
長年、大手アパレル企業と取り組み、先進物流を構築・運営してきたフロー・メイカーズホールディングス。同社は3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)として、企業から物流業務を一括で受託・運営しているリーディングカンパニーです。グループ会社である株式会社エムエルシーでは、物流センター及び店舗・ECの情報一元化を支援するシステムやサービスの開発に取り組んできました。
昨年から、新たな倉庫管理プラットフォーム「SMARTS-EVO(以下、スマーツエボ)」の展開をスタート。40年以上にわたりアパレル物流に特化して培ってきたノウハウを武器に、昨今深刻化する物流課題に本気で向き合い、新たなサービスを提供しています。
「物流の2024年問題」が大きく報じられたのは、皆様も記憶に新しいところではないでしょうか。現在もなお、ドライバー不足や燃料費の高騰など、あらゆる外的要因によって物流コストは上昇を続け、いかに効率的にコストを抑えるかが業界全体の最重要テーマとなっています。
そこで、企業側の視点に立ち、“初期導入コストを極力抑える”ことを実現したのが「スマーツエボ」。“本当に必要な機能だけ”を備えることで、低コストながらも、倉庫運用の効率アップを後押ししています。2025年には、神戸の大手コーヒーブランドのノベルティ入出荷作業への導入をスタート。アパレル以外の商材にも活用の幅を広げています。幅広い業界の物流ニーズに応える「スマーツエボ」について、その強みや導入事例、そして物流の未来に向けた同社の展望を、営業統括UNIT 上席執行役員 山本 誠司氏、執行役員 山本 実氏、シニアスーパーバイザー 梅本 友嗣氏の3名に伺いました。
 画像左から、執行役員 山本 実氏、シニアスーパーバイザー 梅本氏、上席執行役員 山本 誠司氏
画像左から、執行役員 山本 実氏、シニアスーパーバイザー 梅本氏、上席執行役員 山本 誠司氏
画像中央は「SMARTS-EVO(スマーツエボ)」の商標登録証明書
(エムジェイファンクション提供)
(画像右) 山本 誠司氏
株式会社エムジェイファンクション 営業統括UNIT 上席執行役員
やまもと せいじ●1970年、兵庫県神戸市出身。1989年入社後、40年近くアパレル物流業務に従事。現場業務、センター長を経てその経験を活かし、幅広い営業活動に従事。
(画像左) 山本 実氏
株式会社エムジェイファンクション カスタマーサポート&コンサルティングUNIT 執行役員
やまもと みのる●1969年、兵庫県神戸市出身。1990年入社後、水岩ファッションサービス㈱の現場及びセンター長を歴任。2000年㈱エムジェイファンクションへ転籍後は、新規センターや海外(中国)物流検品センターの立ち上げに従事。現在はDX推進事業の中心メンバーとして、物流の省人化を目的としたマテハンの導入や立ち上げに従事。
(画像中央) 梅本 友嗣氏
水岩ファッションサービス株式会社 営業統括UNIT シニアスーパーバイザー
うめもと ゆうじ●1982年、兵庫県明石市出身。2002年新卒入社後、アパレル物流における入出荷業務に長く従事し、自社拠点のセンター長を歴任。現在は営業担当として各種物流サービスの販促活動に従事。
クイックサマリー
導入コストが従来の10分の1。「スマーツエボ」誕生の背景とメリット
はじめに、アパレル業界と非アパレル業界の倉庫・物流には、どのような違いがあるのか教えてください。
梅本氏:
アパレル物流の大きな特徴は、サイズやカラーごとに品番(SKU)が細分化されるため、SKU 数が非常に多く、管理が複雑になりやすい点です。また、ハンガー品やフラット品などの取り扱いには特に注意を払っています。一方で、非アパレル物流ではSKU 数が比較的少なく、高積みでの在庫管理も可能なため、大規模な倉庫での効率的な運用に向いています。ただし、その分フォークリフトなど新たなマテハン(注)や設備投資が欠かせず、それに伴う人材確保も求められます。
さらに、アパレル商品は比較的軽量で、重量を意識する必要がありませんでした。しかし、非アパレル商材の取り扱いにおいては、重量管理は避けて通れない重要課題です。また、非アパレル分野では業務全体のDX化が一層進んでおり、これもアパレル物流とは大きく異なる環境だと実感しています。
(注)マテリアル・ハンドリング(Material Handling)の略。倉庫や工場などの物流現場で行われる「運ぶ」「仕分ける」「保管する」といった作業や、それを支える機器・システムの総称。代表的なマテハン機器には、フォークリフトのほか、コンベア(搬送)、ピッキングシステム(仕分け)、クレーン(荷役)などがある。
倉庫現場の様子。
アパレル物流の幅広いSKUに対応した管理体制(エムジェイファンクション提供)
なるほど。取扱商材の違いは物流オペレーションにも直結するのですね。では、どのような背景で「スマーツエボ」の開発に至ったのでしょうか。
梅本氏:
1980年代後半に初代WMSシステム「SMARTS(スマーツ)」を開発して以来、「SMARTS-NEO(以下、スマーツネオ)」へと進化と改良を重ねながら、倉庫や物流センターの出入庫・在庫・棚卸しといった作業を、ワンストップで効率化してきました。その中で、長年にわたりアパレル業界に特化し、高度な物流機能を備えてきましたが、一方でお客様からは「必要な機能をより短期間で導入したい」というお声も寄せられるようになりました。
近年、アパレル業界では市場の縮小に加え、D2Cブランドやインフルエンサーによる小規模ブランドの立ち上げが増え、業界構造や消費者ニーズはますます多様化・細分化しています。こうした中で「物流面のコストハードルや人手不足を解消し、より手軽に導入できる選択肢」として誕生したのが、2024年にリリースされた「SMARTS-EVO(スマーツエボ)」です。
山本 誠司氏:
「スマーツエボ」は、事業規模10億~30億円程度の中小企業を主な導入対象とし、必要最小限の主要機能を備えつつ、スマートフォン上でデータ活用や運用が完結できます。それにより従来の「スマーツネオ」と比べ、導入コストは約10分の1に抑えられ、最短1か月でスピーディーに導入いただけます。「低コスト」「スピード感」が最大の強みで、お客様にとってお手軽にご利用いただくことをモットーとしております。

