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【独自取材】“NFT”はファッションビジネスをどう変えるのか(後編)

AIL編集部
AIRVol.55転載記事
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日に日に耳にする機会が増えてきたNFTや「メタバース」という言葉。このホットワードの詳細に触れてきた本稿ですが、後編ではファッションビジネスにおける相性や将来的な可能性について探っていきます。

Q. デジタルデータに希少価値を与えるNFT化されたデータは、どこで売買されていますか?

A. 主に「マーケットプレイス」と「メタバース」で収益化されています。

 NFT化されたデータは主に2つの方法で収益化されます。それが「NFTマーケットプレイス」と「メタバース」です。「NFTマーケットプレイス」ではさまざまなNFTデータが売買されており、デジタルアートやミュージックなどが並んでいます。有名なプラットフォーマーとしては海外の「OpenSea(オープンシー)」、「Nifty Gateway(ニフティ ゲートウェイ)」、「Rarible(ラリブル)」の3つがあげられ、特に「OpenSea」は世界最大手の「NFTマーケットプレイス」として有名です。2021年11月の時点で売上は100億ドルを突破しました。

 日本国内に目を向けると、すでに30社以上の「NFTマーケットプレイス」が市場に存在しています。なかでも「Coincheck NFT(コインチェックNFT)(β版)」、「nanakusa(ナナクサ)」がシェアを伸ばしています。

 

海外の主要な「NFTマーケットプレイス」

 

 また、NFTをビジネスとする上で欠かせない要素が「メタバース」です。「メタバース」は3DCGで形成されたバーチャル空間、仮想空間を指します。バーチャル上で経済圏として成り立ち、例えば、メタバース内で自由に遊べるゲーム「Sandbox(サンドボックス)」ではゲーム内で土地の売買が可能です。

 実際にとある企業が約4億円で土地を購入し、その土地にマンションを建設したところ、著名人が相次いでマンションの購入を予約し、話題を呼びました。もちろんこのマンションもバーチャル空間に存在するマンションです。さらに「Sandbox」の場合、アバターのデータから車や別荘に至るまで多くのアイテムがNFT化されたデータで売買されています。

 

 メタバース内で自由に遊べるゲーム「Sandbox」

 

その売買のために「メタバース」で流通する独自の仮想通貨「Sand」を発行しており、ユーザーは仮想通貨やクレジットカードを利用して「Sand(サンド)」を購入したり、ゲーム内のミッションをクリアして「Sand」を獲得することで、売買を成立させています。このようにNFTは「メタバース」内のアイテム、データとして活用されることで収益を生んでいます。

 

世界最大手の「NFTマーケットプレイス」の「OpenSea」

 

Q. 現時点でNFTをファッションビジネスに活かすには?

A. NFTコレクションの発売、「NFTマーケットプレイス」や「メタバース」での流通が主流です。

 ファッションとNFTを掛け合わせた事例で1番多いケースが、NFTコレクションの発売、「NFTマーケットプレイス」や「メタバース」で流通させるケースです。例えば、2021年12月に「adidas(アディダス)」はNFT界隈で人気のあるIP「Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)」とコラボレーション。自社初のNFTコレクションを発売し、最終的に約26億円の売上を記録して話題となりました。

 「adidas」のデジタル事業責任者であるTareq Nazlawy氏は海外メディアのインタビューで、同社のNFT戦略について4つのポイントをあげています。

①NFT購入者限定でリアルのアパレルアイテムを合わせて発売。

②「Sandbox」などと提携して「メタバース」内でオリジナルのゲームを制作。ゲームのリワードとしてユーザーに無料でNFTを配布して自社のNFTを普及させ、そこから二次流通を見据え、転売時にNFT制作者の「adidas」にも手数料が還元される仕組みを構築。

③自社で新しいアプリを開発。ストリートファッションが好きなコアのファン層に向け、「Yeezy(イージー)」などのブランドとコラボレーションし限定品を販売することで、NFTとデジタルファッションとの連携を強化。

