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ファストファッションの代表格H&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)「デジタルツイン」を広告に導入 ファッション業界のAI活用が加速

高嶋 一行|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
執筆者

 世界有数のファッション小売企業であり、ファストファッションの代表格として知られるスウェーデン発のH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ 以下H&M)。同社が展開する最新の広告キャンペーンでは、実在のモデルではなく、生成 AI によって作られた高精細の「デジタルツイン(実在するモデルを再現したバーチャルコピー)」を使用したビジュアルを公開しています。

 

H&Mは、約75の国と地域に5,000以上の店舗を展開している(H&M公式サイトより)

 

 「デジタルツイン」を使用した理由について、同社のクリエイティブ・ディレクターであるJörgen Andersson(ヨルゲン・アンダーソン)氏は、「ブランドのスタイルと人間としてのアイデンティティを保ちつつ、新たな表現の可能性を探っている」とコメント。「デジタルツイン」の活用は、効率化とコスト面で大きなメリットが得られます。例えば、広告やキャンペーンにかかる撮影期間を、従来の8週間から最短4日へと大幅に短縮することが可能に。加えて、コストを最大で90%も削減した他社事例も報告されています。

 このような変化のなか、カメラマンの役割も再定義されており、従来の「撮影者」から、「データのキュレーター」や「AIが生成した画像の監修者」へ移行していると指摘されています。また、ある調査では、消費者の約90%が、「AIが生成した画像は、明確な表示が必要」と回答しており、今後はAI活用における透明性の確保が重要な課題になると見られています。

 

広告キャンペーンに使用された画像
画像右下に「Digital Twin」と明記され、AIによって作成された画像であることが示されている(「H&M」公式サイトより)

 

 H&Mは、こうした背景を踏まえ、「デジタルツイン」を使用する場合はその旨を明記するとともに、実在するモデルには権利の保護および収益の一部を保証する措置を講じています。一方で、肖像権の扱いや多様性の表現、ディープフェイク技術に起因するリスクなど、複数の課題も指摘されており、今後は、消費者がAIによる表現をどこまで受容できるかが鍵と見られています。

 


参照:
https://fashionunited.uk/news/fashion/h-m-turns-to-ai-digital-twins-in-new-campaign-as-fashion-grapples-with-blurred-realities/2025070482637
https://www.cnn.co.jp/style/fashion/35231140.html
https://article.yahoo.co.jp/detail/ff994380a537c74c49fa1aec8a7a3704701af99a