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「TikTok Shop」日本でスタート! “ディスカバリーEコマース”の強みとは? 夏季セールに向け「価格保証」付きライブ配信を強化

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
執筆者

 2025年6月30日、ショート動画プラットフォーム「TikTok」は、アプリ内で商品の販売から購入がシームレスに完結できるEC機能「TikTok Shop(ティックトックショップ)」の提供を日本で正式に開始しました。

 「TikTok Shop」では、ショート動画やライブ配信を通じて商品と出会い、その場で購入が可能。SNSを通じて商品の「発見」「共有」「即購入」を融合させた新しい購買体験が実現することから、「ディスカバリーEコマース」と位置付けられています。

「TikTok Shop」が実現する「ディスカバリーEコマース」とその主な機能

  • ・ショッピング動画およびショッピングライブ配信
  • 「おすすめ」フィードに表示される動画やライブ配信でタグ付けされた商品を、その場で購入可能。エンタメ視聴と購買行動がシームレスに連携。
  • 企業・ブランドは、動画で商品特徴をデモンストレーションし、ライブ配信ではリアルタイムで視聴者と対話しながら紹介・販売が行える。
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  • ・商品ショーケース機能
  • ブランドのプロフィールページ上に、商品一覧やレビューを掲載。ユーザーはそのまま購入に進めるため、ブランドの世界観を反映した商品コレクションの構成が可能。
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  • ・ショップタブ
  • 新設される「ショップ」タブでは、商品一覧の掲載に加え、ユーザーは検索機能でプロモーション情報なども容易に発見・購入可能。注文管理やおすすめ商品の表示も同タブ内で完結する。
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  • ・アフィリエイトプログラム
  • クリエイターとセラーをつなぐ成果報酬型プログラム。クリエイターは動画やライブ配信で商品を紹介して報酬を得られ、セラー側は最適なプロモーション施策を展開可能。
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  • ・TikTok Shop広告
  • 広告ソリューションにより、セラーは認知拡大と購買促進を図ることが可能。ユーザーはTikTok上で商品の発見から購入までを一貫して体験できる。
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  • ・安全な決済体制
  • 信頼性の高い外部決済プラットフォームと連携し、スピーディーかつ安全な決済環境を構築。

※各機能は段階的に導入される予定。「ショップタブ」はローンチ数カ月後、広告機能は2025年7月中の提供開始を予定(参照

日本企業も続々と参入

 「TikTok Shop」には、幅広いサポート機能の提供により、多様なグローバルブランドやローカルブランドが参入しています。日本国内では、アンカー・ジャパン、ウィゴー(WEGO)、「KATE(ケイト)」(花王グループ)、KINUJO、SHOPLIST、日清食品、ヤーマン、yutori、ユニリーバ・ジャパン、Yogibo(ヨギボー)、ラコステジャパン(AIGLE)、ワイ・ヨットなど、すでに多くの企業が参画。特に、トレンド性・動画との親和性の高さによるファッションやビューティーカテゴリ、消費意欲の高いペット用品や食品といったカテゴリでの積極活用が期待されています。

「TikTok Shop Japan」ページ(公式サイトより)

夏季セールに向け「価格保証制度」導入でライブ配信を強化

 また、「TikTok Shop」にて7月7日から19日まで開催される夏季セール「Deals for You Days(ディールズフォーユーデイズ)」に合わせて、ライブ配信における「価格保証プログラム」の導入が発表されました。

 期間中は、すべてのカテゴリ・ブランドで最大50%オフの特別価格が提供され、さらにライブ配信中に視聴者が他のプラットフォームでより安い価格を見つけた場合、TikTokがその差額を現金で還元する仕組みが導入されます。この取り組みは、Savings.comの調査により「ライブ配信での購入動機として、独占的な割引が重要である」という結果を受け導入された戦略的施策です。

米国市場の急成長とグローバル動向

 日本より一足早い2023年9月に「TikTok Shop」が正式にローンチされた米国では、GMV(流通取引総額)および成長速度の両面で世界最大級の市場に成長。売上は前年同期比で2倍以上、ライブ配信経由での購入も急増しています。TikTokの米国ユーザーは約1.35億人に達しており、過去1年間で、その4分の3以上がライブ配信経由で商品を購入した実績があります。

 GlobalDataと「TikTok Shop」の共同調査によると、TikTokショッパーの83%が同プラットフォームで新商品を発見し、70%が新ブランドを発見したと回答。同調査では、「TikTok Shop」がQVCやHSNなどの競合他社を上回り、消費者にとって最も人気のライブショッピングサイトであることも確認されました。

 TikTokは今年、メキシコ、ブラジル、ヨーロッパに進出するなど、ライブショッピング分野での積極的な拡大を続けています。過去の成功事例として、2023年の米国展開以降、さまざまなブランドデーイベントを開催してきました。2024年には化粧品ブランドの「E.l.f Beauty(エルフ・ビューティー)」が初の「スーパーブランドデー」を主催し、「TikTok Shop」で独占割引を提供しました。その後、「Crocs(クロックス)」「PopMart(ポップマート)」「Makeup For Ever(メイクアップ・フォー・エバー)」などの有名ブランドも同様のイベントを開催しています。こうしたブランド共創型イベントの開催は競合他社も追随しており、QVCグループでは5月上旬に初のスーパーブランドデーを開催。「TikTok Shop」に対抗する形で、ソーシャルショッピング分野への注力に意欲をみせています。

 一方で、「TikTok Shop」は米国における事業継続をめぐって不透明な側面も残しており、政治的リスクも抱えています。しかしながら、ライブショッピング市場でのリーディングカンパニーとして価格競争力を武器にした新たなサービス展開を進めることで、消費者の購買体験向上と市場シェア拡大を同時に狙っています。今回の「価格保証制度」は、従来のECプラットフォームとの差別化を図るうえで注目される戦略的施策の一つといえるでしょう。


参照:
https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/tiktok-shop-launch-japan
https://www.retaildive.com/news/tiktok-live-price-match-summer-deals/751080/
https://www.savings.com/insights/livestream-shopping-statistics