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2025年9月 昨年を超える残暑の中で秋モノが動く【スタイルクリップ|フラッシュレポート】

山中 健|Takeru Yamanaka
株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長
執筆者

 株式会社アパレルウェブが月別にEC売れ筋情報をお届けする「スタイルクリップ」フラッシュレポート。2025年10月のレポートでは、9月1日〜9月28日のEC売上データから、どのようなアイテムが売れ筋となったのかをレポートいたします。

 

 
2025年9月の売れ筋アイテム
左からボアベスト、ワークシャツ、チェックのフードシャツ

 

残暑の中、秋モノが始動

 対象ブランド(駅ビル&SCグレード カジュアル&コンテンポラリーブランド)のアイテムキーワードのランキングを見てみましょう。2025年の9月は、昨年に比べ気温が高く、全国的に厳しい残暑が続きました。都市部では気温が35℃前後まで上がる日もあり、中旬までは真夏日が多くみられる月となりました。昨年は9月中旬以降に気温が下がり、秋の気配が早く訪れましたが、今年は秋の訪れが遅く、季節の進みが約1〜2週間ほど遅れた印象です。その結果、今月も「Tシャツ」が1位となり昨年より出現率が伸びています。ただし、今年は「ニット」や「スウェット」「カーディガン」「ジャケット」などの秋モノが動いていたのが特徴です。

■アイテムキーワード出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

快適さの中に秋らしさを感じせるアウターが人気

 アウターではどのようなものが動いたのでしょうか。依然として高温が続いたため、軽装ニーズが強く、「パーカー」や「フーディー」など、カジュアルで快適性を重視したストリート要素の強いアイテムが引き続き好調でした。一方で、「テーラードジャケット」や「ライダースジャケット」など、秋の立ち上がりに向け、トレンドと連動した羽織りアイテムも伸びを見せています。ただし、気温の高さから「モッズコート」や「デニムジャケット」などの重衣料の動きは鈍かった一方で、「ボアジャケット」や「ダウンベスト」のような、素材で季節感を出せるアイテムが早期に注目され始めました。全体として、機能性と季節感を両立した“軽アウター+Tシャツ”のレイヤード提案がトレンドの中心であり、立ち上がりは、“快適さの中に少しの秋らしさ”を取り入れる志向が強まっています。

■アウター出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

「ニット」「ネルシャツ」「ワークシャツ」に伸び

 トップスでは、「ロングT」や「プリントT」など、「Tシャツ」の人気が継続しています。そして今季、特に注目すべきは「ネルシャツ」の浮上です。90年代ファッションやトラッド回帰の流れを背景に、チェック柄や起毛素材が“秋らしさ”を手軽に演出できるアイテムとして人気を集めました。残暑の中でも軽く羽織れて季節感を出せる点や、「Tシャツ」とのレイヤードで幅広く着回せる実用性が支持を集めています。また、SNS発信による“古着ミックス”や“ジェンダーレススタイル”などの広がりも追い風に。さらに「ケーブルニット」や「ワークシャツ」など、素材感と機能性を兼ね備えたトップスも伸長。過渡期らしいトレンドが明確に表れた月となりました。

■トップス出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

軽やかに羽織れる「ボアベスト」

シャツ×ボアベストの組み合わせで、トレンドのナチュラル&クリーンスタイルが完成

 

 袖のないデザインで、暑さの残る時期にも快適に着られるベストが人気です。ボアなどの冬素材を使用したタイプも売れ筋として浮上。「シャツ」や「ブラウス」との相性が良く、きれいめにもカジュアルにも着回せる汎用性の高さが支持を集めました。また、明るめのベージュパンツやブルーシャツなど、淡色トーンに合わせることで、トレンドの“ナチュラル&クリーン”スタイルが完成。軽アウター感覚で取り入れられる点も人気の理由です。

モノトーンの「ワークシャツ」

無駄のないデザインで、洗練された印象に

 

 オールディーズ(1950年代のアメリカンカジュアル)のリバイバルが、メンズのリアルトレンドとして広がっています。その中で、クラシックなムードとワークテイストの相性が高く評価されました。さらに、ユーティリティ志向の高まりとともに、機能的で無駄のないデザインが支持を獲得しています。中でも、ブラックやチャコールグレーといった“モード味のあるカラー”が人気で、カジュアルながらも洗練された印象を与える点が好評のようです。

軽やかな装いの「フードシャツ」

 

チェック柄で秋のムードをさりげなく演出

 

 「フードシャツ」が売れ筋となっています。シャツ素材を使用した軽やかなフードデザインは、残暑の中でも快適に着られ、秋らしさをさりげなく取り入れられる点が人気の理由です。90年代ファッション人気の流れを受け、チェック柄が注目される一方で、スタイリングは多様化。ロングフレアスカートとのナチュラルコーデに加え、ミニボトムやカーゴパンツを合わせたY2Kスタイル、さらにはスラックスでまとめたモードカジュアルにも広く取り入れられています。

 

執筆者

  • 山中 健|Takeru Yamanaka

    株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長

    大手百貨店、外資系ブランドメーカー、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。アパレル業界を中心に、雑貨などのライフスタイル、百貨店、SCなど、幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にapparel-web.com編集長就任。