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2025年8月晩夏 酷暑対応とトレンド転換が鍵に【スタイルクリップ|フラッシュレポート】

山中 健|Takeru Yamanaka
株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長
執筆者

 株式会社アパレルウェブが月別にEC売れ筋情報をお届けする「スタイルクリップ」フラッシュレポート。2025年9月のレポートでは、7月28日〜8月31日のEC売上データから、どのようなアイテムが売れ筋となったのかをお伝えします。

 

2025年8月の売れ筋アイテム
左からスキッパーワンピ、可変ロングワンピ、ミドル丈のサイドブリーツスカート

酷暑におけるTシャツ需要に伸び代あり

 対象ブランド(駅ビル&SCグレードのカジュアル&コンテンポラリーブランド)のアイテムキーワードランキングを見てみましょう。「Tシャツ」の構成比の高さが続いています。すでに前年から進んでいた“夏と冬の二季対応”ですが、機能付加アイテムや買い替え需要などにより、「Tシャツ」は伸び代があることがわかります。一方で、前年に躍進した「ラッシュガード」は今年度の売上が半減しており、急速に普及した結果の揺り戻しともいえそうです。

■アイテムキーワード出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

ファッショントレンドを捉えた「ワンピース」や「スカート」に伸び

 「Tシャツ」への売上集中が続く中、「ワンピース」や「スカート」は苦戦しています。これまで、売上を牽引してきた「キャミワンピ」「フレアワンピ」の急減がその要因といえるでしょう。“ベーシックアイテム”が限界値に達したのか、あるいは商品の供給不足が引き起こす減少によるものなのか、今後の動向を注視したいところです。

 一方で、ファッションをリアルトレンドに再解釈した「ワンピース」や「スカート」は堅調に伸びています。「アコーディオンプリーツ」や「ミニプリーツ」に加え、バリエーションが拡大した「プリーツスカート」、ナチュラルな印象の「シャーリングワンピ」、根強い人気の「デニムスカート」。さらに、ロマンチックやフェミニンなコア層に支持される「リボンワンピ」などは、いずれも前年を上回る結果となりました。

■スカート・ワンピース出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

体にまとわりつかないスキッパーワンピ

首元の開きで涼しさと抜け感を演出

 

 酷暑対応とトレンド転換を背景に、「スキッパーワンピ」が急伸しました。首元を涼しく、かつ抜け感を演出できるデザインは、「Tシャツワンピ」に代わる新鮮さを与えてくれます。体型を選ばないゆったりとしたシルエットや、サイドスリットの入った軽快なアイテムが支持を集めています。さらに、一枚で着映えしながらも、サンダルやスニーカーで着回せる汎用性が、夏の旅行やレジャー需要と合致しました。シンプルで実用性の高い服を求める時代性と季節性にマッチしたことが売れ筋の要因といえそうです。

前開きタイプの可変ロングワンピ

「Tシャツ」と「デニム」との組み合わせで、カジュアルにもフェミニンにもアレンジが可能

 

 今夏は、前開きタイプの「ワンピース」が人気を集めました。可変性と着回し力がその要因といえるでしょう。「ロングジレ」のような羽織りモノとしても活用でき、「Tシャツ」や「デニム」とのレイヤードで、幅広いスタイリングが可能です。両サイドのリボンでシルエット調整ができる点も魅力で、カジュアルにも女性らしくもアレンジできる柔軟性が支持を集めました。

ミドル丈のサイドプリーツスカート

シンプルながらも、きちんと見えするデザインで幅広い層に支持

 

 ミドル丈の「プリーツスカート」が人気です。中でも、ミリタリー調でありながら、きれいめとカジュアルを両立できる汎用性の高さが、売れ筋の要因となっています。「ラップスカート」のようなデザインのサイドプリーツもポイントで、縦ライン効果によりスタイルアップが叶います。同時に、素材の軽やかさが動きに表情を与え、通勤から休日まで幅広いシーンにおいて活躍。シンプルながら上品さを備えたデザインは、きちんと見えを重視する顧客に支持されています。

 

執筆者

  • 山中 健|Takeru Yamanaka

    株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長

    大手百貨店、外資系ブランドメーカー、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。アパレル業界を中心に、雑貨などのライフスタイル、百貨店、SCなど、幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にapparel-web.com編集長就任。