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2024年晩夏 シルエットに凝った主役級パンツが売れ筋に【スタイルクリップ|フラッシュレポート】

山中 健|Takeru Yamanaka
株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長
執筆者

 株式会社アパレルウェブが月別にEC売れ筋情報をお届けする「スタイルクリップ」フラッシュレポート。2024年9月のレポートでは、8月29日〜9月1日のEC売上データから、どのようなアイテムが売れ筋となったのかをレポートします。 

左から、リメイク風フレアデニムパンツ、ワイドスラックス、立体的ワイドデニム

プルオーバー系の半袖トップスが売上をけん引

 対象ブランド(駅ビル&SCグレード カジュアル&コンテンポラリーブランド)のアイテムキーワードのランキングを見てみましょう。

 晩夏でも、盛夏同様に「Tシャツ」の構成比が高くなっています。「Tシャツ」の中では、「クルーネックT」「ポケットT」が上位で前年より多く伸びており、「ポロシャツ」も売上を伸ばしています。また先月上位にあった「ラッシュガード」は今回15位以内にランキングしていませんが、前年より2桁以上の伸びを見せており、これらを用意できたブランドは、夏物消費需要に対応して売上を伸ばしていることがうかがえます。

■アイテムキーワード出現率ベスト10

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

売れ筋の入れ替わりが起きる中、「デニムパンツ」「スラックス」に伸び

 晩夏・初秋の実売アイテムとして位置付けられてきた「パンツ」は、どのようなアイテムが売れ筋となったのでしょうか。

 ECにおける圧倒的な売れ筋だった「イージーパンツ」は、「クライングパンツ」などへアイテム分化したことにより前年比ダウンとなりました。一方、ロングセラーとなっている「ワイドパンツ」は前年より売上を伸ばしています。さらに、トレンドアイテムから売上ボリュームをとれるアイテムとなった「デニムパンツ」「スラックス」、夏物アイテムである「ショートパンツ」も大きく伸びました。一方、これまでトレンドアイテムだった「カーゴパンツ」は後退気味となり、「クライミングパンツ」や「デニムパンツ」へニーズが流出したようです。

パンツ出現率ランキング

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

リメイク風フレアデニムパンツ

リメイク風フレアデニムパンツ

 

 70年代に流行した、リメイクやツギハギ風のディテールを施した「フレアデニムパンツ」がメンズの高感度カジュアルブランドの売れ筋に登場しています。捻ったような縫い目や、フリンジのような継ぎ目がフロントのクリークス(線)のようにあしらわれたアイテムがそれにあたります。晩夏のシンプルなコーディネートにパンチを加えるアイテムだといえそうです。

ストレスフリーなワイドフレアスラックス

ファッション性とストレスフリーが特長の「ワイドスラックス」

 

 キャリア層では、コーディネートのキーとなるフレアの「スラックス」が売れ筋となっています。ボトムのシルエットをカバーするようなワイドフレア、きちんと感を出すクリークス、清涼感とイージーケアを両立したリネンタッチ素材などで、ファッション性とストレスフリーを特徴としているのがポイントです。

立体的なワイドデニムパンツ

立体的なシルエットが特長の「ワイドデニム」

 

 イージーに着用できながら、こだわりを表現できるボリュームシルエットの「デニムパンツ」がカジュアルブランドで売れ筋となっています。ダメージを与えたり、ウォッシュしたビンテージ感のあるデニムを立体的なシルエットに縫い上げたものなどです。

 大手リテールチェーンでは秋のキャンペーンで大々的に取り上げており、今後マスに移行することで、ミドルマーケットでは後退アイテムに移行してしまうのか、よりこだわり要素を加えて差異化していくのか、今後の動きに注目したいところです。

執筆者

  • 山中 健|Takeru Yamanaka

    株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長

    大手百貨店、外資系ブランドメーカー、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。アパレル業界を中心に、雑貨などのライフスタイル、百貨店、SCなど、幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にapparel-web.com編集長就任。