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【独自取材】「NFT×ファッション」のカギは、メタバースにあり!

AIL編集部
AIRVol.55転載記事
執筆者

*本稿は2021年12月に取材し、AIL Vol.55号に掲載された記事となっています。

 米国ロサンゼルスと東京に本拠を持つ「1SEC」。“世界中の人々や企業をエンパワーメントする”をスローガンに、Web3.0を軸にしたデジタルファッションのコンテンツ開発やソフトウェア開発、クリエイターコミュニティ事業などを手掛けています。

 また同社は2021年にデジタルファッションレーベル「1Block」を創設。第一弾のコレクションとして日本初のNFTバーチャルスニーカー「AIR SMOKE 1」を販売しました。この「AIR SMOKE 1」は海外のNFTマーケットプレイス「OpenSea」で発売後、9分で5イーサリアム(約140万円)分を完売しています。

 さらに同社はメタバースのビジネスモデルとブロックチェーン技術を活用したマーケットプレイス「1 Block Land(https://1blockland.world/)」を開発、ファッションブランドの「Ameri VINTAGE(アメリ ヴィンテージ)」のオートクチュールをNFT化させて、「1 Block Land」の中で販売する予定です。

 NFT、メタバースといった次世代のデジタル活用を中心とした事業で頭角を現す同社。はたして今後、どのような事業展開を考えているのでしょうか。取締役 Executive Vice Presidentの中村成寿氏に、NFTとメタバースがファッション領域で生み出すであろう価値や活用方法を含め、お話を伺いました。

中村成寿氏◉「1SEC」取締役 Executive Vice President

 

NFTはデジタルデータに価値を付与できる技術

 

―近年、異常な盛り上がりを見せるNFTですが、実際にNFTはどのような価値を持っているのでしょうか。御社の観点から、NFTの魅力、そして経済やカルチャーにおける価値について教えてください。

 弊社は2021年の4月にデジタルファッションレーベルという立ち位置で「1 Block」を立ち上げた経緯もあるので、その観点からお話できればと思います。個人的に、NFTはデジタルデータに価値を付与できる技術だと考えています。マスメディアの報道では、「Twitterの共同創設者でCEOを務めるジャック・ドーシー氏の最初のツイートNFTがおよそ291万ドル(約3億1,500万円)で売れた」など投機的な部分がフォーカスされることが多いのは事実です。しかしNFTの本質的な価値は、クリエイターが制作したデジタルデータや個人で保有しているデータをユニークなデータにすることができる、つまり価値を付与することができる点だということです。

 またNFTを理解するために大枠でも知っておいた方が良い概念として“ウォレット”という言葉があります。ウォレットはNFTを売買する際の仮想通貨やNFTアイテムの管理、またNFTを取り扱うプラットフォームにログインするためのカギにもなります。イメージとしては、仮想通貨やNFTを持つための財布やリュックの様な形でしょうか。例えば、メタバースのサービスを利用するにあたってウォレットの情報を参照してログインし、メタバースで購入したデジタルアイテムもウォレットで管理するというイメージです。つまりウォレットさえあれば、ブロックチェーン関連サービスへのログインが行え、仮想通貨、NFT化されたデジタル資産の管理をすることが可能となります。

ウォレットはNFTを売買する際の仮想通貨やNFTアイテムの管理、またNFTを取り扱うプラットフォームにログインするためのカギにもなる。

―NFTにはウォレットがセットになっていて、ウォレットの活用がユーザー体験の向上につながるという理解でよろしいでしょうか。

 その通りです。例えば「Amazon」をはじめ、新しいECサイトを利用する際、住所やカード情報など、幾つかの情報を入力する手間が発生すると思いますが、ウォレットに対応しているECであれば、ウォレットをECに接続するだけです。もちろん、ウォレットはブロックチェーンで管理されているため、「信ぴょう性」の観点で非常に優れています。ただしIDやパスワードを忘れてしまうとログインが不可能となるため、あくまで自己管理が大前提。こうした限りなく個に基づいた管理の仕組みはウォレット普及のポイントとなっており、現在世界中でさまざまなサービスが開発されています。

 

NFTとメタバースは切っても切り離せない関係に

 

―御社はこの分野でどのようなビジネスをしているのでしょうか?

 NFTの分野では、デジタルファッションレーベル「1 Block」を昨年立ち上げました。そして、第1弾としてデジタルスニーカー「AIR SMOKE 1」をNFTアイテムとしてリリースしました。この「AIR SMOKE 1」を試験的にNFTアイテムの売買が可能なプラットフォームの「Opensea」に出品したところ、9分で完売(約140万円分)して手応えを感じています。またファッションブランドの「Ameri VINTAGE(アメリ ヴィンテージ)」ともタッグを組み、オートクチュールをNFT化して、弊社が運営するメタバース型マーケットプレイス「1 Block Land」内で販売を予定しています。

グローバル ファッション&カルチャーマガジン「NYLON」とコラボレーションした「AIR BUBBLE 1」

―ファッションアイテムをNFTのデジタルデータにする場合は、着用する場面、つまりメタバース(仮想空間)自体の普及も必須に感じますが、どう思われますか?

