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「TikTok Shop」がヨーロッパ市場拡大へ ディスカバリーECの高い成長率にフォーカス|AIR VOL.74転載

若年層から圧倒的な支持を集めるSNSサービスのTikTok。今年6月には、日本国内でも「TikTok Shop(ティックトックショップ)」の提供開始が報道され話題となっています。一方で、昨年に続きTikTokは米国での事業継続に対する不透明な立場が続いており、現在は米国以外のアジア・ヨーロッパ市場へ向けた「TikTokShop」の拡大を計画しています。
「TikTok Shop」の最大の特徴は、ショート動画やライブ配信などを通じて商品の購買へと繋げる「ディスカバリーEC」という仕組み。この“コンテンツを楽しみながら商品と出会う“という購買体験は、英国をはじめヨーロッパでも同様に広がりを見せています。今回は、2021年から展開がスタートしている英国と、日本に先駆けて拡大されるヨーロッパ市場における「TikTok Shop」の成長性にフォーカスして解説をお届けします。
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英国からヨーロッパへ市場拡大
TikTokは、ヨーロッパ市場への「TikTok Shop」の拡大を発表。すでに展開されている英国、スペイン、アイルランドに加えて、2025年3月末より新たにドイツ、フランス、イタリアでの展開が正式にスタートし、ヨーロッパでは計6ヶ国、主要なEC市場のトップ5をカバーする形でサービスが提供されています。注目すべきは、TikTokが抱えるユーザー数です。新たに「TikTok Shop」が展開されたドイツ・フランス・イタリアには、合計約7,210万人のTikTokユーザーが存在。「TikTok Shop」のサービスが追加提供されたことで、これらの多数のユーザーに向けて、動画からECへのシームレスなショッピング導線が確保されています。
すでに各国の有名ブランドとの提携も行われており、ドイツではファッションECの「ABOUT YOU(アバウトユー)」や化粧品大手「NIVEA(ニベア)」、フランスではスーパー大手の「Carrefour(カルフール)」などがラインアップ。現地企業や小売店を多数誘致し、購入品が現地ヨーロッパ内から発送される仕組みに舵を切っています。今回のヨーロッパ市場における拡大は、これまで英国を中心にTikTokが約4年間培ってきたノウハウを活かして進めていくと発表されています。
「TikTok Shop」の顧客行動の導線やショッピングコマースとしての仕組みの解説。
クリエイターによるコンテンツやライブ配信がショッピングの起点となる
高い成長率で注目される将来性
「TikTok Shop」の売上は正式に公表されていませんが、英国での取引額は2023年から2024年にかけてほぼ倍増しているといわれています。とはいっても、英国のEC市場全体に占める「TikTok Shop」のシェア率は1%未満と、推定で数億ユーロ規模(日本円で数
百億円規模)にとどまり、市場全体では未だ大きいとはいえません。ただ、その成長率にフォーカスすると、2024年は93%とかなり高い成長率で伸長しており、今後の拡大が期待されています。ちなみに、英国「Amazon(アマゾン)」の2024年の成長率は12.7%であることから、「TikTok Shop」の急成長と期待の高さが際立ちます。
また、TikTokには、ユーザーの滞在時間が長いことや若年層の支持が厚いという特徴もあります。さらに英国では、「18~24歳の年齢層に限ると72%にリーチしている」というデータもあり、今後の伸びしろが大いに期待されるソーシャルプラットフォームだといえるでしょう。
少しずつ受け入れられる「ディスカバリーEC」
「TikTok Shop」が提供する「ディスカバリーEC」は、通常のECとは違い、「商品を発見して購入する」という新しい購買体験を提唱しています。
ライブ配信中の商品プロモーション方法の説明ページ。
ショップから簡単にライブ配信ページへの商品情報の追加が可能
ユーザーはショート動画やライブ配信を通じて自然に商品に出会い、そのままアプリ内で購入することが可能です。この購買体験は、従来のECのように「検索をして商品を見つける買い物」とは別物です。最大の違いは、受動的に商品情報にリーチするということです。また、今まで顧客に届きにくかった新しいブランドや新商品なども、コンテンツをきっかけにヒットにつながるなどのメリットもあります。
これまで、ライブコマースがあまり浸透していなかった英国において、初期はライブ配信からの直接購入は少なかったものの、2023年から2024年にかけては、少しずつ購買率が向上してきました。特に、クリスマス商戦の時期などは、コスメやファッション分野での「その場買い」が増えつつあります。
執筆者
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高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA
Showcase Tokyo代表・在英ライター|AILメディアパートナー
ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。