Report
“低価格”の米Walmart（ウォルマート）が転換 高級リセール市場に参入 「Labubu（ラブブ）」から「Hermès（エルメス）」まで高額商品が登場
米国最大の小売チェーン「Walmart（ウォルマート）」は、サードパーティーマーケットプレイス「StockX（ストックX）」などとの提携を通じ、希少性の高い商品や高額商品の販売を開始しました。「Walmart」といえば、創業時から“EDLP（Everyday Low prices、毎日低価格）”を謳い、顧客にとっては低価格の代名詞的な存在として支持されてきました。従来の低価格路線から一転、高額商品の商品ラインアップ拡大にはどのような狙いがあるのでしょうか。同社の最新動向をみていきます。
人気キャラクター「ラブブ」のシークレット商品も登場
「Walmart.com」にラインアップされている「Labubu」アイテム（Walmart.comより）
8月11日、スニーカープラットフォーム「StockX（ストックX）」を介して、マーケットプレイス「Walmart.com（ウォルマートドットコム）」では世界的に話題を集める「POP MART（ポップマート）」の人気キャラクター「Labubu（ラブブ）」の人形50体以上をはじめ、さまざまなコレクターズアイテムのを販売が開始されました。中には配送料込みで200ドル（約3万円）を超えるシークレットアイテムも含まれ、コレクター需要を取り込んでいます。
同社と「StockX」は昨年初めて提携をスタート。「NIKE（ナイキ）」のAir Jordan（エアジョーダン）など正規認証済みのスニーカーを「StockX」経由で「Walmart.com」に追加しています。さらに、2025年1月には米国発ラグジュアリーリセールプラットフォーム「Rebag（リバッグ）」とも提携を開始。「Louis Vuitton（ルイ・ヴィトン）」「Hermès（エルメス）」「CHANEL（シャネル）」といったラグジュアリーブランドの中古バッグや、ジュエリー・時計などの高価格な中古商品を数万点追加しました。
「Walmart」では、2024年に「コレクター専門カテゴリ」が新設され、おもちゃ、電子機器、トレーディングカード、スポーツ記念品、季節商品など幅広い分野に対応しています。このカテゴリを率いるのは、元eBay（イーベイ）でトレーディングカード責任者を務めたBob Means（ボブ・ミーンズ）氏です。
特に希少性の高いシークレット商品（「Labubu」Big into Energyシリーズ/シークレット版）は高値で販売されている
※「Walmart.com」販売価格：237ドル（約35,000円）、定価：27.99ドル（約4,100円）
また、商品は「StockX」を介して販売・配送されている
高所得層を引き込む狙い
「Walmart.com」のVP兼カテゴリーリーダーMichael Mosser（マイケル・モッサー）氏は、昨年の米メディアBloomberg（ブルームバーグ）のインタビューの中で、「パートナーシップは数万点の商品に拡大する可能性がある」と語っています。こうした提携は、若年層・高所得者層への新たなリーチを目的としています。「Walmart」で「まさか買えるとは思わなかった」希少価値の高い商品を提供することで、サイト訪問数や広告収入の増加も期待されています。同社は近年、年収10万ドル（約1,500万円）以上の顧客層が急増しており、高所得者層に特化した商品ラインアップの強化に注力しています。新たなパートナーシップと商品ラインアップの拡充により高所得者層を引き付けられれば、結果的に日用品、食料品や消耗品といった同社の既存の主力カテゴリの購買拡大にもつながるとみられます。ある種“マーケットプレイスのマーケットプレイス”としてブランドや商品を軸に再編集するこの取り組みは、今後どのように顧客層を取り込み成長していくのでしょうか。引き続き注目していきたいと思います。
「Hermès」のほか、「Rebag」との提携により「Louis Vuitton」「Gucci」「Chanel」「Prada」「Saint Laurent」など
ラグジュアリーブランドの中古品ラインアップが並ぶWalmart.com