 そうですね。ファッションの文脈から考えても、デジタルデータをアバターなどに着用する場としてメタバースは重要となり、NFTとも密接な関係にあると思います。また、Facebookが社名を「Meta(メタ)」に変更した事実などから、メタバースを始めとしたデジタル空間内でのコミュニケーションは今後飛躍的に進化していくと考えています。将来的には、メタバースの中でデジタルクローゼットを持ち、デジタルのファッションアイテムが増加することも予測されます。弊社もそうした未来を予測して「Decentraland(ディセントラランド)」など、多様なメタバースで使えるマルチバース構想の推進を行っています。

NFTやメタバースは、欧米のラグジュアリーブランドが先行していると感じます。そうしたブランド以外も活用できるのでしょうか。

 確かに「NFTを活用した~」「メタバース空間で~」というニュースはラグジュアリーブランドに多い印象があります。しかし、個人的にはスタートしたばかりのブランドも十分先行者利益を得られる分野ではないかなと思っています。理由は先入観が無く、新しい取り組みに柔軟に対応しやすいと思うからです。

 実際にオンラインゲームの「FORTNITE(フォートナイト)」などのプラットフォームでは、ラグジュアリーではないアパレルブランドのNFTアイテムが人気の場合もあります。ただし、ファッションブランドが日本国内だけでNFTを展開する際は、需要と供給のコントロールに注意しなければなりません。リアルな世界と同様、メタバースの世界でも希少価値の優位性は変わらないからです。

 日本のNFT市場は世界的に見ても、まだまだ規模は小さいです。海外だと1つのNFTコレクションにつき約10,000~20,000個を発行することが多いですが、同じ規模を日本で発行してしまうと需要が間に合わず、価値が跳ね上がりません。

―中村氏が立ち上げたばかりのアパレルブランドの担当者でNFTをマーケティングに活用する場合、どのように戦略を考えていきますか。

 大きく3つの展開が考えられます。1つ目は「新規ユーザーへの認知」です。具体的には、NFT領域で有名なクリエーターや企業と提携し、コラボレーション商品を作って、NFTのコアユーザーのコミュニティで話題を作り、そこから徐々にマス市場へ広げます。まずはともにNFTの市場を作っていくというイメージです。

 2つ目は「二次流通市場におけるレベニューシェアの仕組みからのマネタイズ」です。NFTとその土台となっているブロックチェーン、スマートコントラクトという技術を活用することで「著作権を持つクリエーター」と「所有権を持つオーナー」による「レベニューシェア」という仕組みが確立できます。言い換えると、自社のアイテムが転売されても、しっかりとお金が入ってくる仕組みを構築することが可能です。

 最後に「グローバルブランドへのチャレンジ」でしょうか。NFTをやりとりする暗号化資産の価値は「世界共通」となります。例えばイーサリアムの通貨単位である1ETH(イーサ)はどのプラットフォーム、マーケットプレイスでも1ETHの価値が変わりません。つまり、世界を舞台に商品を販売していくことを想定した場合、為替レートの管理も必要がないということです。またNFTと密接な関係にあるメタバースは、自国にいながら世界中の人々と同時接続でコミュニケーションができるため、国境を越えたコミュニティ形成の後押しになります。

デジタルファッションレーベル「1Block」のNFTスニーカー「AIR SMOKE 1」

 

―最後に御社の今後、そしてNFT、メタバース市場の展望も合わせてお聞かせください。

 NFTやメタバースは大きなビジネスの側面からもポテンシャルを秘めています。AR技術を活用すれば、デジタルファッションながら着用気分を味わえたり、所有者がゲームのキャラクターに履かせたり、その中で簡単に売買するということが可能になっていきます。そうなると、デジタル領域ではかなり幅広いマーケットに対応していけると感じています。「1SEC」としてもこの分野においてさまざまな企業やクリエーターを巻き込んで、NFTやメタバース関連の経済圏を作っていく構想がありますし、2022年も数々のNFTプロジェクトが控えていますのでご期待ください。

 また市場展望に関しては、先ほど少しお話をしたWeb3.0の思想でもある「オープンソース化」がキーワードになると思います。NFTを始めるとするブロックチェーン関連の技術は、営利目的で特定の企業、組織が情報や資産を独占的に支配することがなく、ブロックチェーンの基盤で成り立つ経済圏がもたらす価値を全員で共有できます。つまり、これからの時代は誰もがECを立ち上げることができるのと同様に、誰もがクリエーターになり、「peer to peer」で自らNFTを制作して直接顧客に流通させることができます。

 企業目線で考えていくと、NFTやメタバースは海外の方が進んでいるため、越境を考えているブランドの認知を向上させるために向いていると思います。デジタル空間内のコミュニケーションが当然になる未来はそこまで来ています。NFTやメタバースをどう自社のビジネスに絡めていくのか、各社真剣に検討していく2022年になるのではないでしょうか。

 

1SEC https://www.1sec.world