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ユーザー数が前年同期比60%増!中国EC最大手アリババ タイ市場で急成長 徹底したローカライゼーションが奏功

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
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 中国EC最大手のアリババグループが運営する越境ECモール「淘宝(タオバオ)」は、タイ市場における新規ユーザー数を急速に増加させています。これは、同社が国際市場での存在感の拡大と、新たな成長機会の創出を図る中で得られた成果とみられています。

 

タイ版「淘宝(タオバオ)」では中国語と英語のほか、タイ語でサイト閲覧が可能
また、現地通貨(バーツ)による決済も対応している(「淘宝」公式サイトより)

 

 同社の海外EC事業統括部門であるAlibaba International Digital Commerce Group(アリババインターナショナルデジタルコマースグループ、以下AIDC)による最新データによると、タイ版「淘宝」リリース後、わずか1ヶ月程で、タイ国内における新規ユーザー数は前年同期比で60%も増加したといいます。これまでの「淘宝」は、対応言語が中国語と英語の2言語のみでしたが、タイ版のリリースにより、新たにタイ語が加わることとなります。AIDCによると、タイ版「淘宝」では、ユーザーはタイ語でアプリを閲覧できるほか、現地通貨での決済が可能といいます。

 アリババグループは、昨年からグローバル展開を加速。「淘宝」のタイ市場への進出は、同社がアジア全域での存在感を拡大したい狙いがあります。その背景にあるのが、中国国内のEC市場の成長が鈍化していることや、「Temu(テームー)」を運営するPinduoduo(拼多多、PDD)グループ、中国版TikTokで知られる「抖音(ドウイン)」を運営するByteDance(バイトダンス)などのライバル企業との競争激化があります。

 こうした状況を踏まえ、同社は東南アジア市場を“重要な成長エンジン”と位置づけ、ローカライゼーションを積極的に推進。タイ版「淘宝」のリリースは、言語の壁を取り除き、現地ユーザーのアクセシビリティを大幅に向上させることを狙いとしています。

拡大するタイEC市場 現地通貨での決済機能がカギ

 タイ国内におけるEC市場は急速に拡大を遂げています。東南アジア最大の商品検索及び価格比較サイトを運営するPriceza(プライスザ)のデータによると、2024年におけるタイ国内のEC市場規模は約1兆1,000億バーツ(約4兆円)に達し、前年比14%増を記録。この著しい拡大は、「淘宝」のみならず、他のECプラットフォームにとっても、タイが魅力的な参入市場であることを意味しています。

 

タイでは、スマートフォンの普及やデジタル決済システムの発達を背景に、オンラインショッピングが身近に
(「淘宝」公式サイトより)

 

 タイにおけるEC市場の拡大要因として、スマートフォンの普及やインターネットアクセスの改善、デジタル決済システムの発達、そして新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインショッピングが定着したことが挙げられます。また、「淘宝」のタイ進出で特に注目すべき点は、アリババが提供するAI翻訳技術の活用による、徹底的なローカライゼーションです。言語対応だけでなく、現地通貨による決済機能を組み合わせることで、タイのユーザーにとって、より使いやすいショッピング体験を提供しているのです。

 この取り組みは、グローバル展開を目指す企業にとって重要なモデルケースとなる可能性があります。言語対応にとどまらず、決済システムや配送網、カスタマーサービスなどのローカライズを進めることで、より深い現地市場への浸透が可能であることを示しています。アリババグループのタイ進出の成功は、同社のグローバル展開の有効性を裏付けるものであり、今後はタイ以外の東南アジア市場への展開加速も期待されています。


参照:
https://www.scmp.com/tech/big-tech/article/3319264/alibabas-taobao-sees-60-user-surge-thailand-after-launch-local-language-version