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中国大手EC「JD.com」 英国で食品EC「Joybuy(ジョイバイ)」を立ち上げ 欧州市場への進出を強化

中国のアリババグループ、テンセントグループと並びEC三大御三家として知られるJD.comは、英国・ロンドンにてオンライン食品スーパー「Joybuy(ジョイバイ)」を試験的に立ち上げました。この取り組みは、欧州市場への本格進出を見据えた戦略の一環であり、同社のグローバル展開における重要なステップとなります。
同サイトでは、常温・冷凍食品、ベビー用品、家庭用品、飲料、美容・パーソナルケア、健康用品、ペット用品など、主要ブランドの商品を幅広く取り扱っています。さらに、英国大手スーパーの「Morrisons(モリソンズ)」のプライベートブランド商品も多数ラインアップされています。
英国に試験ローンチした「Joybuy」トップページ
現在のところ、ショッピングはロンドンの一部地域に限定されていますが、今後さらに多くの都市へ展開予定だといいます。また、配送サービスにおいては、ロンドン地域のユーザーに対して、同日または翌日の配達が可能となっており、無料配送や30日間の無料返品サービスも提供。新規ユーザーには最大90%の割引特典を用意するなど、話題性を高めるとともに、迅速かつ信頼性の高いサービスを提供することを目指しています。
「商品 + 物流 + サービス」グローバル統合モデルを強化した背景
実は、「Joybuy」事業は当初、JD.com傘下の越境ECプラットフォームとして2015年に開始されました。同年にインドネシア進出で本格的な海外展開をスタートしましたが、戦略の不明確さや業績不振により、2021年にB2C事業を終了、B2B中心の「JD Global Trade」へと転換した経緯があります。
その後、同社は特に物流レイアウトにおける戦略的転換に注力。グループ傘下のJD Logistics(JDロジスティクス)は、2023年に「グローバルネットワーク計画」をアップグレードさせ、国際専用線の拡大と航空輸送力の増強を図っています。2023年以降は「倉庫・エクスプレス・航空」の三位一体のネットワークを構築を加速化させ、2025年までに海外倉庫の面積を倍増させる計画を発表しています。テクノロジー面では、スマート倉庫や無人配送などのソリューションを提供。2024年上半期時点で、JD Logisticsは世界各地に100近くの倉庫を保有し、世界主要国をカバーするサプライチェーンネットワークを保有するまでに発展しています。
年内の「Joybuy」正式ローンチを目指し人材確保を強化
JD.comは、「Joybuy」を自社運営型オンライン小売ビジネスモデルのテスト段階にあると位置づけており、2025年末までに正式なローンチを予定しています。この試験運用を通じて、欧州市場における消費者ニーズや物流オペレーションの最適化を図り、今後の本格展開に備えています。
また、欧州市場への進出を強化するため、物流インフラの整備に加え、パートナーシップの構築を推進。ロンドンを拠点とする40以上のポジションの採用活動も進められており、カテゴリーごとの「スーパースター」人材の確保を目指しています。これにより、現地での運営体制を強化し、サービス品質の向上を図るとともに、ヨーロッパ市場でのブランド認知度向上を目指しています。
2025年に突入して以降、JD.comでは物流インフラや現地人材採用面でのグローバル統合戦略を強化し、特にヨーロッパ市場での展開を大幅に加速。同社は「Joybuy」の年内の正式ローンチに向けて、グローバルEC市場でのプレゼンスを高めていく方針です。米中貿易戦争による不安定な状況が続く最中、今後もライフスタイルに関わるさまざまな消費分野で、中国大手企業によるヨーロッパ・アジア進出は加速していくとみられます。
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参照:
https://www.retailgazette.co.uk/blog/2025/04/jd-com-joybuy-supermarket/
https://news.futunn.com/hk/post/55337918/jdcom-is-trial-operating-joybuy-in-the-united-kingdom-continuing
https://www.thegrocer.co.uk/news/chinas-biggest-retailer-jdcom-test-launches-uk-grocery-site-joybuy/703421.article
執筆者
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高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA
Showcase Tokyo 代表・在英ライター|AILメディアパートナー
ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。
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