■「SMARTS-EVO(スマーツエボ)」公式サイトはこちら
■サービスに関するお問い合わせ contact_evo@mizuiwa.
導入ハードルの解消は企業にとってうれしいですね。実際に「スマーツエボ」を導入した際のメリットを教えてください。
梅本氏:
好評いただいているのは、スマートフォンで物流業務を完結できる点です。従来必要だった専用ハンドスキャナーが不要になり、関連機器の導入コストも削減できます。さらに、作業者の習熟度に関係なく、すぐに操作できる仕組みが整っており、例えば、ピッキング作業ではスマートフォン上で商品画像を表示し、実際の商品と照合できます。これにより、作業効率が格段に向上するだけでなく、派遣スタッフや短期バイトでも即戦力として活躍でき、人材不足を解消する狙いもあります。
スマートフォン上で「スマーツエボ」に表示される商品画像と、実際の商品を照合(エムエルシー提供)
山本 実氏:
物流業界で深刻化する人手不足には、「作業の解りやすさ」は極めて重要な視点となります。今後の改良の一環として、「スマーツエボ」では外国人労働者向けの翻訳機能の追加を検討していきます。
また、Wi-Fi機能を搭載しているのも大きな特徴です。従来は専用回線が必要でしたが、Wi-Fi対応により世界中で場所や環境を問わず利用可能になりました。現在は、中国の物流センターで複数の現地生産商品をアソート(店舗ごとに商品を仕分け)し日本に輸入する取り組みにも活用しており、今後は国内外問わず物流効率化の新たな事例を増やしていきたいと考えています。
[特徴]導入期間が短く、お手頃価格でご提供できるパッケージモデル

■「スマーツエボ」管理画面イメージ
✔ Wi-Fi機能により、「出荷進捗」などの作業状況をリアルタイムで表示(マルチブラウザ・マルチデバイス対応)
✔ 作業種別・作業者単位での生産性が可視化され、管理者はスピーディーな業務把握が可能

