ショート動画プラットフォーム「TikTok(ティックトック)」などが、米国や英国、イタリア、フランスで3,000人以上を対象に行った調査によると、「TikTok」ユーザーの70%が、1,000ポンド(約20万円)以上のラグジュアリーブランドを購入したことがあると回答。これは、ラグジュアリーブランドが若年層に対し、ソーシャルメディアを活用してブランド認知を高める施策を強化していることを示しています。
「TikTok」は、商品発見から意思決定、購入に至るまでの主要チャネルとして、若年層を中心に急速に拡大しています。調査の中で、「TioTok」ユーザーの約3分の2が「ソーシャルメディアを通じてラグジュアリーブランドと接点を持つようになった」と回答。さらに、クリエイターによる動画や、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を通じてブランドを認知し、購入前にはクリエイターによるレビューを参考にしているといいます。コメント欄の存在も重要性を増しており、コメント数は前年比で113%も増加。サイズや真贋の確認、おすすめ商品の相談といった情報交換が活発に行われています。
調査の中で、TikTokユーザーのうち47%は、ラグジュアリーブランドを“自己表現”と捉え、さらに59%は、“自分へのご褒美”として購入していると回答。TikTok UKのラグジュアリー部門責任者であるKristina Karassoulis(クリスティーナ・カラスリス)氏は、「購入を後押しするのは “完璧さ”ではなく、“証拠”である」とコメント。信頼や共感を生むコミュニティ主導のコンテンツこそ、今後のラグジュアリーブランドにとって不可欠であると強調しています。
ラグジュアリーブランド「Loewe(ロエベ)」 もTikTokを活用
スペイン発のラグジュアリーブランド「Loewe(ロエベ)」は、「TikTok」 における革新的な戦略で注目を集め、同社のデジタルエンゲージメントにおいて新たな基準を確立しています。同社が発信するコンテンツは、ブランドの遊び心と戦略性が融合しており、Z世代を中心に幅広い層の共感を獲得。同ブランドの公式アカウントは、約230万人のフォロワーがおり、投稿された動画の多くが100万回以上再生されています。
「Loewe」が投稿するTikTokは、ブランドの世界観をユーモラスに表現している
(「Loewe」公式アカウントより)
同ブランドにおける「TikTok」成功の鍵は、流行を独自の視点で再解釈する能力にあります。たとえば、SNSで話題となった「トマトミーム」をレザー製のトマトアクセサリーとして表現するなど、ポップカルチャーや日常の要素を巧みに取り入れています。このような創造性により、高級感を保ちつつ、親しみやすさも演出。また、「Instagram(インスタグラム)」のような洗練された世界観とは一線を画し、「TikTok」では自然体でユーモラスな投稿がメインです。セレブや人気TikTokerも登場し、日常的な会話やユニークな投稿がブランドの人間味を際立たせています。
同社におけるソーシャルメディアを使ったアプローチは、即時的な売上よりもブランドへの好感や共感の醸成を重視したものといえるでしょう。ラグジュアリーブランドとしての地位を保ちながら、新たな顧客層との感情的なつながりを築いているのです。「Loewe」における「TikTok」の戦略は、ラグジュアリーブランドが今後デジタル領域でどのように展開するべきかを示す好例となっています。