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The RealReal(ザ・リアルリアル)が発信する「“古い”が今、“新しい”」 ―「コト」が「モノ」の価値を高める時代へ

RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 4月22日は「EARTH DAY(アース・デー、地球の日)」でした。日本国内でも多くのイベントが実施されましたが、ニューヨークでも4月は環境保護・改善にちなんだ多数のイベント開催があり、ブランドからメッセージが発信されています。

 その中で、ラグジュアリーブランドを中心に委託販売サービスを展開する大手リセール小売の「The RealReal(ザ・リアルリアル、以下TRR)」は、4月22日のアース・デーを目前に「Resale Report : Circularityリセールレポート:サーキュラリティ、以下リセールレポート)」を発表しました。リセールレポート内では、ファッション業界におけるリセールの重要性と環境への影響が可視化されています。

「The RealReal」による「Resale Report : Circularity

 

 レポートでは、以下のようなデータがまとめられています。

  1. ・2011年の創業以来、TRRが循環させてきたアイテム数は4,000万点以上
  2. ・委託販売を利用することで、新品購入を減らせる割合は約33%
  3. ・アメリカ人のワードローブには、12ヶ月以上着用されていない衣類が平均82%存在
  4. ・ファストファッションアイテムの50%が1年以内に廃棄されている
  5. ・TRRの活動により節約された水は約46億8,000万リットル
  6. ・削減された温室効果ガス排出量は約85,857トン

 

 TRRの社長兼CEOであるRati Sahi Levesque(ラティ・サヒ・レベスク)氏はレポートの冒頭で、次のように述べています。

本レポートでは、ファッション業界が環境に与える影響を軽減する上で、リセール(再販)がいかに不可欠であるかを明らかにしています。「古い」アイテムを循環させ、廃棄を防ぐことは、地球規模の変化を生む取り組みであり、パーソナルスタイルの未来でもあります。中古市場は、地球にやさしいだけでなく、私たちのワードローブも豊かにしてくれるのです。

“古い”が今、“新しい”─TRRのキャンペーン

「The RealReal」ニューヨーク・ソーホー店のウィンドウ(筆者撮影)

 

 TRRでは4月のアース月間にかけ、「Old Is The New New(オールド・イズ・ザ・ニュー・ニュー)」というキャンペーンを実施しました。すでにこの世界には十分な量の衣類が存在していることを訴え、「“古い”が今、新しい」というメッセージを発信しています。

 このキャンペーンは、ソーホー店のウィンドウ、バス停などのサイネージ、ソーホーやウィリアムズバーグの街頭広告などを通じて展開され、TRRは「サステナビリティ(持続可能性)」や「ロンジェビティ(寿命)」だけでなく、「タイムレスなスタイル」を提供するリーディングカンパニーであることを強く印象付けています。

“「YVES SAINT LAURENT(イヴ・サンローラン)」のジュエリーの検索数は、最近40%急増した。
2012年に「YEVS」のブランド名は廃止されたにもかかわらず。”
TRRでは、手に入らないものを求めて中古市場に目が向けられていることを訴求(Resale Report : Circularityより引用)

「コト」が「モノ」を再び変革する時代を迎えている

 筆者は今、変わりゆく市場を見る中で皆様に伝えたいことがあります。それは、「コト(体験)」が「モノ(商品)」の意味を再び変革する時代を迎えているということです。

 リセールという体験は、単なる「モノ」の売買だけでなく、次の所有者に新たな付加価値を与え、引き継ぐというプロセスが含まれます。その「コト(体験)」が「モノ(商品)」の価値を再び高めていくのです。

 売る側にとっては、「環境に貢献ができた」「ストアクレジットを得られた」といった体験が付加価値となり、買う側にとっては、「手に入らなかった商品にリセールで出会えた」「気に入っていた服を着古したが、同じものを再びリセールで探し出せた」など、“~できた”という達成感が生まれます。こうした「コト」が「モノ」にエモーショナルな価値を与えるのです。

 これは、D2C全盛期に語られた「モノよりコト」という価値観とは異なり、2025年は、「コト」が「モノ」の価値をさらに高める原動力へと進化しているのです。

ブランドと消費者をつなぐ「再会」の場としてのリセール

「The RealReal」ソーホー店にて筆者撮影

 

 「古いもの」が新しい価値を生む背景には、優れたデザイナーや企画チームがクリエイトした素晴らしい新商品が存在します。リセールビジネスは、そうした商品の価値を継承するものであり、新品市場とカニバリゼーションを起こすものではありません。むしろ、リセールはブランドにとって、顧客と「再会」するための新たな接点となりうるのです。一度手放された商品を通じて再びブランドと出会う体験(=コト)によって、ブランドや商品(=モノ)へのロイヤリティが高まる可能性も秘めています。