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英百貨店John Lewis(ジョン・ルイス)が発表 新・サーキュラーコレクション ビジネスとサステナビリティの両立なるか【英国小売トレンドレポート】

高嶋 一行|Kazuyuki Takashima
AIL編集部により一部編集
執筆者

 英国を代表する大手百貨店の「John Lewis(ジョンルイス)」は、持続可能なファッションに向けた取り組みに全面的に舵を進めるべく、「Circular Collection(サーキュラーコレクション)」を発表しています。

 公式サイトによると、この取り組みでは「Materiality(素材選択)」「Durability(持続性)」「Recyclability(リサイクル性)」の3つの重要な要素を念頭に製品がデザインされ、生産されます。出来る限りリサイクル素材やサステナブル素材を用いる、耐久性のある製品を生産する、単一素材を使用することで使用後にリサイクルしやすいといった循環を目指す、といった目的がそれぞれ掲げられています。

 まずはコレクション第1弾として、20点の製品をラインアップ。ニットウェア、パジャマ、ベビーウェア、マットレス、羽毛布団、枕などが含まれます。同社は、この取り組みを環境に対する製品見直しの”ほんの始まり”に過ぎないとし、今後、2028年までに数千の製品コレクションへと拡大していく予定だといいます。

 

「John Lewis」の「サーキュラーコレクション」の特設ページ(公式サイトより)

 

 「サーキュラーコレクション」では、同社の掲げる“minimise waste and maximise longevity(無駄を最小限に抑え、寿命を最大限に延ばす)”というテーマのもと、高い耐久性を持ち、リサイクル素材をより多く使用し提案されています。

 例えば、セーターでいうと、着用するうちに出てきてしまう縮みや毛羽立ちに不満を持つ英国人の悩みを解決するため、「Sustainable Fibre Alliance(SFA)」認証のカシミヤを使用しています。高い耐久テスト基準をクリアした素材を用いることで、スタイル性と持続可能性を両立させ、”受け継いでいける”ようなコレクションを目指していくといいます。

 

「サーキュラーコレクション」のカシミヤ商品。製品に使用されているカシミヤは100%SFA認定を受けている。
SFAの活動は、放牧地の環境保護や牧畜民の生活の安定にも寄与している公式サイトより)

 

 また、ナイトウェアに関しても、オーガニックコットン素材を100%使用し、プラスチック製のアジャスターをすべて取り除くなど使用後にリサイクルしやすいようにデザインされています。さらには、見た目も肌触りにもこだわった仕様として提案されています。

パジャマのラインアップ。
製品説明では、“these pyjamas will last through 100s of ZZZs(何百回もの睡眠に耐久性がある)”と耐久性をアピール(公式サイトより)

 

 一方、同社はビジネス面でも順調な業績回復をみせています。同社パートナーシップ会長としての5年間の任期で数々の功績を遂げたSharon White (シャーロンホワイト)氏は、「ビジネスが未来に向けて軌道に乗った」と語り、9月に円満退任を迎えます。

 同グループの2024年3月の決算報告によると、特に「John Lewis」とスーパーマーケットの「Waitrose(ウェイトローズ)」が好調で全体の業績を牽引、1月27日までの1年間で5,600万ポンド(約112億円)の税引き前利益を報告。前年の2億3,400万ポンド(約400億円)の損失から脱却しました。そして、「重要な投資の年に突入した」とし、今後は、2028年までに4億ポンド(約800億円)の利益獲得を目指すといいます。

 “ビジネスとサステナビリティの両立”という超難題に挑む同社の動きに今後も注目していきたいと思います。


参照:
https://www.johnlewis.com/content/circular-collection
https://www.retailgazette.co.uk/blog/2024/06/john-lewis-overhaul/
https://uk.fashionnetwork.com/news/-back-on-track-john-lewis-launches-circular-fashion-collection,1644447.html

執筆者

  • 高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA

    Showcase Tokyo 代表・在英ライター|AILメディアパートナー

    ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。