■海外導入例|中国倉庫における店舗アソート
特徴
✔ 日本国内と同等の機能を海外で利用可能
✔ RFIDソリューションとの連携により、高精度・高効率の物流をご提案
✔ 出荷指示データから貿易書類を自動作成し、事務業務の簡素化をご提案 ※追加機能として開発予定
効果
✔ 海外現地での物流サービス品質の向上
✔ 生産地での店舗アソートの実現と物流コストの低減
※物流園区内での名義変更と現地店舗アソート作業
※日本到着後の店舗直送 (リードタイム短縮・コスト圧縮)
中国倉庫における店舗アソートの仕組み・イメージ図(エムジェイファンクション提供)
[導入事例]大手コーヒーメーカー|「賞味期限」条件付き商品管理機能
従来はアパレル企業を中心に展開していた「スマーツエボ」ですが、今年に入り、コーヒーブランドで導入を開始したとお聞きしました。非アパレル以外の企業へ導入に至った経緯や、実際の使用感、現場での反応はいかがですか?
梅本氏:
これまでも国内の一部アパレル企業様において導入いただいておりましたが、「スマーツエボ」をフル機能で導入いただいたのは、国内大手コーヒーメーカー様が初めてです。オペレーション、コスト、機能性を総合的に評価いただき、ロイヤル顧客様が利用されるポイントキャンペーンのノベルティ入出荷業務でご活用いただいています。導入から半年が経ち、“スマホでいつでも在庫を確認でき便利”、“リアルタイムでの在庫可視化による業務効率化に繋がっている”というお声をいただけています。
当社のこれまでの課題の一つが、非アパレル分野の商品の取り扱い経験の少なさでした。というのも、食品のように「賞味期限」がある商材ではオペレーションに大きな違いが生じます。今回の提携を通じて、「スマーツエボ」はより高度な条件付き商品の管理機能への知見を深めることができました。今後も、実運用で寄せられるお客様のさまざまなご要望に迅速に対応し、機能面のアップデートを積極的に進めていきます。使えば使うほど現場に最適化され、利便性が高まるシステムへと進化していくことを目指していきたいと思います。
ピンチはチャンス 「コスト増」と「効率化」の両立を目指していく
まるで“物流界のShopify”のようで期待が高まります。さいごに、昨今話題に上がる物流業界の課題も踏まえ、「スマーツエボ」の今後の展望や、導入を検討する企業様へのメッセージをお聞かせください。
山本 誠司氏:
アパレル業界は、30年前には約15兆円あった産業規模が、2024年にはわずか8兆円まで縮小しています。そのため、当社としても新たな分野への挑戦が不可欠です。一方で、物流現場ではAI導入やDX化による生産性向上、さらには海外拠点活用など、多角的な取り組みが進められています。初期投資は必要ですが、中長期的には効率化によるコスト削減効果が期待でき、人材不足の解消にもつながると考えています。物流面で企業が直面する「外部要因によるコスト増」に対し、「スマーツエボ」を通じた内部努力によるコスト削減で応えていきたいと思います。この二つの矛盾をいかに乗り越えるかが、今後の大きなテーマになると考えています。
梅本氏:
新システム「スマーツエボ」は機能を最小限に特化しているため、従来の「スマーツネオ」と比較するとバージョンダウンのように見えるかもしれません。しかし、これまで培ってきた豊富なノウハウをもとに、業界問わず不可欠な機能だけを厳選して搭載しています。具体的には、生産性の可視化や進捗管理など、物流センター運営に欠かせない機能はすべて網羅されています。物流現場の効率化や、管理の最適化に課題を抱える企業様にとって、即戦力となるソリューションです。物流課題の解決に向け、私たちとともに取り組む機会をぜひご検討ください。
\物流に関するお悩みはいつでもお気軽にお問い合わせください!/

■「SMARTS-EVO(スマーツエボ)」公式サイトはこちら
■サービスに関するお問い合わせ contact_evo@mizuiwa.
執筆者
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												 APPARELWEB INNOVATION LAB.|アパレルウェブ・イノベーション・ラボアパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)とは、ファッション・小売関連企業の経営層に向けて“イノベーションのヒント”を届けるため、アパレルウェブが2017年10月にスタートした法人会員制サービス。小売、メーカー、商社、デベロッパー、ベンダー企業など幅広い企業会員が集うコミュニティでは、各種セミナーや交流イベントを定期開催。メールマガジン、Webメディア、会員レポート冊子などを通じて毎週オリジナルのビジネスコンテンツを発信。 
 
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												 小川 祐佳|Yuka OgawaAPPARELWEB INNOVATION LAB. コンテンツディレクター おがわゆか●1990年、北海道出身。横浜市立大学国際総合科学部卒。繊維専門商社、PR・広告企業での法人営業職を経て2020年アパレルウェブ入社。企業経営層に向けビジネスヒントを発信する法人会員制サービス「アパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)」にて、セミナーイベント、オウンドメディア編集、企業取材など、コンテンツ企画運営業務全般を担う。 






