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注目企業の2025年の明暗:リセールプラットフォームThredUP(スレッドアップ) 欧州市場から撤退 米国市場へ専念

近年、店舗やフリマアプリでの中古アパレル商品の取り扱いは増加し、中古品を購入することに抵抗が少ない消費者が増えています。米国発の大手リセールプラットフォーム「ThredUP(スレッドアップ)」とGlobalData(グローバルデータ)社が発表した「ThredUP Resale Report 2024」によると、2023年度の米国の中古アパレル市場は11%の成長をみせ、市場規模は430億ドル(約6兆円)に到達。2028年には市場規模が730億ドル(約11兆円)に達すると予想されています。
関連記事:2028年までに54兆円規模に上る世界アパレル中古市場 スレッドアップリセールレポート2024速報【ThredUP Resale Report 2024】
女性用の中古衣料品が並ぶ「ThredUP(スレッドアップ)」(公式サイトより)
「ThredUP」は、2009年に米国カリフォルニアでJames Reinhart(ジェームス・ラインハート)氏によって創業。2021年3月に米国NASDAQに新規上場しています。ユーザーは専用の袋に不要な衣料品を入れて送るのみ、サイトの出品や配送、商品の値付けから決済までは同社が代行するという、手軽なサービスで人気を得ています。
2021年7月、ThredUPは、ブルガリアのスタートアップ企業であるRemix Global AD(リミックス・グローバルAD)社を買収しました。同社は、東欧を中心にファッションリセールサイト「Remix(リミックス)」を運営しており、ThredUPはこの買収を足がかりに、欧州への事業拡大を図ってきました。2024年5月にThredUPは欧州市場全体への事業展開を見据えて、現地の経営陣を刷新しました。そのわずか3か月後の決算会見では、「Remix」の売却を検討していると発表したのです。
「ThredUP」は2021年にNASDAQへ上場したが、
2022年末には株価が92%も下落した(Yahoo Finance参照)
実は、「Remix」の直近の業績は悪化しており、欧州での売上は前年同期比で18%減、粗利は25%減と非常に厳しい状況にあります。一方、ThredUPも、2021年のNASDAQ上場時の企業価値は13億ドル(約2,000億円)でしたが、以降業績は振るわず、2022年末の同社の株価は92%下落しています。
上場から2年が経った2024年も、この状況は改善されていません。そして、直近の動きとして2024年12月、ThredUPは主軸である米国内の事業に集中するため、欧州市場からの撤退を発表しました。これ以上の欧州事業を起点とした業績悪化を阻止するため、「Remix」の“売却”という形を取りましたが、事実上、「Remix」はThredUP社に対して負債を抱えるという要素があります。
①新会社Remix US Holdings(リミックス・USホールディングス)を設立
②ThredUPが保有する「Remix」の91%の普通株式を、わずか1ユーロ(約150円)でRemix US Holdings社に譲渡
③残り9%の普通株式に対しては、補償措置も含め、2034年まで有効な6.47億ドル(約900億円)の転換社債(利息付き)を発行。この金額はThredUPが「Remix」を買収して以来、同社が行ってきた投資額を表しています(これにより、ThredUPは損失を最小限に抑えたとされています)。
ThredUPの欧州市場からの撤退の理由は、米国内の事業に集中するためとされていますが、同社の今後の経営改革に注目が集まっています。
参照:
https://techcrunch.com/2024/12/03/thredup-fashion-marketplace-offloads-its-european-business-remix/
https://www.retailtouchpoints.com/topics/market-news/thredup-exits-europe-with-sale-of-remix-business