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2025年春実売 冬と初夏が入り混じった3月 アウターはどのように動いたか【スタイルクリップ|フラッシュレポート】

山中 健|Takeru Yamanaka
株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長
執筆者

 株式会社アパレルウェブが月別にEC売れ筋情報をお届けする「スタイルクリップ」フラッシュレポート。2025年4月のレポートでは、春実売期(3月3日~3月30日)におけるカジュアル&コンテンポラリーブランドのEC売上データからアウターの動向を読み解きます。

 

2025年3月の売れ筋アイテム
左から、デニムセットアップ、スタジャンとショートパンツ、Vネックジレ

 

 2025年の3月は、真冬の寒さと初夏の陽気が入り混じるような天候となりました。前年同月は気温がなかなか上がらず、桜の開花も遅れるほどでしたが、今年は前年と比べると天候に恵まれたと言えるでしょう。

 アイテムキーワードの上位には、「Tシャツ」「パンツ」「シャツ」「スウェット」「ニット」など、初夏に着用できる単品アイテムが並び、売上を伸ばしています。ファッショントレンドとしては、ジェンダーフリー志向がさらに強まり、メンズライクなアイテムをウィメンズに落とし込んだものや、メンズ・ウィメンズ問わず着用できるアイテムが好調です。また、90年代のユースカルチャーを反映したヴィンテージスタイルも根強い人気を誇っています。特に「デニム」は、ヴィンテージ加工のものを中心に、メンズからウィメンズ、ユース層から大人世代、アッパーからマスへと、支持が広がっています。

■アイテムキーワード出現率ベスト15

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

 アウターでは、「テーラードジャケット」が首位となりました。卒業式・入学式や新生活といったオケージョン需要に加え、プレッピースタイルやウィメンズ市場におけるメンズライクなアイテムの人気が重なり、前年を大きく上回る伸びを見せています。

 また、普段着需要で根強い人気の「フーディー」、春アウターとして活躍する「モッズコート」「M-65」「トレンチコート」、さらに初夏から盛夏にかけて羽織り需要が高まる「ジレ」なども好調。加えて、アメカジ由来の「スタジャン」や「カバーオール(シャツ型のジャケット)」も、ウィメンズ市場で人気が広がっています。

■アウター出現率ランキング

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

 

 今月は、スカートカテゴリに伸びが見られました。「ティアードスカート」「タイトスカート」「デニムスカート」など、シルエットの変化を感じさせるアイテムが好調です。特に「デニムスカート」は、メンズから始まったデニムトレンドがウィメンズにも大きく広がっていることを示しており、「デニムワンピース」や「セットアップ」など、全身デニムのルックにも人気が集まっています。

■スカート・ワンピース出現率ランキング

※出現率=売上データでのキーワードの出現数/全体の売上点数

デニムのセットアップでロング&リーンなシルエット

オールデニムコーデにブーツを合わせて旬なスタイルに

 

 ユース層を中心に、加工やピグメント染め(顔料※=ピグメントを使い、生地の表面に色を付ける加工技術)によるビンテージ調のデニムへの支持が続いています。メンズのデニムジャケットはピークを過ぎた印象がありますが、ウィメンズではセットアップでのルックに注目が集まっています。

 センシュアルなコンテンポラリーブランドでは、ワンウォッシュのブラックデニムを使用し、「トラッカージャケット」「ビスチェ」や、スリット入りの「ロングスカート」といったオールデニムルックを提案。さらに、「プラットフォームブーツ」を合わせたロング&リーンなシルエットも、今のムードを象徴するスタイルとなっています。

スタジャンでスクールガール風に

メンズライクなトップスとショートパンツによる脚見せスタイル

 

 ロングトレンド化しているスクールカジュアルや、不可逆的なトレンドとして定着したスポーツスタイルを背景に、「スタジャン」の人気が再浮上しています。注目のビッグブランドがメンズコレクションで打ち出したことや、野球をはじめとするアメリカンスポーツへの関心の高まりが、そのきっかけとなったようです。

 この流れはメンズだけでなく、ウィメンズにも波及。メンズライクな「トップス」や「ショートパンツ」による脚見せスタイルなど、マニッシュ&センシュアルというダブルミーニングの着こなしが注目されています。

夏アウターとして活躍するVネックジレが早くも売れ筋に

デニムとの相性も抜群のVネックジレ
 

 大人の女性から支持を集めているのが「ジレ」です。ビッグトレンドである“ハイカジュアル(高級感のあるカジュアル)”とシンクロし、注目を集めています。Vネックによる“きちんと感”がカジュアルスタイルを格上げし、「デニム」や「イージーパンツ」などとの相性も良いアイテムです。また、共地のジャケットやボトムスと合わせることで、よりモードな表情を演出することも可能です。軽装になる盛夏に向けて、今後の活躍が期待されるアイテムといえるでしょう。

執筆者

  • 山中 健|Takeru Yamanaka

    株式会社アパレルウェブ コンサルティングファーム主席研究員、apparel-web.com編集長

    大手百貨店、外資系ブランドメーカー、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。アパレル業界を中心に、雑貨などのライフスタイル、百貨店、SCなど、幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にapparel-web.com編集長就任。