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ThredUP(スレッドアップ)社と提携 サステナビリティとリセールに本腰をいれる 「J.CREW(Jクルー)」

RINA Yoshikoshi
AIR Vol.71転載記事(編集:AIL編集部)
執筆者

 アパレルウェブ・イノベーション・ラボが発行する会員レポート誌『アパレルウェブ・イノベーション・レポート』71号より、今押さえておきたい米国最新リテールのポイントを厳選し、お届けします。

 3つのキーワード「ブランドトランスフォーメーション(BX)」「ヘルス&ウェルネス」「NORDSTROM(ノードストローム)5周年のアップデート」より、今回は米国レガシーファッションブランドのひとつ「J.CREW(J.クルー)」によるブランドトランスフォーメーション(BX)の取り組みを紹介していきます。


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APPARELWEB INNOVATION REPORT Vol.71 <2024 AUTUMN>
NYC REPORT 2024 生き残りをかけた米国リテールの改革と進化

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 「J.CREW(J.クルー)」は、1993年に伊藤忠商事やレナウンとライセンス契約を結び、東京の表参道に実店舗を展開していました。CEOミラード・ドレクスラー氏、社長ジェナ・ライオンズ氏が就任していた過去の輝かしい時代の後、同社は荒波の時代を迎えていたのをご存じでしょうか。困難を乗り越えた2020年11月、同社でキャリアを積んできたリビー・ウェイルド氏をCEOに迎え、2022年にはメンズクリエイティブディレクターにブレンドン・バベンジン氏、レディースクリエイティブディレクターにオリンピア・ガヨット氏が就任。ブランドの中核となる人事が定まったことで、「J.CREW」は新時代を迎えたのでした。

「J.CREW」公式サイト

 

 その後2024年5月、「J.CREW」はニューヨークのソーホーに再出店を果たします。以前バワリーストリートに出店していたカフェ併設型のメンズコンセプトストアは一年程で閉店し、「KITH(キス)」の並びに新店舗をオープンしました。そこで新規顧客を開拓し、長年のファンの心を繋ぎ止めるようなバランスのとれたコレクションを展開することで売上を向上させています。新時代の好調な成果は、返り咲きしたソーホーの店舗の雰囲気からも伝わります。姉妹ブランドである「MADEWELL(メイドウェル)」も、2023年秋にフラットアイアンの店舗を移転。現在はソーホーに新店舗を建設中です。

ニューヨーク・ソーホーに再出店を果たした「J.CREW」。地下フロアではメンズを展開 📍75 Spring St(編集部撮影)

 

 「J.CREW」と「MADEWELL」は、“アメリカのカジュアルウェアブランド”という枠にとどまることなくブランドトランスフォーメーションの改革を行っています。そうした取り組みは、両ブランドの環境に配慮した事業にも反映されています。 

 2019年にJ.CREWグループは、素材、パッケージ、フェアトレード、クライメイトゴール(注1)の基準を定めたサステナビリティ戦略「Re-imagined(リ・イマジン)」を開始。その翌年には、カシミヤヤギの飼育環境改善を目的とした団体「Good Cashmere Standard®(グッドカシミヤスタンダード)」へ米国で初めて参画、また2022年にはリセールプラットフォーム「ThredUP(スレッドアップ)」との提携のもと二次流通事業にも参入。リセールプログラム「J.CREW ALWAYS(J.クルーオールウェイズ)」を発表しています。また同年秋には「regenagri™(レゲナグリ)」(注2)の認証コットンを使用した製品を発表。現在は、リジェネラティブ(再生を促す)農法で生産されたコットンを積極的に使用することで、これからのファッションのあるべき姿を顧客へ伝えています。

(画像左)「ThredUP(スレッドアップ)」と提携したリセールプログラム「J.CREW Always」の店頭イベント時に撮影
(画像右)リジェネラティブコットンを使用した「J.CREW」製品(ともに筆者撮影)

 

 さらに2023年、同グループは新たに9つの農場をアメリカの再生型農業プログラムに追加。その結果、リジェネラティブコットンの使用を約200トンにまで拡大したと同社の最新のESGレポートで報告しています。


(注1)気候変動への具体的な対策と目標
(注2)A regenerative agriculture initiative(https://regenagri.org/)、土地の健康とそこに住む人々の富を確保することを目的とした再生型農業に取り組む団体

 

 一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みとして、「MADEWELL」では2021年4月に、「J.CREW」では2023年6月に専用アプリをリリース。オンライン配送では店舗受け取りのみならず、宅配業者のUPS(ユーピーエス)の営業支店での受け取りを可能にしています。顧客はこの選択により二酸化炭素の排出量軽減に貢献することができます。

 

「J.Crew」が「Apple Vision Pro」専用にリリースした
ショッピングアプリ「J.CREW Virtual Closet」(公式App Storeより)

 

 また、2023年に「J.CREW」では2つのバーチャルストア「J.CREW Beach House(J.クルービーチハウス)」(6月)、「J.CREWHoliday Experience(J.クルーホリデーエクスペリエンス)」( 11月)を展開。今年2月には「Apple Vision Pro(アップルビジョンプロ)」専用バーチャルショッピング体験アプリ「J.CREW Virtual Closet(J.クルーバーチャルクローゼット)」もリリースし、積極的なオムニチャネルビジネスを展開しています。

 

執筆者

  • RINA Yoshikoshi

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG