2024年、筆者は、アウトドアブランド「REI(アール・イー・アイ)」と、ランニングブランド「Bandit Running(バンディットランニング)」の二つのメンバーズプログラムに加入。「REI」は加入前からソーホーにある店舗をよく利用しており、その理由として同店舗ではリセールの売り場「ReSupply(リサプライ)」が展開されている特徴があります。トレードイン(買取り)やリセール製品を購入するには、メンバーズプログラム「Co-op(コープ)」への加入が必要です。会費は、最初に30ドル支払うのみで、永久継続されます。

 今年は会員特典を利用し、ソーホー店の「ReSupply」売り場で、「Hoka One One(ホカオネオネ)」のランニングシューズをかなりリーズナブルな価格で手に入れることができました。

 「Bandit」の店舗外観と筆者購入品

 

 一方「Bandit Running」は、創設して数年の比較的若いブランドで、展開するコレクションも限定的です。メンバーシップに加入すると、新作のリリースの際には先行アクセス権が与えられるほか、お得なメンバーズ価格で買い物ができます。先行アクセスにそこまで特別感を感じない方もいるかもしれませんが、同ブランドでは、これまで欲しかったアイテムが、一般発売の前にサイズ切れや完売することがたびたびあったため、例え有料であってもコミュニティに参加することに筆者は魅力を感じています。

■BFCM(ブラックフライデー・サイバーマンデー)

Glossier」ソーホー店のブラックフライデー期間のショーウインドウ(筆者撮影)

 

 今年も10月の終わり頃から、ブラックフライデー・サイバーマンデー(略してBFCM)で世間は賑わいました。Adobeデータによると、ブラックフライデーのオンライン売上は過去最高の108億ドル(約1.6兆円)に。また、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では、ブラックフライデーの米国でのショッピング売上高が1億ドル強(約157億円)と、前年の約3倍に達したと、米Bloomberg(ブルームバーグ)社が報じています。また、多くの小売業者が利用するECプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」では、ブラックフライデー期間中に過去最高となる115億ドル(約1.8兆円)の売上をグローバルで達成したと報告しました。

 ここ数年、筆者はBFCM期間中に店舗での買い物をしなくなりました。今年購入したものといえば、日々の生活を豊かにするキッチン用品や家電が中心で、服などのファッションアイテムは、ブランドからの情報の発信量の多さに疲れ果てることもあり特に購入にいたっていません。日頃から買い物をするブランドや、気になっているブランドのほとんどが20%から50%オフのプロモーションを実施していましたが、「お得だから買おう!」ではなく、「本当に買う必要があるのか?」と考えてしまいます。素敵な服やバッグがたくさん発売される中で、落ち着いて自分のクローゼットをのぞいてみれば、気に入って購入した服やコートが目の前にあるのです。

■ニューヨークに訪れたら直行したい、二つの最新ストア

 気温もグッと下がり、冬らしくなってきたニューヨーク。この時期に来訪する観光客は、華やかで心温まる五番街に集中します。ニューヨークのクリスマスというと、ロックフェラーのクリスマスツリーやフィフスアヴェニューに出店するデパート、そしてラグジュアリーブランドのホリデーウィンドウの飾りが世界的に有名です。その中でも、プロジェクションマッピングを取り入れて毎年大掛かりなホリデーセレブレーションを実施してきた「Saks Fifth Avenue(サックス・フィフス・アベニュー)」が、今年は規模を縮小したことが注目を集めました。ミニマルにウィンドウと店内を飾ることに留めたのです。

 日本でこの記事を読んでくださっている会員の方の中には、新年1月に「全米小売業協会 (NRF)」がマンハッタンで開催する、小売業のカンファレンス&EXPO「Retail’s Big Show(リテールズ・ビッグ・ショー)」に参加される方もいらっしゃるかもしれません。

 そのような中で、ニューヨークに訪れる際には、ぜひチェックしていただきたい話題の店舗を二つご紹介します。

「Louis Vuitton」のフラッグシップ内観のホリデーウインドウ一部(筆者撮影)

 

 一つ目は、ニューヨーク五番街にある「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」のフラッグシップストア。数年にわたる改装オープンに先駆け、先日に大胆で広大なテンポラリーストアをオープンしました。場所は以前「NIKE TOWN(ナイキタウン)」が出店していた場所で、改装が行われているフラッグシップストアからは目と鼻の先です。

 話題の新店舗では、アメリカでは初となる「ルイ・ヴィトン カフェ」やチョコレートショップ、新しいグローバルな美食コンセプト、そしてエクスクルーシブなカプセルコレクションも展開されます。複数のフロアにわたり繰り広げられる「ルイ・ヴィトン」の世界。ショッピングだけでなく、エンターテイメント性にもあふれており、幅広いカスタマーを迎え入れてくれる特別な場所です。

 過去の「ルイ・ヴィトン」のコレクションの中でも「マーク・ジェイコブス」がクリエイティブ・ディレクターを務めていた時代が筆者個人的に好きだったこともあり、店内にショーケースされた当時のバッグを発見した際には歓喜しました。筆者が店を訪れた際には、買い物目的であれば特に並ぶことなく入店できましたが、カフェ利用は事前に「Resy(レーシー)」というレストラン予約サービスでテーブルを確保する必要がありました。


【ストア情報】
Louis Vuitton 57th Street NYC
6 E 57th St, New York, NY 10022
https://us.louisvuitton.com/eng-us/magazine/articles/57th-street-nyc

 

ニューヨークの五番街に2024年12月にオープンした「SKIMS」のフラッグシップ(筆者撮影)

 

 二つ目は、タレントやデザイナー、起業家、弁護士、女優といった多彩な才能を持つキム・カーダシアン氏によるランジェリー・インナーウェアブランド「SKIMS(スキムズ)」です。これまでデパートで取り扱われてきたブランドのフラッグシップストアが、12月5日、遂にニューヨークにオープンしました。

 筆者が訪れたのはオープン翌日。メディアでは「SKIMS x THE NORTH FACE」のコラボレーションの話題となっている最中でした。ストアはラグジュアリーブランド「Cartier(カルティエ)」の真横にあります。スリーフロアに分かれ、定番のコレクションからメンズ、そして「Dolce & Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)」とのコラボも。この時期ならではの、ホリデーコレクションの売り場は特に賑わっていました。

「SKIMS」フラッグシップでの筆者購入品

 

 「SKIMS」のストアの窓からは、今年数年ぶりにリアルのランウェイショーを開催した「Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」の店舗が見えます。ミニマルなデザインでありながらも、セクシーさも兼ね備えた「SKIMS」は、セレブブランドというよりも、下着ブランドとして、市場での確固とした存在を確立している印象を受けます。


【ストア情報】
SKIMS NYC FLAGSHIP
647 5th Ave, New York, NY 10022 
https://skims.com/

執筆者

  • RINA Yoshikoshi

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG