小売、EC、マーケティング、テック、Web3カテゴリーを中心に、今週注目を浴びた国内外の最旬情報をお届けします。
カテゴリー：越境EC
中国発のグローバル越境ECの代表格である「SHEIN（シーイン）」「Temu（テームー）」は、低価格を武器に、主戦場の欧米だけでなく、アジア地域でもビジネスを拡大させています。日本では、2024年1月末の時点で「Temu」のユーザー数は1,500万人を突破。平均利用者数は、国内ECの大手3社「Amazon（アマゾン）ショッピング」「楽天市場」「Yahoo!（ヤフー）ショッピング」のそれを超えています。国内の主要経済メディアでは、「SHEIN」の利用者数はファッションECモール大手の「ZOZOTOWN（ゾゾタウン）」を大幅に上回る800万人以上と報じられました。
「SHEIN」の公式ECサイト
韓国でもこれらの存在感は急激に増しています。韓国の調査会社Wiseapp Retail Goods（ワイズアプリ・リテール・グッズ）によると、2023年12月末時点で、韓国国内で最も新規ユーザーを獲得したサイトの1位は、アリババグループの「AliExpress（アリ・エクスプレス）」、2位は「Temu」でした。「AliExpress」は371万人の新規ユーザーを獲得し、合計ユーザー数は700万人を突破しています。
一方、「Temu」は354万人の新規ユーザーを獲得し、2024年1月末時点の合計ユーザー数は570万人に上っています。2023年8月に韓国でサービスを開始した当初は約52万人でしたが、そこからわずか半年で10倍ものユーザーを獲得したことになります。
南アフリカに上陸した「Temu」の公式ECサイト
欧米、アジアと主要マーケットを拡大させた「SHEIN」「Temu」は、次なる市場として新興国に狙いを定めています。「Temu」は、2024年2月下旬に南アフリカを拠点にサービスを開始すると発表しました。今後、ナイジェリアなどのアフリカ主要国へ進出する予定です。一方、「TikTok（ティック・トック）」のEC事業である「TikTok Shop（ティック・トック・ショップ）」は、南米市場の開拓を見据えて、2024年上半期中にブラジルを含む南米の主要経済圏でサービスを展開すると発表しました。
今年の「TikTok Shop」のグローバルGMV目標は500億ドル（約7.5兆円）となっており、主戦場の欧米とアジア、そして南米市場の貢献は大いに期待されているはずです。すでにライバル企業の「SHEIN」が南米市場に進出しており、現地のOEM工場やサプライチェーン産業にも直接投資をしています。構築されつつあるエコシステムに対し、後発の「TikTok Shop」がどう対抗していくのかが、最大の焦点となるでしょう。
2023年に韓国で最も新規ユーザーを獲得した「AliExpress（アリ・エクスプレス）」
「SHEIN」の提携企業であるAuthentic Brands Group（オーセンティック・ブランズ・グループ）のインタビューでは、「SHEIN」の2023年度の売上は300億ドル（約4.5兆円）に達しています。一方で、Bloomberg（ブルームバーグ）によると、長らく噂されていた「SHEIN」の米国上場は難航しており、ロンドン、香港またはシンガポールでの上場を検討していると報道されました。
圧倒的な低価格を武器に、急拡大を続ける中国発のグローバル越境ECですが、条件付きでの送料無料や返品無料といった施策もエンドユーザーにとって魅力的なポイントです。しかし、「Temu」や「SHEIN」が飛躍する反面、「Amazonショッピング」などに出品している中小、零細規模のショップや小売企業は苦境に立たされる例もあります。ローカル企業にとってはこれらの越境ECが自国に進出してくることは大きな脅威なのです。
これらの中国発越境ECの直近の半年間における日本と韓国での新規ユーザー獲得数は、それぞれ現地のトップ企業を上回っています。既存小売企業やECプラットフォーマーにとっては、彼らのような新鋭企業と商品価格で対抗するのではなく、差別化を図るためにも、ファンコミュニティの形成、ブランドロイヤリティの向上、そして新規市場の開拓といった観点での施策が求められていくでしょう。