④今後さらにNFT領域のクリエーターとコラボレーションし、新しいNFTデータを創出。

 この「adidas」の事例からもわかるように、ファッション企業がNFTを活用する場合、ただNFT化したデジタルファッションアイテムを制作するのではなく、オフラインとの連動でリアルなアイテムも発売し価値を高めています。

 

 「adidas」と「Bored Ape Yacht Club」のコラボレーションによるNFTコレクション

 

 また、Tareq Nazlawy氏のインタビューで興味深い意見が、「デジタルファッションアイテムはゲーム業界と相性が良いと感じています。NFT化させたアイテムとゲームを組み合わせることで、特にZ世代の新規顧客の獲得に期待できます」というものです。

 例えば、「Epic Games(エピックゲームズ)」傘下の人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」では、スポーツブランドの「NIKE(ナイキ)」から高級ダウンブランド「MONCLER(モンクレール)」まで、さまざまなブランドがゲーム内で着用できるファッションアイテムを発売しています。このようなゲーム、「メタバース」内で売買されるデジタルデータの取引市場はすでに5,000~6,000億円の規模まで成長しており、今後大きく成長することが予測されています。

 NFTを自社のビジネスに落とし込む際、NFT化されたアイテムを制作するという高いハードルだけではなく、テストマーケティングとして、ゲームで使えるデジタルアイテム(アバターの洋服やアクセサリーなど)を著名なゲーム内で販売するというステップも選択肢に入ってきそうです。

 

「FORTNITE」と「MONCLER」のコラボレーション

 

Q. NFTとファッションビジネスの未来はどうなりますか?

A. 二次流通市場での売買で収益が得られ、越境プロモーションの秘密兵器にもなりそうです。

 NFTとファッションの可能性について、将来的には二次流通市場に出回った商品の売買においても、著作権を持つデザイナーやブランドへ継続的に収益が発生する仕組みが確立されていくかもしれません。

 これまでの二次流通市場では、ユーザー間でアイテムの売買が成立しても、収益がファッションブランドに入ることはありませんでした。しかしNFTのブロックチェーン技術を活用することで、二次流通市場において、ユーザー間だけではなく、ファッションブランドにも収益が入る仕組みが構築可能です。例えば、ファッションブランドが制作したNFTアイテムを購入したユーザーAが、「Opensea」などの「NFTマーケットプレイス」でユーザーBに販売したとします。スマートコントラクトにおける契約条件では、二次流通の取引でも取引毎にNFTを制作したファッションブランドに手数料が還元される設定が可能となるため、転売時にブランドに収益が発生するのです。

 またこの仕組みは、「NFT付きの証明書」を発行することで、リアルのファッションアイテムへの応用が可能です。取引履歴のデータが証明書に紐付くため、「NFT付の証明書」をファッションアイテムとセットで転売することで、ブランドに利益が還元されるのです。

 この画期的な仕組みを支えているのが先述した「スマートコントラクト」。ブロックチェーンの代表的な機能で、NFTの制作者がNFTの流通に対して、自ら取引条件を設定できる仕組みです。現在では「Opensea」など多くの「NFTマーケットプレイス」や「メタバース」で実装されています。一方で、NFTは比較的新しい技術のため、法律やルールがまだ整備されていません。法律周りの整備は必須となりますが、この問題をクリアしたとき、二次流通市場は変革を迎え、ブランドとユーザーともに利益が得られるWin-Winの時代を迎えるかもしれません。

 また、グローバル展開を考えているブランドもNFTがチャンスとなるかもしれません。「1Sec(ワンセック)」の中村氏は、「NFTをやりとりする暗号化資産の価値は世界共通となります。たとえばイーサリアムの通貨単位である『1ETH(イーサ)』は、どのプラットフォーム、マーケットプレイスでも価値が同等です。つまり為替レートの管理も必要がないということです。またNFTと深い関係にある『メタバース』は、自分の国に居ながら世界中の人々と同時接続でコミュニケーションができるため、国境を越えたコミュニティ形成の後押しになります」と言い、海外進出にNFTや「メタバース」が効果的な手段となる可能性があることを示唆しています。

 目下、各社が付き合い方を模索しているNFTではありますが、世界の流れを考慮すると2022年は日本でもその名をさらに耳にする年となりそうです。

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