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【独自取材】“NFT”はファッションビジネスをどう変えるのか(前編)

AIL編集部
AIRVol.55転載記事
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近年、異様な盛り上がりを見せるNFT。ファッションビジネスのシーンにおいてもNFTに参入するブランドや企業が増えてきました。では、そもそもNFTとは何か? NFTがファッションビジネスに落とし込むうえでの重要ポイントとは? 全2回にわたり探っていきたいと思います。

Q. そもそもNFTとは何なのか?

A. デジタルデータの所有権をパブリックに向けて証明できる唯一の技術

 NFT(非代替性トークン)はどういったものなのでしょうか。端的に言えば、「デジタルデータの所有権をパブリックに向けて証明できる唯一の技術」となります。「トークン」は音声ファイル、Jpeg画像、Gifファイル、映像ファイルといったデジタルデータのことを指します。たとえば、現実世界の場合、絵画があるとして、画家が描いた絵画Aと複製された絵画Bでは絵画Aの方が圧倒的に価値があります。なぜなら、絵画Aが絵画Bのもとになるオリジナル絵画であり「希少性」が高いためです。これをデジタルに置き換えるとデジタル上のデータは簡単にコピーされ、海賊版のデータ(動画、音声ファイルなど)が市場に出回ることで、データの価値が著しく損なわれます。つまり、“デジタルデータに価値を与えることは非常に難しい”ということです。

 この状況を一変させたのがブロックチェーン技術を活用したNFTです。ブロックチェーン上ではデータの改ざん、複製が不可能なため、オリジナルのデータに希少価値を持たせることができ、資産とすることが可能となるのです。

海外のファッションブランド×NFT”の主な事例

Boohoo


英国のファストファッションブランド「BooHoo(ブーフー)」は、NFTコレクションのプレゼントキャンペーンを実施。専用ページから誰でも応募が可能で、当選者には「OpenSea(オープンシー)」経由でウォレットデータが送付される予定。

 

 

JW Anderson


「JW Anderson(JWアンダーソン)」はパッチワークカーディガンを3Dで再現した画像をNFTとし、リリースオークション形式で2021年12月に発売。最終的な落札額は2イーサリアム(約100万円)。売上はLGBTQ+に関するチャリティー団体に寄付される予定。

 

 

COACH


2021年12月17日〜24日までの8日間に、1日1種類、計10 個のマスコットキャラクターのNFTがプレゼントされる企画を実施。NFTの保有者はオーダーメイドのバッグを受け取る権利もあるなど、バーチャルとリアルの両方で「COACH (コーチ)」のアイテムを楽しめる取り組みとなった。 

 

 

Karl Lagerfeld


ロンドンを拠点とするアーティストとコラボレーションをして、カール・ラガーフェルド氏のフィギュア500体を限定でNFTとして販売(1体100ユーロ)。パーティへの招待状も含まれるなどリアルイベントもセットとなり、またフィギュアはARにも対応。「#PosewithKarl」 にてAR上にフィギュアを登場させ、SNSで共有することも可能にした。

 

 

Harvey Nichols


2021年12月、英国を代表する百貨店の「Harvey Nichols(ハーヴェイ・ニコルズ)」がNFTに参入しアバターのプレゼントキャンペーンを実施。アバターは「RTFKT(アーティファクト)」によるクローン化した人間をテーマとするNFTプロジェクト「CLONE X」として制作され、20,000体のアバターコレクションが登場。プレゼントの応募方法には、「Harvey Nichols」のショップ内に映し出されたクローンと一緒に写真を撮り、それを指定のタグク付けでInstagramに投稿するなどがキャンペーンの参加条件になっていた。

 

 

Ray-Ban


「Ray-Ban(レイバン)」がブランド初となるNFTを「Opensea(オープンシー)」においてオークション形式で出品。3Dモーションデザインを特徴とするアーティストが手掛ける、定番アイテムのサングラスを主役とした約15秒間の動くデジタルアート作品として発表された。作品は約85万円で落札。収益は慈善団体に寄付される予定とされた。

 

 

Givenchy


「Givenchy(ジバンシィ)」のリゾートコレクションでグラフィックを手掛けたアーティストのChito氏による15型のNFTを、「Opensea」のオークションに2021年11月23日に出品。収益はプラスチックによる海洋汚染問題に取り組むオランダの団体「The Ocean Cleanup(ジ・オーシャン・クリーンアップ)」に寄付されるという。

 

 

Jimmy Choo


「Jimmy Choo(ジミー チュウ)」はNFTマーケットプレイスの「Binance(バイナンス)」でコレクションを販売。ミステリーボックスにはレア度が異なるデジタルカードが入っており、レアカードを受け取った購入者は、将来的にNFTアイテムをさらに入手できるチャンスが得られる。オークションでの収益はすべて寄付されるという。

 

Q. NFTって儲かるの? 価値があるの?

A. NFTに“書き込まれているデータや情報”に価値があります! 

 2021年3月、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が最初に投稿したツイートがNFTオークションに出品され、約3億円で落札されました。ツイート自体はコピーや拡散が可能ですが、NFT化をさせることで「ドーシー氏が初めてTwitterに投稿したツイート」という情報が証明され、価値が生まれます。

 またNFTはモノ(デジタルデータ)の希少価値を高めることができる点から絵画とも相性が良く、手塚治虫氏の漫画原稿で構成されたモザイクアートNFT「鉄腕アトム」は約5,600万円で落札。海外のNFTアート「CryptoPunks(クリプトパンク)」のドット絵で書かれたキャラクターは約18億5,000万円で落札されました。

 このように、ここまでは具体的な事例を交えてNFTを紹介してきました。そしてもう1つ重要事項をご紹介します。それは“NFTはあくまでもブロックチェーン技術の1つであり仕組みである“ということ。”価値があるのはNFTに書き込まれているデータや情報である”ということです。

 NFTはデジタルデータに価値と所有権の証明を付与することを可能にした技術です。そして注意したいのは、すべてのNFTに巨額な価値が付くわけではないということです。

 たとえば宇宙旅行で話題となったZOZO創業者の前澤友作氏が、宇宙から撮影した地球の写真をNFT化しました。他方、NFT化されたデータには、ある愛犬家が撮影した愛犬の写真もあります。両者ともに世界で1つしかないものですが、希少価値は前澤氏が撮影した地球の写真の方が圧倒的に高いと言えます。なぜならば誰もが撮影できる写真ではないからです。つまり現実世界でもデジタル空間でも希少価値の概念や考え方は変わらないということが言えるのです。

 

「CryptoPunks」のドット絵で描かれたキャラクターは約18億5,000万円で落札

 

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