中国ではライフスタイル関連のレジャー市場が成長しており、例えば、日本円で500万円以上する高級自転車もZ世代、ミレニアム世代の間で人気を博し、納車に半年を要するブランドも続々登場していることがわかりました。今回はこの「高級自転車ブーム」の背景、そして中国の若者の消費マインドの変化についてレポートします。
今回の「高級自転車ブーム」には主に2つの要因があります。1つはコロナ禍において、長期間のロックダウンが解放されたことによる「ひとり旅」の需要です。
日本で「ひとり旅」を楽しむ人は少なくありませんが、もともと中国では友達や家族で行動するのが一般的で、ひとりで外食や観光をする習慣がありません。他方で、この10年の間に「中国型草食系青年」と呼ばれるような若者が増えてきました。物欲に乏しく、学歴や社会的地位に対して消極的で、ひと昔前に日本を訪れ爆買いしていた中国人観光客とは真逆の性格と言えます。そんな彼らは厳しいロックダウンを通して、ほぼ24時間を家族と一緒に暮らさなければならない日々を経験。ロックダウン解除後には、開放感を満喫したい気持ちと、長く厳しい日々を我慢した自分へのご褒美に、節約してきたお金を自分のためだけに使う人が増え、ひとり旅と高級自転車へのニーズが高まっていきました。
ここで取り上げる“高級自転車”とは日本円で約80万円のものがアベレージ。なかにはヴィンテージ自転車や限定品もあり、500万円以上のモデルも見られます。しかも希少性が高いほど人気が高く、現地のニュースによれば、500万円以上の自転車のなかには3年待ちのモデルもあるといいます。
中国市場における「Alex Moulton」の商品の中でダントツの人気を誇る「3B1A」モデル
(Alex Moulton China公式サイトより)
実は高級自転車がトレンドとなった背景には、社会や価値観の変化以外に、転売市場の存在があります。その市場は高級品を転売して利鞘を稼ぐ「転売屋」「せどり」がいて成立するもので、これが「高級自転車ブーム」をリードするもうひとつの要因となっています。転売市場が成立するのは買い手となるマニアコレクターが多くいるためですが、中国では国産の高級自転車ブランドが少ないこともあり、海外の高級ブランドが中心になって転売されています。今最も人気なのは「自転車のロールスロイス」と呼ばれる「Alex Moulton(アレックス・モールトン)」というイギリスの高級自転車ブランド。現地カスタマイズされたもので、モノによっては転売価格が1,000万円に達するケースも!このように転売と二次流通市場の存在も、高級自転車ブームをしっかりと後押ししているのです。