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ビジネスとクリエイティブの交差点、「PLAYTIME」展の魅力「PLAYTIME & Kid’s Hub New York Summer 2025(プレイタイム・キッズハブ・ニューヨーク2025夏)」取材レポート

RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 世界中の子ども服ブランドのバイヤーが集まるキッズファッション市場に特化した展示会「PLAYTIME(プレイタイム)」。同展は、最新トレンドや新進気鋭ブランドの発掘はもちろん、ビジネスセミナーも展開され毎年多くの来場者を惹きつけています。

 今年の「PLAYTIME & Kid’s Hub New York 2025 Summer(プレイタイム・キッズハブ・ニューヨーク 2025夏)」は、7月27日〜29日に、米・ニューヨーク、マンハッタンにあるメトロポリタン・パビリオンで開催され、280以上のブランドが参画しました。ニューヨーク現地より、最新の取材レポートをお届けします。


PLAYTIME & Kid’s Hub New York 2025 Summer
開催:2025年7月27日〜29日、米国・ニューヨーク
出展ブランド一覧
次回開催:2026年2月8日~10日

「PLAYTIME」とは?

展示会場の様子(筆者撮影)

 

 2007年に仏・パリでスタートした「PLAYTIME(プレイタイム)」は、子ども向けファッション&ライフスタイル分野で最も影響力のある展示会のひとつへと成長しました。このイベントは単なる商談の場ではありません。アートとファッションを融合させたクリエイティブな空間が特徴で、世界中のブランドやバイヤーだけでなく、プレス関係者からも注目を集めています。

 2009年には東京で「PLAYTIME Tokyo(プレイタイム東京)」がスタート。海外ブランドや日本の個性豊かなブランドまで、それらの多くが最新コレクションを発表しました。日本のファッション業界に新しい風を吹き込んだものの、残念ながら2016年に幕を閉じました。終了の背景にはさまざまな要因が考えられますが、主催側は主要拠点であるパリやニューヨークにリソースを集中し、グローバルなプラットフォームとしての価値をさらに高める道を選んだとみられます。

 2010年に「PLAYTIME New York」がスタート。2月・8月の年2回マンハッタンで開催され、新進気鋭のブランドにとって登竜門となると同時に、大手ブランドにとっても信頼の置けるイベントとして定評があります。

2026年のトレンド

  • —新しいボヘミアン美学が取り入れられ、繊細な洗練と素朴なクラフト感が融合。
  • —伝統的な技術が新しい素材や媒体に応用され、パターンやグラフィックは進化した象徴性や反復模様、手書き文字から着想を得ている。
  • —軽やかなレイヤーや流れるようなシルエット、動きや旅心をかき立てられるデザイン。
  • —洗練されたトロピカルリゾートウェアにユーモアを添え、時間や場所に縛られないスタイル。文化の多様性からのインスピレーション。
  • —季節の境界が曖昧になる現代のカジュアルライフから、軽やかなシルエットが到来。
  • —大胆なカラーやテクスチャーを組み合わせながら、装飾は控えめでありながらも印象的。
  • —スパイシーな色彩や鮮やかなパターンで普段着をドラマチックに。

 

トレンド紹介ブース「Element」(筆者撮影)

 

トレンド紹介ブース「Zest」(筆者撮影)

現代の親たちの世代別ショッピング動向

 展示会では小規模セミナーも開催されました。そのひとつに登壇した「World Global Style Network(ワールド・グローバル・スタイル・ネットワーク、通称WGSN)」のキッズ・コンテンツ責任者は、「親世代の世代別購買動向」について、以下のように分かりやすく説明しています。

 まず、Z世代(13〜30歳くらい)について、以下のように言及しています。

「彼らは店頭での“発見”や“購入”を強く求め、店舗を第3の空間として活用している。コミュニティを求める彼らは、エンターテインメントや教育を提供する店舗の増加に敏感だ」

 つまり、ブランドにとって重要なのは、ショッピング体験に多様な要素を組み込むことでこの世代を惹きつけ、ワクワクさせること。デジタルとリアルのシームレスな統合は、若い親世代の心を掴むためには不可欠な要素です。

 一方で、ミレニアル世代(30〜45歳くらい)については、Z世代とは購買行動が異なることも指摘されました。彼らは「とにかく早く済ませたい」「デジタルで手軽に買いたい」というニーズが強く、完璧さよりも“便利さ”や“タイパ(タイムパフォーマンス)”を重視する傾向にあるといいます。こうした世代ニーズに則した体験設計が、今後もリテール戦略においては欠かせない点となるでしょう。

「WGSN」による小規模セミナーの様子(筆者撮影)

 

 さらに、ブランドが意識すべき点として、これからは「商品検索も、情報収集もAIがやってくれる」というように、AIが日常生活にすでに浸透していることが言及されました。「ChatGPT(チャットジーピーティー)」「Copilot(コパイロット)」「Gemini(ジェミニ)」「Perplexity (パープレキシティ)」などの著名な大規模言語モデルは、膨大な情報を瞬時に整理し、私たちに選択肢を提示してくれます。顧客の立場に立ったとき、私たちに残された“TO DO(すべきこと)”は、AIが提示した選択肢から「選び」そして「体験」することなのです。

 キッズファッション市場において、実際に商品を着用するのは“子ども”ですが、購買を決めるのは親などの大人です。子ども服やその関連商品を展開するブランドは、世代別に顧客が求める購買体験をしっかりと理解することが、今後も一層重要になってくるでしょう。

執筆者

  • RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG