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英 大手小売2社によるデジタル活用の取り組み 「Waitrose(ウェイトローズ)」「Co-op(コープ)」の最新事例

英国を代表する高級スーパーマーケット「Waitrose(ウェイトローズ)」は、カートに入れた商品を自動認識するAI搭載のスマートカートを導入しました。これは、英国の小売店で初の試みとされており、まずは小規模店舗で試験的に運用を行い、実証実験を進めています。
端末に搭載されたカメラとスキャナーにより、カートに入れられた商品を認識する仕組み
(Shopic社公式サイトより)
操作方法はシンプルで、入口付近に設置された充電スタンドに置かれている端末を会員カードで起動し、カートに装着して使用します。顧客が商品に印字されたバーコードをスキャンすると同時に、背面カメラで確認が行われ、購入数や合計金額がリアルタイムに端末に表示される仕組みです。量り売り商品や割引商品、パン類は、別途操作が必要となります。
顧客の店舗内での移動データや棚前での行動データを収集し、
在庫状況や顧客の購買傾向の把握が可能に(Shopic社公式サイトより)
このシステムを提供するのは、イスラエルに拠点を置くShopic(ショピック)社です。同社によると、端末を通じて顧客の店舗内の移動データや商品棚前での行動データが収集できるといいます。さらに、今後は端末画面には関連広告やキャンペーン情報を表示するなど、メディアとしての活用も想定されています。
「Waitrose」では、顧客に決済の選択肢を提供する狙いでスマートカードの導入を進める一方、従来の有人レジも維持する方針といいます。
Co-op(コープ)|電子棚札を刷新 タップのみで会員プログラムへ加入可能に
英国全土に展開する大手スーパーマーケットチェーン「Co-op(コープ)」は、電子棚札(Electronic Shelf Label、ESL)を刷新。買い物中に、電子棚札をタップするだけで会員プログラムへ加入できる機能を導入しました。
スマホを電子棚札にタップすると、会員登録ページに遷移し、
その場でロイヤリティプログラムに加入することが可能(「VusionGroup」公式サイトより)
この機能は、近距離無線通信(Near Field Communication、NFC)技術を活用しています。買い物客がスマートフォンで電子棚札にタップすると、「Co-op」の会員登録ページに遷移。その場でロイヤリティプログラムに加入することができ、食料品の割引を受けられる仕組みです。
「Co-op」では今年初め、仏の小売技術企業であるVusionGroup(ヴィジョングループ)と提携し、紙の棚札から電子棚札へ置き換える取り組みを開始しました。同社では、2026年までに全2,400店舗へ電子棚札の導入を計画しているといいます。現在は700店舗以上で導入され、これにより、買い物体験の向上や商品情報の透明性強化、在庫管理の効率化、紙の廃棄削減を目指しています。
同社のイノベーション部門責任者であるDavid Tyas(デイビッド・タイアス)氏によると、「電子棚札は、商品情報の拡充や紙廃棄の削減に加え、会員登録の簡便化が実現できる。また、会員限定価格やプロモーションの利用促進を通じて、顧客体験を向上させることができる」とコメントしています。