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サステナブル梱包資材で日本のパッケージビジネスのDX化に挑む「shizai」

AIL編集部
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 コロナ禍で、サービスをリリースしてわずか1年程度で、300社の導入実績を上げ話題を呼んでいるオリジナルパッケージ作成プラットフォーム「shizai(シザイ)」。共同創業者である代表取締役 鈴木暢之氏と取締役 油谷大希氏は、二人ともパッケージビジネス業界の未経験者ですが、だからこそ既存業界の「常識」に囚われず、独自の観点からテクノロジーを活用し、低コストかつ豊富な商品を提供しています。

 今回は、「shizai」創業のきっかけやサービスの魅力について、同社の取締役 油谷大希氏に詳細を伺いました。

-まず、創業のきっかけについてお聞かせください。

 私も、代表の鈴木もパッケージ市場経験者ではありませんでしたが、アフターコロナの状況において、マクロ経済の発展方向を見たときに、EC市場のさらなる可能性を感じました。いろいろなEC業界の事業者様にヒアリングをしていく中で、共通の課題点として梱包資材が上がりました。

 梱包資材のニーズは非常に高いものの、なかなか優先度が上がりません。ビジネスモデルやサービス面でもまだ改善できる面があると思ったので、そうした課題点を解決するところをビジネスチャンスと捉え、2020年10月に「shizai」を創業しました。

-具体的に現在の梱包資材業界ではどういった課題点があるのでしょうか?

  梱包資材関連企業へ訪問していく中で、日本の梱包資材の製造技術は確かに高いと感じましたが、現在のD2Cのビジネスモデルにおいては、(製造技術が)生かしきれてない部分もありました。ユーザー側からすると、「箱開け」も購入体験を左右する重要な部分であると思います。現状では、梱包資材企業からブランド、そしてエンドユーザーに届くまで4~5社も挟むので、ブランド側は既製の梱包資材をなんとなく自社ブランドに合わせて使うというのが一般的です。結果的に、ブランド側がユーザーに届けたい世界感に制限が出てしまい、「箱開け」を含めた購買体験が不完全になる恐れがあります。

 また、SDGsは世界的な基準となり、環境に配慮した梱包資材が求められています。それと同時に、ユーザーがSNSでシェアしたくなるような商品パッケージが求められるケースが増えていますが、現在の梱包資材業界のビジネスモデルでは、こうしたマーケットのニーズを反映しにくい現状があると思いました。

-「shizai」のサービスの魅力、そしてブランド側にとって導入するメリットとは何でしょうか?

 まずは、低コストで発注できるところです。幅広い商材に応じて最適化したコストを提供できるようにしています。平均して、市販の既製品パッケージコストより約20%安く提供できています。OEM業者や中間事業者などの卸事業者を省き、直に地域の段ボール工場とやり取りすることにより、パッケージの品質を維持しながらもコストの削減を実現することに成功しました。

 また、現在提携している製造工場は全国に約500か所あり、そこの専門家チームの知見によって、ブランドや事業者のニーズ、商品の大きさなどに合わせて多角的なサポートをしています。例えば、オリジナルパッケージに関するデザインの相談や、予算に見合う材料の提案、また、配送費や組み立てコストなど物流費用を含めた最適化の相談、物流倉庫の紹介まで、あらゆる角度から総合的にサポートすることが可能です。

 さらに、サステナビリティへの取り組みも行っています。当社では、コストをなるべく抑えながら地球環境に配慮したパッケージを作成できます。現在は、二酸化炭素の排出量削減を目的に、植物由来成分を積極的に使用したボタニカルインキでのパッケージ印刷を提供しています。

 昨今、サステナビリティの重要性は一般消費者の中にも浸透しており、ブランドや企業側のサステナビリティに対する取り組み姿勢は、消費者にとって、企業への信頼に対する重要な判断材料になっています。そこで、サステナビリティへの取り組みをしているブランドや企業に対し、ボタニカルインキ印刷のほかにも、商品の大きさに対し、無駄をなくし最適な形状やサイズのパッケージをご提案するなどの工夫をしています。

ちなみに当社でも、取引ごとに木を植える活動の支援を行っており、お客様と共にサステナビリティへの取り組みを行っていきたいと考えています。

-たしかに大手通販サイトで買い物をした際、届いた商品の何倍も大きい段ボールが使われているケースがよくあります。サステナビリティの観点から、こうした問題の解消はとても重要ですね。「箱明け体験」について掘り下げたいのですが、「shizai」を利用しているブランド側では、どういったパッケージへの工夫がありますか?

 またサステナビリティ関連の話になってしまうのですが、近年、宅配業界では不在による再配達問題が注目されたことで、郵便ポストに入るような細長いパッケージのニーズが増えていて、弊社でもこの種類のパッケージ商品の取り扱いを増やすようになりました。一例ですが、コスメのサブスクリプション業態のブランドに利用していただいており、ユーザー側にとっても、不在による再配達の手間が省ける利点になっていると思います。

 また、オリジナルパッケージでは、ブランドの世界感に合わせて、全面プリントしたパッケージや、メッセージのプリントを入れたパッケージも最近の人気ですね。そのほか、メッセージカードのご提案など、ブランドの事業規模に合わせて、柔軟に提案できるのが当社の強みだと思っています。

-最後に今後の事業展開について教えてください。

 知名度を拡大するため、本格的なマーケティング活動を仕掛けていく予定です。また、サービスの向上のため、提携するパッケージ資材の工場を引き続き増やしていき、商品の種類の拡張をすることで、ブランドや事業者だけではなく、例えばサステナブルな新しい素材を開発するなど、エンドユーザーのニーズにも応えられるよう、挑戦していきたいと考えています。

 

「shizai」の公式サイト:https://shiza1.com/