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「Alo Sanctuary(アロー・サンクチュアリー)」新バージョンでバーチャルコミュニティと実店舗をつなぐ

RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 

 2007年に米国・ロサンゼルスで誕生した「Alo Yoga(アローヨガ)」。創設からすでに20年近く経つこのブランドは、ヨガに特化したウェアにとどまらず、あらゆる運動に適したコレクションを展開し、日常のワードローブとしてもおしゃれに着こなせるブランドとして人気を集めています。

 今回は、ファッションの枠を超え、多様な製品展開とサービスでビジネスを拡大する「Alo Yoga」にフォーカスします。

ブランドの可能性を示したここ数年

画像左:「Alo Yoga」スキンケアラインの「Alo Glow System」 
画像右:「Alo Yoga」のスニーカーライン(2024年10月AIL編集部撮影)

 

 2020年といえば、多くの人にとって“コロナの年”という印象が強いですが、その頃「Alo Yoga」はスキンケアライン「Alo Glow System(アロー・グローシステム)」をローンチ。さらに2022年には、オンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」とコラボレーションし、「Alo Sanctuary(アロー・サンクチュアリー)」を発表しました。「Alo Sanctuary」を通じて、フィジカルな世界にとどまらず、新たな形でブランドとエンゲージできる場を創出。そして2023年には、初のスニーカーも発売。「Alo Yoga」は、人々のライフスタイルや関心の変化を敏感にキャッチしながらも、ブランドのDNAを揺るがすことなく、商品やサービスの提供を続けています。

「Alo Sanctuary」が大々的にリニューアル

「Alo Sanctuary」のジムエリア。
エアロバイクなどがブランドロゴ入りにアップグレードされ、
ユーザーはワークアウトをカスタマイズできる(「Alo Yoga」公式YouTubeチャンネルより)

 

 「Alo Sanctuary」がローンチした2022年2月に、「Alo Yoga」はニューヨークファッションウィーク(NYFW)の公式ウェルネスパートナーに抜擢され、「Roblox」上で展開される「コミュニティ」「ディスカバリー」「クリエイティビティ」を、フィジカルの場でも体験できるアクティベーションを実施しました。

 「Roblox」でのウェルネスコミュニティが誕生してから3年。今年1月、「Alo Sanctuary」のリニューアルが発表されました。今回のリニューアルは、クリエイティブ全般を手がけるエージェント企業のSAWHORSE(ソーホース)が担当。刷新されたメタバースの世界では、「メディテーション」や「ヨガ」に加え、「ランニングチャレンジ」や「コールドプランジ・セラピー」、さらに「フィットネスジム」ではトレッドミルやウェイトを使用し、より高い没入感を得られる体験が追加されています。

 

これまで1億1,700万回以上アクセスされているという「Alo Sanctuary」
(「Alo Yoga」公式YouTubeチャンネルより)

フィジカルとデジタルをつなぐ初のアクティベーション

 今回のリニューアルで「Alo Yoga」は、POAP Studio(ポープスタジオ)と提携し、150の実店舗を通じて、新たな形でフィジカルとデジタルの世界を融合させる試みを行っています。

「Alo Yoga」のストアウィンドウに貼られたNFCテクノロジーを搭載したステッカーと
スマートフォンでの読み込みイメージ(「Alo Yoga」公式YouTubeチャンネルより)

【参加の流れ】

  1. 1.  世界中に展開される「Alo Yoga」の店舗を訪れる。
  2. 2.  ストアウィンドウに設置された、NFCテクノロジーを搭載したステッカーをスマートフォンでタップし、POAP(注)をコレクト。
  3. 3.  「Roblox」内の「Alo Sanctuary」にアクセスし、バーチャルリワードを獲得。

(注)POAP(Proof of Attendance Protocol)とは、端的にいえばイベントなどへの“参加証明”となるもの

筆者体験レポート

「Alo Yoga」ソーホー店(96 Spring St)のエントランスに貼られたNFCステッカー(筆者撮影)

2月:マンハッタン・アッパーイーストサイド店での挑戦

 実際に同イニシアチブがスタートした際、筆者はまずマンハッタンのアッパーイーストサイド店を訪れました。最初はステッカーの設置場所が分からず戸惑い、開店直後で接客に忙しいスタッフに聞いてみることに。しかし、何度トライしてもNFCがうまく読み取れず断念。他店舗で試す時間がなく、ひとまず流れだけを確認して終了しました。

3月:ソーホー店で再チャレンジ

 翌月に別の店舗、ソーホー店で再びチャレンジ。今回は無事にNFCを読み取ることができ、タップすると即座にブラウザが立ち上がり、限定の「Alo G.O.A.T. バーシティジャケット」を入手できる画面が表示されました。しかし、いざコレクトしようと指示通りに「Roblox」にログインするとエラーが発生。別店舗でも試みましたが、同様のエラーが表示され、結局入手できずに終了(ここまで来ると、どうしても手に入れたくなったので、メタバースのコミュニティでコツを聞いてみようと思います)。

限定の「Alo G.O.A.T.バーシティジャケット」(筆者撮影)

「Alo Yoga」の新たな前進

  特に2021年以降は、パンデミックを機に多くのファッションブランドが「Roblox」に参入してきました。「Nike(ナイキ)」「Adidas(アディダス)」「Vans(バンズ)」「Burberry(バーバリー)」「Gucci(グッチ)」「Hugo Boss(ヒューゴボス)」「Coach(コーチ)」「Ralph Lauren(ラルフローレン)」「Tommy Hilfiger(トミーフィルフィガー)」など、名だたるブランドが「Roblox」を通じて、若者を中心にブランドエンゲージメントを高めようとしています。

 筆者はこれまでさまざまなファッションブランドが「Roblox」に参入するたびに試してきましたが、正直なところ、ゲーマーといえるほどの熱量は生まれず、深く入り込むことはありませんでした。しかし、「Alo Sanctuary」だけは例外で、そうした他のブランドと比較しても一線を画しています。その理由は、「Alo Sanctuary」が繰り広げるバーチャルの取り組みに“無理やり感”や“こじつけ”を一切感じることなく、バーチャルの世界であってもブランディングの一貫性が保たれているからだと考えます。

 現時点で筆者は「Alo Sanctuary」限定のバーシティジャケットを獲得できていません。しかし、POAP Studioとの連携によって「Alo Yoga」はバーチャルコミュニティと実店舗を結びつけ、デジタルならではの価値ある特典を提供することに成功したといえるでしょう。新たなエンゲージメントの仕掛けを生み出したという点で、同試みはブランドにとって大きな前進だといえます。


参照:
https://www.roblox.com/ja/games/8523408215/Alo-Sanctuary

執筆者

  • RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG