2022年は、ビューティー業界において消費者のマインドや企業のマーケティング戦略に大きな変化が感じられた1年でした。マスク着用の義務化などが解除されるいま、コスメ・ビューティー関連の消費の回復に期待が寄せられています。
そこで、今年のビューティー業界のトレンド予測、業界の現況について、美容業界の国内外のイノベーション情報を発信する専門メディア「BeautyTech.jp」編集長の矢野 貴久子氏にお話を伺いました。
今回お話を聞いた方
BeautyTech.jp編集長
矢野 貴久子氏|Kikuko Yano
雑誌編集やデジタルメディア運営を経て2017年7月よりアイスタイルにてBeautyTech.jp立ち上げ準備に関わり、2018年2月に編集長に就任。2019年Japan BeautyTech Award 審査委員をつとめる。そのほか、2019年よりEWW女性起業家アクセラレータープログラム メンター、2020年よりディップ株式会社のAIアクセラレータープログラムアドバイザー、2020年トキワビューティアクセラレータープログラム審査員、サンフランシスコ発のFaB(Fashion and Beauty Tech Community)の東京チャプターヘッドをつとめる。大企業への取材からスタートアップ企業との対話を通して、国内外の美容業界のDXや化粧品マーケティング・ブランディング情報の発信につとめている。
公式サイト:https://beautytech.jp/
コロナ禍を経て企業は「顧客体験の創出」にフォーカス
「ビューティー×テクノロジー」の切り口で常に最新情報を発信し続けているBeautyTech.jp
─まずは2022年のビューティー業界を振り返って、企業のマーケティング戦略と消費マインドの変化についてどのように捉えられていますか?
矢野氏:企業のマーケティング戦略に関しては、一昨年ごろから「顧客体験の創出」に注力する企業が増えていると感じます。顧客体験とは、顧客が製品やサービスに接触し関心を持った時点から、購入し、継続して利用していただくまでの企業との接点と、顧客が企業に対して持つ評価を意味しています。
従来のマーケティング活動は「誰に何を売るか」にフォーカスし、そのための販促やプロモーションだけに目がいきがちでした。今はよい商品を作って売ったら終わりではなく、ブランド自体がファンに長く愛される存在にならないと生き残れません。そのため企業側では「ブランドは顧客にとってどのような存在であるべきか」を考える流れが浸透しています。つまり、いわゆる企業のミッションやパーパスといった企業の存在意義とマーケティング活動の一貫性が、消費者にとってもより重要視されるようになったということです。
また、デジタルマーケティングの概念が広く浸透しました。それにより、マーケティングとデジタルマーケティング、マスメディアを掛け合わせた施策など、商品開発やPRの担当部門がよりマーケティングを意識した取り組みを行っています。マーケティング側もトレンドを反映した商品づくりに開発段階から携わるようになるなど、マーケティングの概念や領域が広がったように感じます。