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“ブラインドボックス戦略”でZ世代が熱狂 中国発ポップトイブランド「POP MART(ポップマート)」時価総額5兆円を突破

中国発のポップトイブランドであり、IP(知的財産)ビジネスのプラットフォームである「POP MART(ポップマート)」が、“ブラインドボックス戦略”でZ世代の心を掴み、米国市場を席捲しています。2025年5月時点で、時価総額は日本円で約5.2兆円に達し、全米22店舗を展開。新たなコレクティブル(収集)文化を生んでいます。
福袋やガチャガチャを源流とする「ブラインドボックス」
画像は、人気キャラクターの「Labubu(ラブブ)」(公式オンラインサイトより)
「POP MART」による「ブラインドボックス」とは、どのキャラクター商品が入っているか開封するまで分からない状態で販売する方式で、“開封時のワクワク感”をそのまま商品化したこのコンセプトこそが、爆発的な人気を醸成した核心であり、次世代の「開封体験」の成功例といえるでしょう。さらに、「レアアイテム」の存在がコレクターたちの収集欲を刺激しています。
ブラインドボックス戦略が見事にヒットし、2024年の同社の売上高は25億ドル(約3,500億円)に到達。米国の大手玩具メーカーHasbro(ハズブロ)や、日本の大手玩具・模型メーカーのバンダイを凌ぐ勢いで急成長しています。
2023年、「POP MART」の主力キャラクターである「Labubu(ラブブ)」のぬいぐるみシリーズ「エキサイティング・マカロン」は、発売後、転売価格が3倍に高騰するという社会現象を引き起こしました。米国メリーランド州コロンビアにある店舗では、同商品を買い求めようと100人以上が列をなし、その熱狂ぶりが話題となりました。
世界各地に2,300台以上が設置されている「ROBO SHOP(ロボショップ)」(公式サイトより)
同社の販売主軸は大きく2つ、リアル店舗と、各国に設置されているフィギュアの自動販売機「ROBO SHOP(ロボショップ)」です。特に、リアル店舗は、米国ニュージャージー州にある巨大複合施設「American Dream(アメリカン・ドリーム)」を皮切りに、2025年末までに店舗数を44店舗に倍増する計画だといいます。また、コレクターによる開封動画のSNS投稿が「バズ」を生み、中には再生回数が1億回を突破する動画も。そうしたSNSとの相性の良さはデジタルネイティブ世代の“共感”を呼び、さらなる熱狂につながっています。
キャラクターごとに世界観があり、
限定版やコラボレーション商品も多く展開している
(公式オンラインサイトより)
「POP MART」の成功要因は、「限定品戦略」と「コミュニティ形成」にあるでしょう。毎月新作シリーズを投入することに加え、0.5%の確率で出現する「シークレットレア」のフィギュアを織り交ぜることで、コレクターの収集熱を持続させています。そして、それに伴いコレクター同士によるフィギュアの「トレード(交換)市場」や、二次創作アイテムのEC販売も活性化しています。
同社のマーケティングディレクターJames Fu(ジェームズ・フー)氏は、「POP MART」の成功について、「キャラクターごとに設定されている“物語性”と、独創的な“アート性”の融合が“共感”を生んでいる」と分析。今後は、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)との連動や、AR技術を活用したデジタルコレクションの展開を計画しており、玩具業界の枠を超えたカルチャー発信としての企業の進化が期待されます。