世界初! 「Decentraland」でファッションウィーク開催
2022年3月24日~27日の4日間で、世界初となるバーチャルファッションウィーク「Metaverse Fashion Week(メタバースファッションウィーク、以下MVFW)」が開催されました。MVFWの会場は「Decentraland(ディセントラランド)」という、ブロックチェーン技術の一つであるイーサリアムを利用したメタバース空間です。
AILでは、MVFW開催前の3月10日に、アバターを用いて「Decentralandで集合してみよう!」というワークセッションを行いました。そんな編集部が注目してきた仮想空間でファッションウィークが開催されるとあって、AIL編集部も参加! メタバース上でのファッションショーの様子、各ブランドの仕掛け、そして体感したことをレポートしていきます。
期間中のイベントは盛りだくさん!
4日間のMVFWはイベントが盛りだくさんで、関連イベントは約80件もありました。ただMVFWの開催は世界標準時間を基準としているため日本とは8時間の時差が発生。ほとんどのイベントが日本時間の深夜もしくは早朝に行われたことから、残念ながらすべてに参加するのは難しく、一部のランウェイショーとパネルディスカッションに参加するミッションを掲げて参戦しました。
期間中、参加者は無料でサングラスなどのリワードアイテムがもらえた
イベント参加の証“トークン”をゲットせよ
メインエントランスでは期間中にログインした人に向けて限定のリワードアイテムが配布されていました。オンラインゲームなどでもイベント期間中にしか入手できない限定アイテムがありますが、参加者特典があると参加する意欲や楽しみにつながります。
こういったメタバース上で得られるアイテムは、基本的には前号でも解説したトークンというものになります。トークンはデジタル上での情報資産。今回のMVFWは誰でも参加できるオープンイベントですが、ブランドが招待した少数のVIP客だけに配布されるトークンであれば、その希少性から価値が高まります。もちろん配布数や転売ルールなどは制作側が付与することができ、この特徴もトークンのメリットになります。
ちなみにMVFWが開催された「Decentraland」は、登録不要のゲストアカウントでも遊ぶことはできますが、自身のウォレットを連携させてログインすることをお勧めします。今回編集部では事前に作っておいた「Metamask(メタマスク)」のウォレットを利用しました。このウォレットは自身が所持する鞄や財布のようなもので、移動した先の異なるメタバースのそれぞれでトークンが受け取れ、保管も半永久的にできるようになります。イベント参加記念のNFTといったレアアイテムもメタバース上で集めることができ、この互換性の高さが、特定のオンラインゲーム上だけでアイテムが配られ使用できた従来の仕組みとは一味違うところです。
「MetaParty」主催のダンスパーティに潜入せよ
夜通し開催されるものや、毎日決まった時間に催されるものなど多彩なイベントがあるなか、興味深かったのが「Meta Party(メタパーティ)」が主催するダンスパーティです。会場に入ると自身のアバターが勝手に踊り出し、限定販売のファッションアイテムも購入できました。
そして「MetaParty」がイベント時に限定販売したNFTが「Royal Runway Suit(ロイヤルランウェイスーツ)」と名付けられた前衛的なスーツ。下の画像にあるスーツがそれですが、同画像の中央右寄りにStockとあり、「58/100」と記載があります。つまりこれは限定100点のNFTで、この時点で残りの在庫は58点であることを示しています。画像下部に表示されているのは42件の購入者アカウント。価格は6イーサリアム(2022年3月31日時点で1イーサリアム=約41万円)。日本円に換算すると約250万円です。
カジュアルには購入しにくいですが、着用者が何人かパーティ会場に現れました。高価な限定スーツを着たアバターがダンスを踊っている姿を見ると、すごい世界が目の前に広がっていると実感しました。
バーチャルランウェイショーに参加せよ
続いて「ETRO」のバーチャルランウェイショーに参加してみました。メイン会場には大きく開始までのカウントダウンが表示され、仮想空間の中で行われる未知のショーということもあり、妙な期待やワクワク感が高まる中、ショーの開始まではお気に入りの観賞場所を探したり、会場の様子を撮影(ここでは画面キャプチャ)するなどして過ごしました。
いよいよショーが開幕すると会場の演出が始まりました。高揚感のある音楽と、現実離れしたバーチャル空間での映像演出は非常に相性が良く、自身のアバターの視界モード(アバター目線で鑑賞ができる)で次々と歩くモデル(アバター)を見ていると、あたかも自分がその空間にいるような没入感を得られます。当社では実際のコレクションのランウェイショー取材も行いますが、比較はできないものの、感覚として鑑賞後の興奮は同じくらい大きいものがありました。
いくつかのイベント会場に立ち寄りショーを鑑賞するなどしていると、本当に大きなイベントに参加しているような気分になり、ショーの余韻から、近くにあるそのブランドのNFTが飾られているギャラリーを覗きに行きたくなります。ショーでアバターモデルが着用していたアイテムは、別区画のブランドのギャラリーで見ることができ、それらの多くは「Opensea(オープンシー)」などのマーケットプレイスで購入することができます。
イベントに参加できなくてもMVFWを楽しめる!
MVFWに合わせた特設展示がいくつも出現していて、それぞれブランドやギャラリーの世界観が作り込まれていました。日本でも出店が話題になった「MetaTokyo」のブースにも行ってみましたので、会場の外観と内部ギャラリーの様子を紹介します。
建物は仮想現実なのでなんでもありです。とにかくコンセプトとインパクトを重視したデザインになっています。ギャラリーでは、ブランドのECサイトに直接移動して商品を販売しているものや、話題になった「cloneX」のようなアイコンのNFTを現実のアートギャラリーのように空中や壁に展示して販売していることがほとんどでした。
世界初のMVFWに参加してみて
数多あるイベントからピックアップして参加した感想ではありますが、一番感じたことは発展途上という印象でした。参加人数も想定していたより多くはなく、そもそもメタバース環境に慣れ親しんだ層と、ファッション好きの層との親和性がどこまであるのかわかりません。そうとはいえ、同時に大きな可能性も感じることができました。その理由の一つは、バーチャルショーを鑑賞したことで、知らないブランドだったとしてもファンになる可能性が大いにあると感じた点です。
一般的には、リアルでブランドのランウェイショーを見る機会はほとんどないと思います。そこで、バーチャル空間で同じような感動を覚える演出を見た場合、ユーザーはショーをきっかけにブランドを知り、興味を持ち、ファンになっていく、ということが起こり得るのではないでしょうか。
もう一つの可能性は、イベント限定商品の売れ行きです。イベント限定スーツの事例をレポートで紹介しましたが、一着あたりおよそ250万円のスーツを着用しているアバターが同じ空間に参加している光景を目の当たりにして、今後のブランドビジネスにおいては、NFT、メタバースの関係性をしっかり理解し、このような仕掛けを考えていく必要があると感じます。この仕組みにいち早く順応し、メタバース上で仕掛けることができるブランドは、必ず新しい経済圏でのポジショニングを築いていくはずです。将来的には売上の20%、ともすると50%近くをデジタルファッションの販売で賄うブランドが登場してきてもおかしくないと感じた貴重な体験でした。是非、皆さまも次回のMVFWやメタバースイベントに参加をして体感してみてはいかがでしょうか。