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グローバル大手と提携拡大 繊維リサイクルスタートアップSyre(サイヤ)「NIKE(ナイキ)」の主要サプライヤーへ

米国を代表するスポーツブランド「NIKE(ナイキ)」は、リサイクル素材の活用をより強化するため、スウェーデン発の繊維リサイクルスタートアップ企業Syre(サイヤ)と複数年にわたる長期オフテイク(購入)契約を締結しました。
Syreは、ファストファッションの代表格として知られるスウェーデン発のH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ、以下H&M)グループおよびスウェーデンのグリーン産業投資会社Vargas(ヴァルガス)が共同で設立した、繊維リサイクルのスタートアップ企業です。今回の契約により、同社は「NIKE」が推進する使用済み繊維を原料にして繊維を再製造する 「テキスタイル・トゥ・テキスタイル(T2T)再生ポリエステルプロジェクト」において、主要サプライヤーとなります。

繊維リサイクル企業Syre CEOのDennis Nobelius氏
同社は「NIKE」との長期オフテイク契約により、次の成長フェーズへ踏み出している(Syroコーポレートサイトより)
今回の長期オフテイク契約は、Syreが企業として事業を次のステージへ進めるうえで重要な転機となります。同社CEOのDennis Nobelius(デニス・ノベリウス)氏は、「NIKEとの長期契約で資金調達が容易になり、大規模なリサイクル施設建設を進めることができる」とコメント。同社は今後、ベトナムに繊維リサイクル工場を建設する計画で、2027年の着工を予定しています。そして2032年までに年間300万トン超の生産能力を目指しており、工場稼働後は数年以内に、「NIKE」のアパレル製品に同社の再生ポリエステルが採用される見通しです。
米アパレルブランドの「GAP(ギャップ)」や米総合ディスカウントチェーン「Target(ターゲット)」もSyreとのパートナーシップを発表しています。「H&M」につづき、「NIKE」が加わったことで、「テキスタイル・トゥ・テキスタイル(T2T)」のリサイクル素材が“概念から商業段階”へ移行した象徴的な出来事と評価されています。
参照
https://fashionunited.uk/news/business/nike-signs-future-deals-with-recycling-partners-loop-and-syre/2025111184831
https://www.businessoffashion.com/news/sustainability/nike-double-down-on-recycled-fibres-with-multiyear-offtake-agreements-hm-syre-loop/
https://www.syre.com/news/syre-announces-partnership-with-nike-to-scale-circular-polyester
執筆者
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高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA
Showcase Tokyo 代表・在英ライター|AILメディアパートナー
ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。


