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快進撃続くWalmartのネットスーパー 市場シェア36%獲得、アマゾンも眼中になし?【米国最新小売トレンド】

湯浅 大輝|Daiki Yuasa
フリーランスジャーナリスト
執筆者

  

 日本の食品小売業も2010年代からこぞって各社が開発しているネットスーパー事業。楽天と西友、アマゾンとライフなど、マーケットプレイス事業者と提携して運営している企業もありますが、自社単独で事業を展開する企業もあります。本稿では、世界最大の小売企業である米「Walmart(ウォルマート)」のアメリカでのネットスーパーの動向に絞って論考を進めてみたいと思います。

ネットスーパー市場で36%のシェアを握る小売の王者

 「Walmart」は2018年から「Walmart Online Grocery(ウォルマートオンライングローサリー)」という自社ネットスーパーを展開しています。食料品や日用品をはじめとする4万アイテムに対応しており、食品のオンライン販売に限れば2023年度第2四半期で36%の市場シェアを握っています(注1)。

 前年同期、つまり2022年度第2四半期と比較して5ポイント伸長しており、過去最高を記録した形です。同じく食品のネットスーパー業を展開する米「Target(ターゲット)」の市場シェアが7%ということを考えても、「Walmart」が市場をほぼ独占していることが分かるでしょう。

 


(注1)Measuring the Online Grocery Market:eGrocery Share in the US調べ
参照:
https://www.brickmeetsclick.com/egrocery-market-share-report
https://www.statista.com/statistics/1109330/walmart-ecommerce-sales-by-division-worldwide/

 

「Walmart」公式サイトより

 

 「Walmart」のネットスーパーサービスには、大きく分けて2つの種類があります。

 1つは、日本のネットスーパーのように、アプリやウェブ上で注文し、配達されるというもの。35ドル以上(約5,000円)の注文が必要(会員以外)で、配送料がかかります。

 もう1つは、アプリで近隣の店舗の品揃えの中から商品を注文し決済。近隣の店舗まで商品をとりに行く、というものです。これは日本で流布されている「ネットスーパー」という響きからは少しイメージしづらいサービスですが、車社会のアメリカならではのサービスと言えるでしょう。日本では家具・家電量販店でしばしば実施されている「BOPIS(Buy Online and Pick up in Store)」に類似したサービスと捉えれば分かりやすいかもしれません。

 前者のサービスがカリフォルニア州やニューヨーク州の都市部で多く顧客を抱えているのと比較して、後者はアメリカの大部分を占める郊外店舗での利用が盛んです。

 では、なぜ「Walmart」のネットスーパーは成功しているのでしょうか。3つのポイントに絞ってみていきます。

①AI×ダイナミックプライシング=価格メリット

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執筆者

  • 湯浅 大輝|Daiki Yuasa

    フリーランスジャーナリスト

    大学卒業後、経済メディアで記者職に就く。その後、小売専門誌で記者/編集者を経験し、フリーランスジャーナリストとして独立。教育や小売、海外スタートアップなどさまざまテーマで執筆する。JBpress、Techblitzなどの媒体で連載中。過去の作品に「フリースクールを考えたら最初に読む本」(主婦の友)「リニア 20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks) 「精肉MDの新常識」(ダイヤモンド・チェーンストア)など。