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オフザランウェイ! 注目の復活を遂げた二つのブランド「BARNEYS NEW YORK(バーニーズニューヨーク)」「J.Crew(Jクルー)」【Coffee Talk from NYC Vol.23】

RINA Yoshikoshi
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

 

 ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。アメリカのコーヒーブレイク中に行われるカジュアルミーティング、”Coffee Talk”にちなんで、気軽にインプットいただけるレポートを定期配信していきます。

 9月に入りニューヨークは、最低気温が15度前後となり、秋の気配を感じるようになってきました。爽やかな秋晴れの天気に恵まれる中、キックオフした「ニューヨークファッションウィーク」では、華やかなランウェイの他に、二つの“復活”が注目されました。いずれも、私たち日本人にも馴染み深い、愛されているブランドです。

 Vol.23では、「BARNEYS NEW YORK(バーニーズニューヨーク)」と「J.Crew(Jクルー)」、二つのブランドの直近の動きを現地よりレポートしていきます。

4年ぶり:「BARNEYS NEW YORK x HOURGLASS」復活ポップアップ(9月5日~10月11日)

2024年9月5日~10月11日の限定で開催の「BARNEYS NEW YORK x HOURGLASS」ポップアップショップ
(場所:14 Prince Street)

 

 筆者がランウェイ以外のイベントで楽しみにしていたのが、「BARNEYS NEW YORK(バーニーズニューヨーク)」のポップアップショップでした。9月5日から10月11日までの約1ヶ月限定で実施されているコンセプトショップは、ラグジュアリービューティーブランドの「HOURGLASS(アワーグラス)」の創業20周年のアニバーサリーショップを兼ねています。20年前、当時初めて「HOURGLASS」の製品を販売したのが「BARNEYS NEW YORK」でした。

 そうした経緯に対し、「HOURGLASS」の創設者が敬意を表したいと考えたことから、この素晴らしいコラボレーションの話はスタートしたそうです。そして、「BARNEYS NEW YORK 」でクリエイティブディレクターとして活躍したSimon Doonan(サイモン・ドゥーナン)氏とファッション・ディレクターを務めたJulie Gilhart(ジュリー・ギルハート)氏の協力のもと実現したのです。

 

 

 「BARNEYS NEW YORK」は多くの人々に惜しまれながら2020年2月に閉店。現在はオーナーが代わり、米百貨店の「Saks Fifth Avenue(サックス・フィフス・アベニュー)」内に売り場が設けられているものの、昔のような新進気鋭デザイナーの感性やラグジュアリー感、ディスカバリーの楽しさなどは、残念ながらあまり感じることはできないように思います。

 ポップアップ初日、筆者が訪れた際には、「(店舗スペースが)小さくても、これが『BARNEYS NEW YORK』だよね!」とストアスタッフと興奮を分かち合いました。期間中は、店舗でのイベントはもちろん、取り扱いブランドもローテーションするそうです。そのセレクトの素晴らしさに、時を忘れてしまいそうな空間です。

 店内の中央には「HOURGLASS」の製品を中心とした「HOURGLASS BEAUTY BAR」が設置され、イベント限定品も販売されています。ブランドの人気商品でもあるハイライトや、オレンジブロッサム・サンダルウッド(白檀)・ハニーサックル(スイカズラ)が調合された1,500本限定のフレグランス「XX」は、フレッシュで軽やかな香りが特徴だそうです。

 

ポップアップショップ店内に設置された「HOURGLASS BEAUTY BAR」(筆者撮影)

 

 「BARNEYS NEW YORK」が路面店で復活! というのは、現状では難しいかもしれません。ですが今回のように、特定のブランドとのコラボレーションを絡めながら、期間限定ショップとして復活するというのが恒例になることを願うばかりです。

7年ぶり:ファンが熱望したブランドカタログのカムバックで祝う「J.Crew」40周年

 昨年、ブランド創設40周年を迎えた「J.Crew(ジェイクルー)」。周年祝いとして、これまで発刊したカタログを集めたコーヒーテーブルブック『Forty Years of American Style(フォーティイヤーズ・オブ・アメリカンスタイル)』が発売されました。また、今年5月にはマンハッタンのソーホーにレディースコレクションをメインとしたストアがカムバック。約6年ぶりの再出店です。さらにその2か月後の7月、同エリアに新たなメンズストアも出店しました。

「J.Crew」ソーホー店 75 Spring St(筆者撮影)

 

 2017年に終了したカタログ復活の背景には、顧客からの熱望があったようです。同社のCEOにLibby Wadle(リビー・ウェイドル)氏が就任した後も、ビジネス系のソーシャルメディアを通じて、カタログ復活への熱いメッセージが顧客から寄せられていたそうです。そうして復活を遂げた2024年秋のカタログは、4名のフォトグラファー、Laura Jane Coulson(ローラ・ジェーン・コールソン)氏、Dougal Macarthur(ダガル・マッカーサー)氏、Max Fargo(マックス・ファーゴ)氏、そしてTheo Wenner(テオ・ウェナー)氏によってフィルムを使って撮影されたとのこと。

 「J.Crew」では、新たなCEOとディレクター陣が就任したことで、ブランドのヘリテージを守りながらもアップデートを図り、着実に成功への道を歩み出していると感じます。2024年10月にAPPARELWEB INNOVATION LAB.(アパレルウェブ・イノベーション・ラボ)が開催するニューヨーク視察研修のテーマのひとつでもある、「顧客とブランドにとって何が重要なのかを見つめ直し、再定義する」ということをまさに体現しているブランドであります。現に、ウォールストリートジャーナル紙の記事の中で、今年の売上高が30億ドル(約4,400億円)に近づいているとCEOが語っています。


参考:ウォールストリートジャーナル「J.Crew Fans, Get Ready: The Catalog Is Back

 

「J.Crew」の40周年記念ブック「Forty Years of American Style」(筆者撮影)

 

 復活した2024年秋号のカタログでは、秋物のコレクションが紹介される中、複数ページにわたって女優のDemi Moore(デミ・ムーア)氏のインタビューが掲載され、ミニマガジン風になっています。今回は、ムーアが表紙となったものも含め、4種類のカタログが制作されました。

 実際にカタログのページをめくると、「J.Crew」らしい平置きのショットや、絶妙に積み重ねたセーターのショットが目に飛び込み、懐かしさを感じました。以前と異なる部分としては、QRコードが添えられたページがあり、スキャンをすると「J.Crew」の専用アプリが立ち上がり、買い物ができるということです。この仕組みのおかげで、オフラインとオンラインが繋がります。

 立ち止まっていた期間がありながらも、その間にしっかりと顧客がブランドに求めるものや、ブランドとしてどうありたいのかを見つめ直し、再スタートした「J.Crew」。来週に開催されるニューヨーク視察研修では、最新店舗に立ち寄る予定ですが、研修に参加されるAILメンバーの皆様の目に「J.Crew」がどのように映るのか、非常に楽しみです。

執筆者

  • RINA Yoshikoshi

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG