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英スーパーマーケットの最新テクノロジー導入例-AI在庫管理・酒販ディスプレイ-【EU最新小売トレンドレポート】

高嶋 一行|Kazuyuki Takashima
AIL編集部により一部編集
執筆者

 欧州の中でも特に英国では、高級スーパーから郊外チェーンまで、住民ニーズに沿ったさまざまなスーパーマーケットが充実しています。英国内で市場シェア20%超の最大手「Tesco(テスコ)」、創業150年以上の老舗スーパー「Sainsbury’s(セインズベリー)」、シェアトップ3に入る郊外の低価格大型店「ASDA(アズダ)」、百貨店「John Lewis(ジョンルイス)」グループ傘下の上流・中流階級向け高級スーパー「Waitrose(ウェイトローズ)」など、さまざまな業態があり、多彩な品揃えや顧客サービスが展開されています。

 今回は中でも、地域住民ニーズに沿った品揃えが人気で、とりわけ魚介やエスニック系フードが充実しているといわれる「ASDA(アズダ)」と「Morrisons(モリソンズ)」が取り組む、最先端テクノロジー導入による顧客体験・店舗効率向上の事例を紹介していきます。

【Morrisons(モリソンズ)】 AI 搭載カメラを店内に導入 

「ASDA」店内に設置されたAI搭載カメラ

 

 英スーパーマーケット「Morrisons」では、AIを搭載した数千台のカメラを店内に設置するという計画を発表しました。2024年内に英国内の全店舗へ導入される予定です。AI搭載カメラの導入は米国・シアトルに拠点を置くFocalSystems.(フォーカルシステム)社との提携により実現するプロジェクトです。

 「Morrisons」では売り場の品薄状態の改善に注力しており、AI搭載カメラの導入によって、リアルタイムでの陳列棚データの把握が可能となります。加えて、データ上で在庫が少なくなっている場所へと店舗スタッフを誘導することができるなど、品出しや商品管理のフォローを行うことで店舗スタッフの負担を減らし効率化を促す狙いがあります。

 さらに、マーチャンダイジング、発注、価格設定から人員配置、作業管理といった店舗オペレーション毎における意思決定を自動化する機能を備えているなど、店舗運営全体が効率化される可能性をアピールしています。

 すでに一部の店舗でテスト運営が行われており、在庫状況が大幅に改善されたといった結果が報告されました。同社の第1四半期の決算では、過去3年間で最も好調に売上が伸びたと報告されており、前年より4.6%の売上増を記録しているといいます。最新テクノロジーの導入によりさらなる経営効率化を目指す狙いです。


参照:
https://www.thegrocer.co.uk/technology-and-supply-chain/morrisons-installs-ai-cameras-to-improve-availability/689938.article
https://focal.systems/

【Asda(アズダ)】 アルコール販売用のインタラクティブスクリーンを試験導入 

「ASDA」のデジタルスクリーン「Digital Spirits」

 

 英大手スーパーマーケット「ASDA(アズダ)」では、顧客の買い物体験を刷新し、さらなる効率性や快適性を提供するためのイノベーション投資を継続しています。その一環として、新しい陳列手法であるインタラクティブスクリーンを、ロンドンをはじめとする市街地の23のエクスプレス店舗に試験的に導入しました。

 英国における小売・流通業界では初となるこのデジタルスクリーン導入の取り組みは、飲料会社のDiageo(ディアジオ)社との提携でスタート。「Digital Spirits (デジタルスピリッツ)」と同社が呼ぶデジタルスクリーンでは、主にスピリッツ(アルコール類)が販売対象となり、買い物客は通常棚より多い選択肢の中から商品を選ぶことが可能となります。

デジタルスクリーンではアルコール商品を取り扱う

 

 「Digital Spirits」スクリーンの導入により店舗でのアルコールの品揃えは約2倍に増加。従来13~26品目の陳列だったところ、50品目と取り扱いを拡充しています。利用方法としては、顧客はまずスクリーン上で18歳以上であることを確認し、購入希望の商品を選択。選択するとチケットが印刷され、受け取ったチケットを持ち、レジにて支払い処理・商品の受け渡しが行われるという流れです。

 今後デジタルスクリーンは、アルコール売り場のサイド・ユニットとして展示され、スペースの有効活用としてのメリットも期待されています。


参照:
https://www.retailgazette.co.uk/blog/2024/04/asda-digital-spirits-screen/

執筆者

  • 高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA

    Showcase Tokyo代表・在英ライター|AILメディアパートナー

    ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営。 東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。