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「W11(独身の日)」セール商戦2025 「Lazada(ラザダ)」と「Shopee(ショッピー)」はAI・クリエイター連携で販促強化

東南アジアのEC市場が、11月11日の世界最大級の大型セール「W11(ダブルイレブン、独身の日)」を目前に熱を帯びています。例年、この商戦日に向け、1か月程前から各社がさまざまな先行イベントやプロモーションを打ち出すことで注目が集まります。今年もW11セールをけん引する中国発「Lazada(ラザダ)」とシンガポール発「Shopee(ショッピー)」の二大巨頭が、AIとライブコマースを軸に、それぞれ異なるアプローチで顧客体験と販売促進を強化しています。
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クイックサマリー
Lazada(ラザダ)──AIエージェント活用でCXと出品者支援を最適化
「Lazada」によるショッピングAI「Lazzie(ラジー)」 (「Lazada Singapore」公式YouTubeチャンネルより)
東南アジアのEC大手プラットフォーム「Lazada(ラザダ)」は、11月11日の「W11」セールを前に、AI技術を駆使した5つのAIエージェントをプラットフォーム全体に導入しました。対象となるのは、ショッピング、払い戻し、物流、商品出品、広告の5つの分野です。
たとえば、ショッピング分野においては、親会社Alibaba(アリババ)グループが開発したAIショッピングアシスタント「Lazzie(ラジー)」により、230万点以上の商品の自動レコメンドが可能となっています。この「Lazzie」は、Alibabaの大規模言語モデル(LLM)を活用しており、ユーザーがチャットで「おすすめのギフトを探して」や「黒いドレスで人気のものを教えて」と入力すると、会話形式で商品を提案・比較・購入まで誘導します。
また、特に注目されているのが、カスタマーサービスにおけるAIエージェントの活用です。「Lazada」によると、現在、払い戻しリクエストの35%以上がAIによって自動処理され、そのほとんどが数分以内に返金処理を解決しているといいます。また、物流エージェントは配送状況の更新を自律的に提供し、問題発生時は最短20秒で解決する能力を備えています。
これらのAIエージェントは、ユーザーにとって商品を発見しやすくするだけでなく、問題発生時のスムーズな対応をサポートすることで、全体的な顧客体験の向上に寄与します。一方で、「Lazada」ではユーザーだけでなく、販売者にとっても効率的な運営サポートを提供しています。出品を手助けするエージェントでは、東南アジアの複数の言語での商品説明やコンテンツ生成を行うことに加え、SEO・検索エンジン最適化やクロスボーダー販売者の販売品質管理を支援しています。
9/9の“Double-date”セールでの成功を受けAI導入を強化
「W11」以外にも、東南アジアでは、「9.9/10.10/12.12」といった数字が並ぶ日付が年間プロモーション・カレンダーとして定着しています。「Lazada」は、9月に実施した「9.9メガセール」でAIチャットボットが注文を36%増加させた実績から、さらなるAIエージェント導入によるサービス強化を通じて、「W11」セールでの競争優位性を高める狙いがあります。
Shopee(ショッピー)──ライブ配信とクリエイター連携で販促を拡大
https://shopee.sg/
一方の「Shopee(ショッピー)」は、「11.11 Big Sale 2025(11.11ビッグセール2025)」を展開。「日替わり50%OFF」や送料無料施策に加え、「ライブ配信マラソン」や配信者限定クーポン配布を通じて購買体験を強化しています。
さらに、11月1日には「Shopee Affiliate Connect 2025(ショッピー アフィリエイト コネクト 2025)」イベントを開催。「W11」セールの正式なスタートをアナウンスするとともに、クリエイターやライブ配信者を巻き込んだ販促エコシステムの構築を発表しています。
「Shopee」に選出されたインフルエンサーによる「Shopee Affiliates Million Dollar Club」(Shopee参照)
「Shopee」では、「Shopee Live(ショッピー ライブ)」や「Shopee Video(ショッピー ビデオ)」、アフィリエイトプログラムを通じて、100万シンガポールドルを超える注文を獲得したクリエイターやライブストリーマーで構成された「ミリオンドル・クラブ」を創出し、セールを戦略的に盛り上げています。同社はライブコマースを成長エンジンと位置づけ、ライブストリーミングからアフィリエイトマーケティングまで、クリエイターのフォロワー増加やコミッション獲得、特に「W11」で行われる大規模キャンペーンへの参加を促すさまざまな手法やサポートを提供しています。
競争の舞台は「AI × ライブ体験」へ
「Lazada」と「Shopee」両社の動向は、東南アジアにおけるEC競争の主軸が「AIによる自動化」と「ライブ体験による熱狂」であることを示しています。共通点としては、「プレセール」「ライブ配信・インフルエンサー活用」「送料無料」といった複数レイヤーの“販促設計”を設け、11月11日の販売当日のみの割引ではなく、その前後の期間で段階的にセールを盛り上げるような流れが例年、恒例となっている点。AI活用とCX設計力を兼ね備えたプラットフォームが、「W11」セールを境に、さらに東南アジア市場の競争を激化させていくでしょう。




