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「Shopee(ショッピー)」親会社Sea Ltd(シー・リミテッド)、ASEAN最大の時価総額企業へ 地銀大手DBSを抜き返り咲く

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
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 ECプラットフォーム「Shopee(ショッピー)」の親会社であるSea Ltd(シー・リミテッド)が、わずか数カ月で時価総額を300%以上も急回復させ、長らくトップに君臨していた銀行大手DBSグループ・ホールディングスを抜き、ASEAN市場で最も価値のある上場企業としての地位を取り戻しました。Sea Ltdの株価はニューヨーク市場で1.1%上昇し、時価総額は約1,110億ドル(約16兆6,500億円)に到達。一方でDBSの評価額は1,103億ドル(約16兆5,450億円)に下落となり、正式にトップの座を譲る結果となりました。この変動により、DBSの首位は短命に終わりました。


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なぜSeaは急成長したのか?――Shopeeの圧倒的な成長

 Sea Ltdの急激な時価総額上昇の背景には、傘下のEC事業である「Shopee」の圧倒的な成長があります。ASEAN地域でオンライン消費が増加する中、「Shopee」は競合のECプラットフォーム各社――ByteDance(バイトダンス)傘下のディスカバリーコマース「TikTok Shop」、格安EC「Temu(テームー)」、Alibaba(アリババ)グループ傘下の「Lazada(ラザダ)」を抑え、市場でのリーダーシップを確固たるものにしました。2024年に入ってからの株価は300%以上も上昇し、投資家は同社の勢いに確信を強めています。

 この成功は、長年にわたるオンライン事業と配送網への投資が実を結んだ結果です。特に、最高経営責任者であるForrest Li(フォレスト・リー)氏が主導した厳格なコスト削減策と、物流部門である「SPX Express(SPXエクスプレス)」の成長が、収益性を大きく改善。「SPX Express」は、主婦や学生、退職者といったパートタイムの配達員をうまく活用することで、コストを抑えながら迅速で安定した配送を実現し、消費者の信頼を獲得しています。

Sea Ltdの事業年表。
Eスポーツ、ゲーム事業、「Shopee」、フィンテック事業を中心に展開(参照:

Tモールやタオバオのマーチャントを狙う「Shopee」の次なる戦略

■費用面での支援策

 「Shopee」は、この勢いをさらに加速させるため、アリババグループが運営する中国大手ECサイト「Tモール(天猫)」や「タオバオ(淘宝)」のマーチャント(販売者)向けの優遇措置を発表しました。マーチャントを東南アジア市場に呼び込むべく、費用面におけるさまざまな減免特典を積極的に打ち出しています。

 特に、アパレル関連の販売者は優遇されており、特定のカテゴリ(レディースファッション、スポーツ、アクセサリー、ホームウェア)の優良ブランド上位200社は、最初の3か月間の保証金が免除されます。また、「Shopee」への新規出店者に対しては、最初の3か月間、月間最大500件の注文まで手数料が免除されるキャンペーンも実施(タイサイトで新規出店する場合は商品掲載数が10件以上という条件を満たす必要あり)。2025年8月1日からは、この手数料免除ポリシーは新たにベトナムとブラジルのサイトにも適用が拡大され、初期投資のリスクを大幅に軽減しています。

■トラフィックと運営面での支援策

 さらに「Shopee」は、出店者が東南アジア市場に迅速に適応できるよう、トラフィックと運営の両面で手厚いサポートを提供しています。

  • 1.広告費の贈与

  • └服飾や靴・バッグ、アクセサリーなどのブランド販売者には、最大500ドル(約7万5,000円)の広告費を提供。シンガポールサイトでは初月に追加で100ドル(約1万5,000円)の無料広告費が支給された。

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  • 2.データ活用

  • └バックエンドデータの連携・活用により、「Tモール」の人気商品をASEAN市場の消費者の好みに自動でマッチング。ヒット商品の的中率を80%向上させた例も。

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  • 3. 運用効率の向上

  • └商品詳細ページのワンクリック翻訳や、30分で商品登録が完了するシステムなど、販売者の手間を省きローカライズするための支援ツールも充実。

 これらの施策は、国内での成功体験を活かしてASEAN市場へ進出したいと考えている日本のEC事業者にとっても、大いに参考になるのではないでしょうか。

Shopee Singapore」公式サイト

単なるEC企業ではないSeaの戦略

 Sea Ltdは単なるEC企業としてではなく、長期的な収益性を追求するため、事業の多角化を進めています。デジタル金融サービスなどの新規事業への取り組みは、投資家に対して、将来的な成長への期待を継続的にアピールするものです。一方、首位を明け渡したDBSも、業績は堅調です。2023年以降、株価は65%も上昇し過去最高水準に達しました。貸出や資産管理による安定した収益を背景に、配当や自社株買いを通じて株主への還元も積極的に行っています。

 このSea LtdとDBSとの時価総額逆転劇は、ASEAN経済のダイナミックな変化を象徴しています。テクノロジー企業が伝統的な金融機関を凌駕するこのトレンドは、今後も続くのでしょうか。注視していきます。


参照:https://sg.news.yahoo.com/sea-overtakes-dbs-as-southeast-asias-most-valuable-company-033314463.html